少し前の話になるけど、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝で、Jリーグ勢で唯一勝ち残っていた柏が、中国の広州恒大に2戦合計1−8という屈辱的な大敗を喫した。

過密日程など柏には同情の余地があるものの、それを差し引いても実力差は歴然としていた。特に、広州恒大の外国人トリオ、コンカ、ムリキ、エウケソンはいずれも今のJリーグではお目にかかれないレベルの選手。欧州の強豪クラブでも通用するだろう。

広州恒大は中国随一の金満クラブ。イタリア人のリッピ監督の年俸は約10億円、司令塔コンカの年俸は約11億円だそうだ。先頃、Jリーグが目先の10億円の収入を確保するために2ステージ制復活を決めたことを考えると、なんともいえない気持ちになる。

とはいえ、この結果をもって、今後、中国サッカーの時代が来るかといえば、そうはならないだろう。いくら実力者とはいえ、代表にも選ばれていない外国人選手に10億円も払うなんてバブルそのもの。お金の出どころも怪しく、ツッコミどころが多い。また、中国人選手のレベルはまだまだで、地域にサッカー文化が根づいているようにも見えない。バブルがはじけたら、勝手にコケるだろう。中国サッカーには昔のJリーグ以上の危うさを感じるね。

ただ、それはそれとして、今年もJリーグ勢が決勝に残れなかったことは深刻に受け止めなければいけない。これで2008年に優勝したG大阪を最後に、5年連続で決勝に残れなかったわけだからね。Jリーグはかつて間違いなくアジアのトップリーグだった。でも、今はACLでも対戦相手がまったく怖がっていない。決してレベルが著しく上がっているわけではない、ほかのアジア各国のリーグと同等になってしまっている。

広島、仙台、浦和が早々と姿を消すなか、ACLにかける気持ちを見せ、ベスト4まで残った柏には、僕だってよく頑張ったと言いたい。でも、やっぱり、ACLは優勝してクラブW杯の出場権を獲得しなければ意味がない。その点、見習いたいのはライバルの韓国だ。韓国勢は2009年以降、4年連続でACLの決勝に勝ち残り、そのうち3回優勝。今年もFCソウルが決勝進出を決めている。

韓国勢は中国勢のように経済的にすごくゆとりがあるわけではない。国内リーグの盛り上がりもいまいちで、Jリーグ同様、有望な若手の海外流出が続く状況だと聞く。それでもACLで結果を出せるのはなぜか。

一番の理由は、メディアやファンの見る目がシビアだからだろう。クラブに限らず、A代表も結果を残せなければチームは猛批判を受け、監督はすぐに更迭される。もちろん、ただ多くを求めるだけではなく、国際舞台での勝利を何よりも優先し、国内リーグの日程を柔軟に変更するなど万全のサポート体制をとっている。

翻って日本はどうか。ACLで惨敗しても、メディアもファンも「仕方がない」で片づけ、監督が更迭されることもない。準決勝を前に柏がJリーグに出した日程変更の要望も却下されている。ちなみに、2015年から2ステージ制が導入されれば今以上の過密日程になる。JリーグはACLにどう対応するつもりなのか。

いずれにしても、今のままだとJリーグ勢が再びACLで勝つのは難しいだろうね。

(構成/渡辺達也)