ロシアプレミアリーグの優勝争いが、いよいよ大詰めを迎えている。本田圭佑が所属するＣＳＫＡモスクワが、２００６年以来のリーグ制覇へ大きく前進した。

　５月11日に行なわれた28節で、首位のＣＳＫＡモスクワは４対１で勝利した。一方、２位のゼニトが引き分けに終わったため、両チームの勝点差は「５」となった。５月18日開催の次節で引き分け以上の結果を残せば、ＣＳＫＡモスクワは７季ぶりのチャンピオンとなる。

　４月21日の25節で戦列に復帰した本田は、ロコモティフとのモスクワダービーとなった一戦でリーグ戦２試合ぶりのスタメンに名を連ねた。２対０で迎えた前半43分には、本田の右足シュートを相手ＧＫがファンブルし、ヴァグネル・ラブのゴールへ結びついた。フィニッシュへ持ち込む過程でフィジカルコンタクトの強さを発揮し、崩れかけたバランスをすぐに持ち直した一連の流れは、彼らしさを感じさせるものだった。

　ただ、「コンディションが必ずしも万全でなかった」（スルツキ監督）との理由で、この日は前半だけで退いている。ＣＳＫＡモスクワはミッドウィークの７日にロシアカップ準決勝を戦い、本田は延長戦へもつれたゲームでフル出場していた。

　さらに加えて、ロコモティフ戦は３点リードで前半を終えていた。２列目のバックアッパーであるトシッチが、左足のケガで残り試合に出場できなくなっていたことも見落とせない。様々な事情を加味すると、本田に無理をさせるのは得策ではない。スルツキ監督が早めの交代に踏み切ったのは、次節を見据えてのことだったはずだ。

　３月のウインターブレイク後はヴェグネル・ラブに主役の座を譲ったものの、中断前のＣＳＫＡモスクワは本田のチームだった。ナイジェリアの新鋭アーメド・ムサがストライカーとして覚醒したのも、本田の手厚いサポートがあったからである。

　リーグ優勝の行方が見えてくれば、本田の去就に興味は移る。彼とＣＳＫＡモスクワの契約は今年末までとなっており、移籍となれば今シーズン終了後の夏のマーケットが濃厚だ。15億とも16億とも言われる移籍金を設定してきたＣＳＫＡモスクワのギネル会長が、フリートランスァーで本田を手離すとは考えにくい。

　残留にメリットはないのだろうか。
　
　ロシアＰＬの優勝クラブは、新シーズンのチャンピオンズリーグにグループステージから出場できる。本田、ヴァグネル・ラブ、ジャゴエフの２列目は、このチームのストロングポイントだ。クラブが補強に乗り出すとすれば、まずはストライカーと左サイドバックだろう。ＣＳＫＡモスクワに残留すれば、本田はレギュラーとしてチャンピオンズリーグに出場できる。

　ＣＳＫＡモスクワを上回るビッグクラブへ移籍したら、シーズン前のキャンプからアピールをしなければならない。ブラジル・ワールドカップを控える13−14シーズンは、欧州各国ともいつもより開幕が早まり、必然的に始動も前倒しとなる。
　
　６月１日のロシアカップ決勝までＣＳＫＡモスクワでプレーし、そのままワールドカップ最終予選とコンフェデレーションズカップになだれ込む本田のスケジュールは、ただでさえ慌ただしい。そのうえで新天地を求めることになれば、できるだけ早く合流して信頼をつかむ必要がある。コンフェデ杯後のオフが、圧縮されかねない。十分な休養を取れなくなる。
　
　そう考えると、ＣＳＫＡモスクワと契約を延長し、来夏のワールドカップ後の移籍を目ざすのは悪くない選択肢だ。もちろん、リーグ優勝を飾ることが大前提となるが。