7月からは家庭用の電気料金も値上がりする?(写真は、東京電力本社ビル)

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東京電力が提出した「総合特別計画」を、枝野幸男経済産業相が2012年5月9日に認定した。

そこには、1兆円規模の公的資金による資本注入が盛り込まれ、東電は「実質国有化」されるほか、家庭向け電気料金の平均10.28%の値上げや、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)を再稼働することなどで、「2014年3月期の黒字化を目指す」とある。東電再生の道筋となる計画だが、実現可能なのだろうか。

家庭用の電気料金、7月には一斉値上げ?

東電によると、家庭用の電気料金は今年度から3年間にわたり値上げする案を示した。7月に予定している家庭向け電気料金の値上げ幅は平均10.28%。電気料金は標準的な家庭で月額480円(約6.9%)値上がりして7453円となる。使用量が多いほど値上げ幅は大きくなる。

新しい料金体系は、使用量が少ないほど単価の引き上げ幅を抑えたり、夏季の昼間の使用料を高くする半面夜間を安くするといった時間帯で差をつけたりする方法を用意した。

4月から実施がはじまっている企業用電気料金の値上げでは、対象となる23万7000件のうち、5月9日現在で11万7000件(49.7%)の合意を取り付けた。しかし、なお約半数が「納得していない」。

家庭用の場合は規制部門なので、東電の申請に政府が認可すれば、「自動的」に値が上げされる。東電は「できるだけ早めに申請し、(政府に)理解いただきたい」と話すが、「総合特別計画」に盛り込まれたのだから、すでに「お墨付き」をもらったようなもの。7月には実施したいようだ。

電気料金が値上げされる一方で、株主総会後の7月には1兆円の公的資金を原子力損害賠償支援機構を通じて東電に資本注入する。東電株の50%超を取得し、改革が計画通り進まない場合は議決権を3分の2超に高めて経営権を握る。

しかし、すでに原子力損害賠償支援機構は福島第一原発事故の賠償支援の目的で、約2兆5000億円の資金交付を決めている。東電の資本注入に使う1兆円で、東電への公的支援の総額、つまり税金は3兆5000億円にのぼる。

電気料金の値上げと3兆5000億円の税金、金融機関からの1兆円の追加融資で、東電の事業は継続される計画。当面の無配は当然だが、14年3月期には1067億円の黒字を見込んでいる。値上げされた料金は少なくとも黒字になるまで続く。

柏崎刈羽原発の再稼働が「前提」

しかも、総合特別計画は柏崎刈羽原発の13年4月の再稼働が前提になっている。東電は「地元の理解を得ていきたい」というが、「再稼働」が前提の計画なのだから、再稼働できなければ、電気料金のさらなる値上げもあるということだ。

一方、東電にできることは「身」を削るしかない。計画では2021年度までの10年間で3兆3650億円超のコスト削減に取り組むというが、その柱は人員削減だ。13年度末までに、11年度期初比連結で約7400人、単体で約3600人を削減。昨年6月以降実施している年収の一律カットを12年度末まで継続する。

11年度から原則3年以内に東電グループ全体で3301億円相当の有価証券を、さらにグループで保有する不動産2472億円相当(時価ベース)の売却を明らかにしている。

枝野経産相は総合特別計画の認定後、「大変残念で遺憾だが、電力の安定供給、賠償、廃炉と、やらなければならないことを実行するうえでやむをえない」と語った。