褒めた対象は赤子から80代までと幅広い

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繁華街の路上で「すごくほめます」と大きく書かれた段ボールを持って立つ男性。通りすがりの人を褒める事で、投げ銭をもらって活動している「褒めますおじさん」(43歳)だ。
先日放送された『ザ・ノンフィクション』でも密着を受け、話題を呼んだ同氏。これまで、どういった人生を歩んできたのだろうか。本人を直撃した。

◆活動を始めたばかりの時期には葛藤も

路上パフォーマンスといえば、音楽や歌を筆頭に大道芸や似顔絵などが多い。あえて「褒めること」を選択したのはなぜなのか。

「もともと、路上パフォーマンスに興味がありました。何かをやりたい気持ちはあったんですが、できることがなかったんですよ。だから、すぐにできて嫌な気持ちになる人も少ない『褒める』活動をしてみることにしました」

シャイな国民性だからこそ、諸外国に比べ日本人はうちに秘めた思いを直接ぶつけるのが苦手な印象がある。案の定、慣れるまで多少の時間を要したようだ。

「確かに、やってみると難しかったです。2021年の12月30日に始めたので、もうすぐ3年くらいになりますが、どうしても褒め言葉が出て来なかったり、無理をしてカッコイイ・可愛い・キレイ・イケメンなどの、使いやすだけの言葉を出してしまったりして、『これは続けていけないかな』と思うことも何度かありました」

◆イメトレと反省会で“褒め力”がレベルアップ

誰にでもできそうだが、初対面の相手を褒めるとなると一筋縄ではいかない。褒めますおじさんは普段、どこをどう褒めているのだろうか。

「会ったばかりで内面を褒めるのは嘘になるので、やっぱり見た目からになりますね。あとは、『なぜ僕のところに来てくれたのか』理由を聞いて、お話するなかから“褒めポイント”を見つけていく感じもよくあります」

3年近く続けていると、日々のルーティンも最適化されていく。地道な努力を積み重ね、徐々に“結果”を出せるようになっていった。

「朝起きた時に、頭の中でシミュレーションをしてみてイメージトレーニングをします。また、寝る前にもその日の活動を振り返って、『あの部分はこんな言葉をかければよかったな』と一人で反省会もします。そうやって毎日少しづつ褒められるようになってきました」

◆ノリで来る人もいれば、会社をクビになった当日に来た人も

よほどのことがない限り、日常生活で褒められる機会は少ない。当然褒められたい欲求を満たしたい気持ちは十分に理解できる。依頼者たちには、どういった背景があるのか。

「わりと軽い気持ちでというか興味本位やノリで来られる方が多いですよ。22時過ぎくらいになると、お酒を飲んだ帰りの方も多いですね。男女比でいうと半々くらいなんですが、真剣に褒めて欲しいと来られるのは女性が多い印象です。失恋したばかりだったり、自分の頑張りが成果につながらなかったりしたり」

年齢層は幅広い。子供連れが赤子を褒めて欲しいと訪れたりする一方で、最高齢は82歳の女性。ときには、人生相談に発展するような場合もある。

「『今日、会社をクビになりました』という方がいました。普段はまず直感的に褒めはじめますが、さすがにこのときはよく話を聞いて、その都度、頑張ってこられた部分を褒めさせてもらいました。気がついたら数十分になることもあり、涙を流して帰られる方もいます」

コロナでの行動制限がなくなって以降、変化を感じられるようになったという。

「街に外国の方が増えましたよね。『すごくほめます』という段ボールにスマホを向け、翻訳アプリで意味を知る……という人もいます。英語はほとんどできませんが、外国の方に褒めてほしいと言われたことも。知っている単語を駆使して褒めたら喜んでくれました(笑)」