香川真司が所属するマンチェスター・ユナイテッドが早々と2季ぶり20回目の国内リーグ優勝を決めた。

今季の香川の成績はリーグ戦18試合出場で5得点(35節終了時点)。ケガで離脱していた期間もあったし、移籍1年目としてはまずまず、及第点といっていい。

ただ、本人は優勝決定直後のインタビューで「優勝は素晴らしいこと。でも、いろんな葛藤、悔しさ、悩みがたくさんあった」と歯切れ悪く答えていた。それが正直な気持ちだろうね。喜びよりも悔しさが大きかったはずだ。

日本のメディアは、香川が活躍した試合やプレーだけを切り取って報道する。ファン・ペルシーやルーニーと並んで、すっかりチームの主役になったという扱いだ。

でも、実際に彼がプレーしているのはそんなに甘い場所ではない。ファン・ペルシーはリーグ戦35試合出場で25得点、ルーニーは26試合出場で12得点(ともに35節終了時点)と、数字の差は明白。チャンピオンズリーグ決勝トーナメントのレアル・マドリー戦、マンチェスターダービーなどのビッグマッチではほとんど出番を与えられなかった。シーズンを通して“準レギュラー”というのが、移籍1年目の香川に突きつけられた現実だ。

ただ、だからといって必要以上に肩を落とす必要はない。サッカー選手なら誰もが憧れるビッグクラブのマンUに移籍しなければ、彼はこの悔しさを味わえなかったからだ。

確かに、ドルトムントに残っていれば、チームの主役としてチャンピオンズリーグで大暴れしていたかもしれない。でも、目の前により大きなクラブでプレーするチャンスがあるなら、それに挑戦するのがプロ。そして、移籍1年目のマンUでぶつかった壁を乗り越えることができれば、それは香川にとってはもちろん、日本サッカーにとっても貴重な財産になる。

そういう意味でも、2年目となる来季は香川にとって本当の勝負だ。目標は準レギュラーからレギュラーへのステップアップ。簡単なことではないけど、チャンスは十分ある。一番必要なのはやっぱり得点だ。できれば、ふたケタ。そして、インパクトの大きい強豪相手の試合での得点が欲しい。

今季を振り返ると、リーグ中位以下のチームとの対戦ではたくさんチャンスに絡んでいた。ところが、レベルの高い上位チームとの対戦となると、相手も香川の得意とするゴールに近い位置でのプレーを簡単にはさせてくれない。中盤でパスをさばくだけで、試合から消えている時間も多かった。

カギを握るのはミドルシュートだ。今季は前にスペースが空いていても、まだ遠慮があるのか、ミドルシュートを狙うという場面があまり見られなかった。でも、遠目からでもシュートを積極的に打てば、相手は警戒して前に出てきて、裏にスペースができる。つまり、香川の好きなゴールに近い位置でのプレーがしやすくなるわけだ。

1年目の今季は名将ファーガソン監督も大事に使ってくれた。ファンや地元メディアの見る目も優しかった。でも、来季はそうはいかない。今オフ、香川のライバルとなる新戦力を獲得するかもしれない。

でも、マンUにいる限り、常にそうした厳しさが伴うということは、香川本人も理解しているはず。ぜひ頑張ってほしいね。

(構成/渡辺達也)