写真は、アルビレックス新潟の川又堅碁  (C)フォート・キシモト

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 もったいない判断をしたと思う。欧州遠征へ挑む日本代表についてである。

 オランダ、ベルギーと対戦する今回の遠征は、年内最後の活動である。11日から19日にかけて、一週間強の時間を確保できる。既存のメンバーによるチームを立て直したいと、ザックが考えてもおかしくはない。

 僕の考え方は違う。
 大久保(川崎F)と川又を呼ぶ。

 所属クラブで好調な彼らは、いまが「試し時」である。次の国際Aマッチデイは3月5日で、来季のJ1が開幕した直後だ。彼ら国内組は、コンディション的に仕上がっていない。しかも、招集期間の短いフレンドリーマッチである。これまで代表経験のない川又はもちろん、前回の招集からかなりの時間が経過している大久保を呼ぶには、今回がベストなタイミングだった。

 タイミングで言えば、11月7日の発表でよかったのだろうか。10日のJ1リーグを受けてメンバーを決定すると、翌11日の渡欧に支障をきたすとの判断が働いたのか。
日程を確認すると、物理的に難しい会場は確かにある。それにしても、リーグ戦でアピールすることの意味が軽んじられていないだろうか。個人の勢いも選考要素になるストライカーは、直近のリーグ戦のパフォーマンスも重要なはずである。

 攻守ともに課題が山積する現在のチーム状況で、とりわけ気がかりなのは推進力の欠如だ。ショートパス主体の攻撃サッカーを突き詰めようとするばかりに、様々な弊害がピッチ上にあらわれている。足元へのパスが多い、横パスやバックパスが多い、フィニッシュよりつなぎの意識が先行する、といったものだ。

 折り重なる弊害は、攻撃がノッキングする状況だけでなく、相手に読まれやすいサッカーを引き起こす。守備ブロックの奥深くに侵入できず、ボール支配率の高さが形骸化しているのだ。泥臭さを売り物とする岡崎の良さがほとんど引き出されていないのは、パスを重視したサッカーに閉塞感が迫っていることを示唆する。

 大久保が日本代表に復帰するとしたら、2列目での起用になるだろう。川又は1トップだ。

 2列目には香川と岡崎がいる。大久保が見せているゴール前への飛び出しと決定力は、岡崎に重なるところがある。

 川又は柿谷、大迫を追いかける立場だ。ハーフナー・マイクや豊田も含めたFWの起用法を考えると、ザックは2列目と密接に連携できる1トップを探している。足元の技術もそつのない川又だが、代表レベルでフィットするかは未知数だ。
それでも、二人のこだわりたい理由がある。

 好調なストライカーは、プレーに迷いがない。打てるタイミングを逃さず、打てそうにないタイミングでも狙っていく。

 頭のなかが整理されているから、身体の反応も速い。得点を重ねている選手にボールがこぼれてくるのは、嗅覚のささやきはもちろん相手に先んじてポジションを修正しているからでもある。

 強引さや意外性とは、表現を変えれば相手が想定しにくいプレーだ。現在のチームに、もっとも欠けている部分に他ならない。

 大久保が潜在的に秘める狡猾さを、彼以外の誰が表現できるだろうか。川又がゴール前で放つ凄味は、大久保とも岡崎とも別の種類のものだ。

 日本人が強みとする組織力やパスワークは、ザックのチームでもすでに担保されている。だとすれば、同じテンポ、同じリズムに陥りがちな攻撃にアクセントを加えることに、ためらいはないはずだが……。

「結果より内容」を強調しながらも、ザックは内容を改善させるための変化を求めようとしない。それが、ひどく歯痒い。混じり合いそうにない個性が意外な化学反応をするのは、サッカーでしばしば見受けられるというのに。