【日本株】データセンター向けで見直されるHDD
SSDに押され気味だったHDDの需要が急速に増加
人工知能(AI)関連のデータセンター建設ラッシュを背景に、ニアラインと呼ばれるデータ保存用のHDD(ハードディスクドライブ=駆動装置)の需要が急増している。HDDモーターで世界首位のニデック(6594)が先に発表した第2四半期決算でもHDDの需要増加が確認されている。
記憶媒体としては、パソコン向けなどでSSDに押され気味だったが、大容量が不可欠なデータセンター向けとして見直されてきている格好だ。
HDDとSSDの違い
記憶媒体ではHDDとSSD(ソリッドステートドライブ)の2種類が代表的な存在である。
HDDは磁気ディスク装置の一つで、パソコン(PC)などほとんどのコンピュータに使われる代表的な外部記憶装置である。磁性体を塗布したアルミなどを原料とする金属の円盤状ディスク(プラッター)を高速回転させ、磁気ヘッドでデータを読み書きする仕組みで、円盤状にデータを記録する。大量のデータを保存するには、大容量のディスクが必要になる。最大の特徴はテラバイト(1テラバイトは1000ギガバイト)単位の大容量製品が多い点だ。
SDDはHDDと同様、PCなどでデータを記録するためのストレージ(補助記憶装置)のひとつである。磁気ディスクではなく、半導体素子を使ったNAND型フラッシュメモリという、細かく区切られた「セル」と呼ばれる領域にデータを瞬時に記録する。SSDの最大のメリットはデータの読み込み、書き込み時間の短さで、瞬時にデータが読み込める。また、HDDが落下などの衝撃に弱いのに対し、SSDは強く、ノートPCの持ち運びなどで優位性がある。さらに静音性にも優れている。
このため、PC領域に関しては、近年ではSSDの需要が増加している。SSDは容量あたりの価格が高いため、大容量モデルは少なかったが、近年は増加傾向にある。
しかし、データセンター向けでは、大容量であることが優位性を保つ。より容量を高めたHDDも登場し、さらにHDDはSSDに比べ価格が安い点も魅力であることから、急速に需要が増加している要因となっている。報道ではニアライン向けのHDDは品薄になっていると伝えられている。
HDD関連銘柄をピックアップ
ニデック(6594)
HDDモーターで世界首位。HDD向けの小型精密モーターは同社にとってほぼ祖業であり、ここを起点にEV駆動用モーターなど大型分野に裾野を広げてきた経緯がある。第2四半期決算でHDDモーターを含む精密小型モーターセグメントの営業利益は前年同期比74%増の290憶円と快走。
【図表1】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週) 出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月7日時点)日本発條(5991)
HDD用サスペンション(精密ばね)で世界シェア約5割のトップメーカー。HDDサスペンションとは磁気ヘッドを支えるフレームのことである。高速で回転する磁気ディスク上で磁気ヘッドは浮いているが、HDDサスペンションは磁気ヘッドとディスクとの間隔を保つ役割をする。
【図表2】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週) 出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月7日時点)TDK(6762)
HDD用磁気ヘッドの世界トップメーカー。磁気ヘッドはHDDを構成する精密部品の一つで、プラッタ(ディスク)上に保存されたデータ(磁気情報)を読み書きするための重要な機構である。生産から組み立てまでを一貫して手掛ける。第2四半期時点で2025年3月期業績を上方修正。データセンター向けの旺盛な投資などが要因。
【図表3】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週) 出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月7日時点)ミネベアミツミ(6479)
極小ベアリングで世界首位。HDD向けが主力。HDDのディスクを回転させるスピンドルモーター、HDDの磁気ヘッドに取り付けたアクチュエーター(ヘッドを動かすためのアームを制御する装置)の支点部分に使われるピポットアッセンブリーなどを手掛けている。
【図表4】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週) 出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月7日時点)Mipox(5381)
研磨フィルム・研磨パッド・液体研磨剤の大手で、HDDや半導体向けが主力。箔をコーティングする技術を生かし、磁気ヘッド研磨テープ製造などに展開している。
研磨フィルムはHDD製造の最終研磨工程に使われる。微細な異物や突起などがディスク表面に残ると、ヘッドがこれに当たり、データ損傷やクラッシュの原因となる。最終研磨工程ではこれらを除去し、数ナノメートル以下のクリーンな状態に仕上げる必要がある。
【図表5】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週) 出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月7日時点)I-PEX(6640)
スマホやHDDに使われるコネクターの大手。HDDに使用される各種機構部品を供給している。ランプと呼ばれるディスク表面と磁気ヘッドが接触しないようにする部品のほか、アクチュエーターの制動を担うラッチ、ディスク上の気流を制御するエアスポイラーなども手掛ける。
【図表6】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週) 出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月7日時点)HOYA(7741)
HDD用ガラスサブストレート(磁気ディスクのベースとなる円盤状の基板)の開発、製造、販売を手掛ける。サブストレートにはガラス製とアルミ製があるが、同社は世界唯一のガラス製サブストレートメーカーで、当然シェアは100%。ニアライン向け3.5インチのサブストレートではアルミ製も含めてシェア約4割。データ生成量の増加でより大容量なHDDが求められているが、これにはガラス製が適しているという。
【図表7】週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週) 出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年11月7日時点)和島 英樹 経済ジャーナリスト