【戸塚啓コラム】結果なきアピールに評価なし
結果は出なかったが、新戦力を見つけることはできた。
東アジアカップを戦うにあたってどちらを選ぶかと聞かれたザックは、「後者」と答えている。あくまでも究極的な質問として、大会に臨む基本的なスタンスを明かしたものだ。
7月21日に行なわれた中国戦は、どちらに当てはまる一戦だったか。
どちらでもない、というのが僕の意見である。
おそらくはもっとも注目を集めていた柿谷は、1得点１アシストという鮮明なる解答を示した。槙野のクロスをニアサイドで合わせたヘッドは、高さのある相手を崩す最適解と言っていい。工藤の得点につながったラストパスも、彼らしいセンスと繊細さが織り混ざったものだった。
２列目の右サイドで先発した工藤も、柿谷と同じく１得点１アシストである。絶妙なアシストに恵まれたとはいえ、取れるときに取ることでストライカーは覚醒していく。
アジア相手のゲームで得点を量産し、点取り屋として成長していった岡崎は好例だ。決定機を確実に生かしたことで、工藤も代表でプレーしていくためのきっかけをつかんだかもしれない。「最低限の自分の力は見せられたのでは」と、試合後に話している。
彼ら二人だけではない。ダブルボランチを組んだ青山と山口や、トップ下で起用された高萩は、所属クラブで見せている個性を発揮した。ザックのコンセプトを消化するには至っていないが、何ができるのかはピッチ上に記したと言っていい。
では、３対３という結果はどのように理解すればいいのか。
一度は３対１と２点差をつけている。勝たなければいけない試合なのは明白だ。
Ｊリーグのチームが同じようなゲームをしたら、監督も選手もサポーターも、勝点３を取り損ねたと考えるだろう。Ｊリーグデビューを飾った選手がいたとしても、である。
中国戦の日本にも、追いつかれたことを「しかたがない」と思える理由が見当たらない。
国際経験の少ない選手が多いから？
チームとして練習する機会が少なかったから？
３対１からどうやってゲームを終わらせるのかは、経験不足やチームの成熟度を語る以前のレベルである。相手が攻勢を仕掛けてきたら、カウンターを抑止効果にしてゲームをコントロールする。スキがあればダメ押しを狙う。相手が出てこなければ、ボールをキープして時間を進める。
逃げきるための処方箋はすぐに思い浮かぶはずなのに、日本のゲーム運びは最後まで一本調子だった。１試合で２本のＰＫを取られるのは不運だが、リズムやペースを変えるための働きかけが皆無だったのは見逃せない。
暑さが影響したから？
グラウンドがデコボコだったから？
どちらもそのとおりだろう。だが、条件は中国も同じだ。引き分けたり負けたりするたびにそうした要因をあげるのは、建設的ではない。
選手の疲労度はザックも感じていた。交代のカードも切っている。3枚目の大迫の投入は遅きに失した感があるが、フレッシュな選手が投入された以上は、選手にも責任がある。
ピッチにいる11人で、解決しなければならない。
目線が上になるのを承知で言えば、中国は難しい相手ではない。国内組のテストにはうってつけだった。
個々がアピールをしたとしても、勝利をとりこぼしたのは明らかなマイナスポイントだ。後方からの追い上げを目ざす今回のメンバーには、個人だけでなくチームの結果も必要なのである。
関連情報（BiZ PAGE＋）
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している
