豪州代表左腕のシェリフは今夏、楽天の練習で驚いたことがあった【写真:羽鳥慶太】

写真拡大

ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12

 野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」に出場する日本代表「侍ジャパン」は、13日に名古屋市のバンテリンドームでオーストラリアと初戦を戦う。同代表には今夏、楽天の練習に参加した22歳の左腕がいる。昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場し、大谷翔平投手に特大弾を浴びたウィル・シェリフ投手だ。仙台での1か月半で学んだ日本野球について聞くと、様々な違いを教えてくれた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

 使い込まれたアイボリー色の、アシックス製グラブを大事そうに抱えた。昨春のWBCで来日した際に購入したお気に入りの逸品だ。これだけではない。日本の野球ショップに魅了されたシェリフの“相棒”は増える一方で「中毒みたいなものだよ」と笑う。1日、事前合宿地の東京都府中市に到着すると、その日のうちに1つ購入。11日のバンテリンドーム入りまでにもう1つ追加し、日本のグラブコレクションは計8個にふくらんだ。

「日本のグラブは革が全然違うんだ。だからとても気に入っている」。名古屋でも野球用品店を訪れる予定で、球場近くにも店舗があると聞くと目を輝かせた。そんなグラブ狂は、弱冠20歳だった昨年3月のWBCで2試合に登板。先発した1次ラウンドの日本戦では、大谷に東京ドームの外野席上部にある看板直撃の特大弾を浴びた。同年11月にもアジアプロ野球チャンピオンシップのために来日。そして今夏、楽天の練習に招待された。

 7月1日から8月19日の約1か月半、2軍の本拠地・森林どりスタジアム泉(仙台市)で練習に参加した。「信じられないものだったよ。これまで得た経験の中で最高のものの1つ。自己管理の方法や、どれだけハードに練習するかを知った。この経験を与えてくれた彼らに一生感謝し続けると思う」。驚きだったのはその練習量。事前に聞いていたが「実際にやった人じゃないとわからないよ」と苦笑いする。

最初の3、4週間はベッドから起き上がれず「笑われたよ」

 最初の3、4週間は朝、体が痛くてなかなかベッドから起き上がれず「チームメートに笑われたよ」と苦笑いする。「でも5週目ぐらいで慣れてきて、最後には体の感覚がとても良くなった。あのキャンプは本当に僕のためになったよ」。同年代の選手とも積極的に交流し、「いただきます」「ごちそうさまでした」などの挨拶はもちろん、「デブ」といったちょっと困った日本語まで教わった。

 実は楽天の1軍にも「親友」と呼べる存在がいる。今回の侍ジャパンにも選出された早川隆久投手だ。26歳の早川は昨年11月末から12月末まで約1か月間、豪州ウィンターリーグで武者修行。シェリフが在籍するパース・ヒートで左腕を振った。お互いの異国生活を助け合った間柄で「信じられないほど素晴らしい人間。球場で会うのが楽しみだ」と再会を心待ちにする。

 幼い頃は野球の本場・米国でのプレーを夢見ていたが、来日を重ねたここ2年間で気持ちに変化が生まれた。「NPBに入りたいかって? もちろんさ! 3、4年か5、6年か、どれだけかかるかわからないけど、今の僕の最大の目標はここ(日本)でプレーすること。なぜならここが大好きだからね」。日本のグラブと野球、そして人間に魅せられた22歳。プレミア12でアピールを狙う。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)