「新米がとれて価格が安定するかと期待していたが…」米が足りない!依然として高値で取り引き…米屋の嘆きに様々な声
猛暑や大雨災害などの影響で全国的に米が不足し、価格が急騰するなど「令和の米騒動」と叫ばれた2024年。秋以降、新米がとれて価格が安定するかと期待していたのに依然として米不足が続き高値で取り引き…「お米の集荷量も少ないし困っています」などと嘆く米屋さんの投稿がX(旧Twitter)で話題になりました。
【写真】米の販売に加えて、生産も始めた「ライスセンター金子」代表
投稿したのは、埼玉県川越市で米の販売と生産をおこなう「ライスセンター金子」代表の金子宏さんです。先代のお父さまから引き継いだ創業60年余りの老舗米穀店を経営。取り引きをしている農家は、地元の埼玉を中心に全国1000件近くにも上ります。地域農業の意欲的な担い手として市町村から認定を受けた農業者「農業認定者」として、2020年から米の生産も始めて今年で4年目だとか。
今年は米不足で価格が高騰。ようやく新米がとれる頃には価格が安定すると思いきや、変わらず高値のまま…そのうえ、需要に供給が追いつかない米不足が続いているといいます。
「最近、外国の方がお米を買いに来る頻度が増えてます。
国内のお米の生産を増やさないとまずい雰囲気があります。
今まで減反政策やりすぎて農家さん激減しています」
そんな国内の米の生産危機を訴える投稿には、米農家の切実な状況など様々な意見が寄せられています。
「飲食店勤務ですが、米の値上がりが尋常じゃないです」
「毎年コメを買っていた農家さんから来年はもう作らないから 今回で最後になるって言われてショックです」
「飲食店勤務ですが、米の値上がりが尋常じゃないです お米農家のせいじゃないのは勿論わかってる故に腹が立ちます」
「実家の田んぼも恥ずかしながら耕作放棄状態です。全然無料でいいんですが 使ってくれたらうれしいんですけど、なかなかそうもいきません」
「私の職場にはアジア系外国人がかなりいます。皆、お米食べる量が日本人より多いです」
「コロナ禍の米価の極端な下落と、直後のロシアによるウクライナ侵略戦争のおかげで肥料価格が上がったためにダブルパンチ的に効いているんじゃないでしょうか」
安定しない国内の米生産…日本の“米文化”はどうなるのか? 現状も含めて、金子さんに聞きました。
「令和の米騒動」の2024年、秋以降も米不足が続いているのはなぜ?
――今年は「令和の米騒動」となり、米の価格が高騰しました。
「2024年の令和の米騒動は、まさかのタイミングで値段がどんどん跳ね上がり、最終的には新米がとれてもまだ上がって23年の倍の米の値段になってしまいました。原因は、まず高温障害によるもの。反収(※)が1反当たり4俵(1俵の重量は約60キロ)から5俵、それ以下のところもありました。さらに高温によるカメムシ被害が多く発生し品質の低下も。産地では業者同士が値段を上げてしまっています」
※反収:1反当たりの収穫量を表す言葉で、土地生産性の指標に当たる。
――今も米の高値が続いているうえ、需要が供給に追いつかず米が不足しているとのこと。それはなぜ?
「最近は、外国の方が日本のお米を買うようになりました。おそらく輸入米も高いのが原因かと。またインバウンド(訪日観光客)により、外食産業で米の需要が急増したことも、米不足に拍車がかかっているようです」
国内の米生産が増えない!
――現状では国内のお米の生産を増やしていかないといけない状況なのに、米農家の廃業も増えているとか。
「現時点で、離農される農家さんが激増していて、たぶん、机上では計り知れない数字だと思います。実感として、この先の農家さんから買い入れるお米は激減する見込みです。農家さん向けの肥料屋さんがいて、例年の仕入れる量の半分ぐらいしか肥料が売れなくて大変だという話を聞きました。かなり広い範囲の水田を耕していた農家さんが高齢のために急に辞める人が増えたとのこと。ですから、私どもは、地元の農業委員会に相談しまして、水田の面積を増やす予定です。
農家を辞める人が増えたのは、今までの減反政策(※※)など国の農業政策でお米の生産が安定しないという専門家からの指摘もあったり…またコロナ禍でお米の値段が極端に下がったり。ウクライナ戦争により燃料や農薬、肥料などの価格の高騰も続いたり、機械の老朽化も進んだりして悪化。なかなか改善しない中、米農家の跡継ぎもおらず、高齢化に拍車がかかったんです」
※※米の生産量を調整して米価を維持するために、国が農家に米の生産量を割り当てていた制度。田んぼの面積を表す単位である「反」を減らすことから「減反」と呼ばれました。1960年代半ばに食生活の変化でコメが余り始めたことを受けて1970年に始まり、2018年に廃止。
――農家が廃業した背景には、日本人の米の消費量が減ったことも要因のよう。
「そうですね。日本人のお米の消費量は年々少なくなって、1962年の118キロから2020年には50.7キロとなって半減しています。特に米屋でお米を買う消費者は、全体の2%のごくわずかな層ですが、それより現在は低いと考えられます。米屋は斜陽産業と言われても仕方ありません。なので、今は米を売るだけではなく生産しています。農業認定者となって令和6年から川越の水田を耕したり。私が農産物検査員ですので自分の生産した『河越米』を検査してブランド強化を図ったりしています。そのほか、河越米を生産協力してくれる農家さんも増やしているところです」
米屋も米の生産を始めたが…今後の見通しは?
――日本人の米の消費量が減ったとはいえ、最近はインバウンドの増加で国内での消費量が増加するという現象が起きていると。
「はい。弊社の現状として、仕入れは昨年の半分ぐらいしか倉庫にない状態です。値段が倍以上上がって資金的にも厳しい状態が続いております。例年なら地元のお米を多く積み上げるのですが、今年は、他県から取り寄せております。その分、運賃とか値段も高いお米を買うようになって利益を圧迫しております。当分下がる予定はなさそうです。今後は、私たち米屋がお米の生産を増やし、近隣の水田を借り、高齢や後継者のいない農家さんの水田を弊社で耕して地域の農業を支えていきたいと思います。また、自分たちの作った河越米のブランド強化を図っております。
川越市とその周辺でイベントやキッチンカーにより河越米を炊飯し、直接食べてもらう地産地消推進をしております。キッチンカーも特別な車を2台用意。シトロエンというフランスの60年前の車はパリからやってきました。30年前のアメリカのスクールバスは、改造してうちの飼い猫のトラをイメージして作りました。自立型キッチンカーで災害時にも活躍できるように発電機を備え、レストランと変わらない設備を備えております。災害時、キッチンカーで炊き出しができるように2台とも自力で調理ができる設備や、お米の備蓄倉庫も完備。川越のふるさと納税に使われているお米で、キッチンカーでお赤飯やおこわを販売しています。お米の販売と生産、飲食を念頭に3本柱としてリスクを分散させる狙いです」
――今後の国内の米生産の見通しについて、どうみていますか?
「今後も、離農する米農家さんは増え続けると思います。国が主導して農政を良い方向へ向かわせないと主食どころか自給率も低迷してゆくのでは。また今年来年とお米の量に関しては作況指数(作物の収穫量を平年に比べて表す指数)からいうと例年は間に合うぐらいと思いますが、やはりインバウンドの消費の分が増え続けていることなどから、この調子だと今年よりも、来年の方が不足気味になるかと思われます」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)