優勝、残留、昇格、降格といったフレーズが目につく季節である。喜びと悲しみの涙が、ピッチにこぼれ落ちていく。

　Ｊ１昇格プレーオフは、リーグ６位の大分トリニータが制した。大分と決勝戦を争ったのは、５位のジェフ千葉だった。３位の京都サンガと４位の横浜ＦＣは、順位的に下位のチームに足元をすくわれた。下克上のプレーオフだったわけだ。

　リーグ戦の成績は、３位の京都が勝点74で、６位の大分は同71である。勝点３差はわずか１勝分の違いだが、その１勝をつかむためにすべてのチームは汗を流している。たかが１勝などとは断じて言えない。長いシーズンを戦った末の勝点差には、それぐらい重みがある。

　京都の関係者とファン・サポーターからすれば、やるせない気持ちになるだろう。昨シーズンまでのレギュレーションなら、彼らはＪ１復帰を果たしていたのだから。
その一方で、昇格プレーオフ導入のメリットもある。

　プレーオフに進出した４チームの所属選手は、クラブの命運と自身のキャリアを賭けて試合に臨んだはずだ。平常心でプレーするのは、恐ろしく難しかっただろう。緊張と重圧が全方位からのしかかるプレーオフは、それだけに、負けたとしてもかけがえのない財産となる。精神的な成長を促す。逞しさが増す。

　トーナメントを経験するのもいい。
　ワールドカップでもＡＣＬでも、アジアのＵ−19選手権でも、リーグ戦のあとにトーナメントがある。頂点への戦いは、負けたら終わりの一発勝負に委ねられる。

　日本にもトーナメントの大会はある。天皇杯は１回戦からトーナメントで、ナビスコカップは決勝トーナメントから一発勝負になる。しかしながら、どちらの大会も「負けたら終わり」の空気に乏しい。

　ナビスコカップで負けたチームは、決まり文句のように「リーグ戦に気持ちを切り替える」と話す。決勝トーナメント進出を逃したチームの選手が試合終了とともにピッチに崩れ落ちるとか、涙を流すといった光景にはほぼお目にかかれない。天皇杯も同様だ。悔し涙がこぼれるのは、決勝戦で敗れたチームぐらいだろう。どちらの大会も、負けることの痛みはさほど大きくない。

　Ｊ１昇格プレーオフはまったく違う。負けたことで失うものは、あまりに大きい。国際舞台でも生きてくる真剣さが、そこにはあるのだ。

　６位で昇格を勝ち取った大分には、胸を張ってＪ１でプレーしてほしいと思う。北京五輪で当時過去最高のベスト４進出を果たしたなでしこジャパンは、グループステージ３位でベスト８へ進出している。最近ではフットサル日本代表が、グループステージ３位で史上初のＷ杯16強入りを果たした。大会を勝ち上がっていくプロセスはもちろん重要だが、最終的に問われるのはどんな戦いをしたのか、どんな成績を残したのかだ。

　来シーズンのＪ１で、大分がしっかりと成績を残せば──昇格プレーオフの開催意義が増す。あとに続くチームの励みにもなる。大分の真価が問われるのはこれからであり、ほかならぬ彼ら自身の手によって、評価を上げていくことができるのだ。