僕は急いでいた。
　17時半過ぎに都内の代官山で取材を終え、東急東横線でひとつとなりの渋谷駅へ向かう。ＪＲ湘南新宿ラインのホームへ急ぎ、大宮駅へ着いたのは18時40分をまわっていた。

　大宮駅から小走りで、ＮＡＣＫ５スタジアム大宮を目ざす。空腹を満たす時間はない。

　メディア受付でメンバー表を受け取り、記者席へ荷物を置くと、すでに両チームの選手がピッチに登場していた。僕がギリギリで間に合ったナビスコカップの大宮対清水戦は、４月23日火曜日の19時キックオフだった。

　リーグ戦は週末に、カップ戦はミッドウィークに開催されるのは、欧州各国にも共通する。ミッドウィークは学校や仕事帰りに観戦できるように、ナイトゲームが基本だ。ナビスコカップもサッカー界のカレンダーに準じているのだが、平日の19時にスタジアムへ辿り着くのはなかなか大変ではないだろうか。

　勤務先が応援するチームの地元ならともかく、仕事終わりにスタジアムへ立ち寄るのはハードルが高い。終業時間前に緊急の電話を受けたり、会議がちょっとでも長引いたりしたら、キックオフに間に合わない人はいると思う。５分とか10分のズレで、観戦を断念せざるを得ない人が。

　大宮対清水戦の公式入場者数は、４２７６人だった。大宮のゴール裏はほぼ埋まっていたし、清水からもサポーターが訪れていた。個人的には健闘したと思うが、リーグ戦との落差は大きい。浦和とのさいたまダービーとなった３日前のリーグ戦では、過去最高の１万３千人強を集客していたのだ。

　大宮の予選リーグ突破が難しくなりつつあることで、リーグ戦に比べると関心度が低かったのかもしれない。給料日前の懐具合を気にして、観戦を控えた人もいただろうか。

　19時ではなく19時15分なら、僕は夕食を済ませてからスタジアムへ行くことができた。前半終了までトイレを我慢することもなかった。

　19時30分キックオフなら、代官山での取材にゆとりが持てた。携帯電話の不在着信への折り返しを、試合終了後まで待つ必要もなかった。

　ナビスコカップの節別の平均入場者数は、１節より２節、２節より３節と、段階的に減っている。４月３日と10日の試合は、すべて１万人に届いていない。

　周辺住居への騒音の配慮などもあるのだろうが、キックオフ時間を少し遅らせることができたら、状況はまた違ってくるのではないだろうか。「平日のナイトゲームは集客が難しい」という共通理解が浸透してしまうのが、僕にはもったいないと感じられるのだ。