ライン付きデザインでスタイリッシュな印象のおむつ(提供:平林景さん)

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 今年9月、「万博で行うおむつのファッションショーのモデル募集」というニュースが話題を集めました。ホームページを見てみると、赤・青・黒という色とりどりのおむつが並ぶほか、ラインが入っていたりレースがついていたりと、一見おむつとは思えない作品の数々が掲載されています。

ライン付きデザインでスタイリッシュな印象のおむつ(提供:平林景さん)

 詳しく調べてみたところ、おむつを履くことになりおしゃれを諦めてしまった人たちに向けて、ファッション性を重視したおむつを提案する「未来のおむつプロジェクト」なるものが、来年開催予定の大阪・関西万博に向けて進行中であることがわかりました。

 “未来のおむつ”とは、一体なんなのか? プロジェクトの内容や誕生のきっかけについて、同プロジェクトの仕掛け人である日本福祉医療ファッション協会の代表理事・平林景さんに話を聞きました。

――同プロジェクトが誕生したきっかけは?

【平林さん】 きっかけは、ある女性から聞いた話でした。私自身、放課後デイサービスの施設を運営しているため介護関係の方と関わることも多いのですが、あるとき出会った方から、「おしゃれだった母親が介護施設に入っておむつを履くことになり、そのときの悲しい顔が忘れられない」という話を聞きました。

その方の母親は、おむつを履くようになったころからおしゃれをしなくなって元気がなくなり、予定よりも早く亡くなってしまったそうなんです。そのときに、「履いておしゃれができるおむつがあれば、その方の人生が変わったんじゃないか」と強く感じました。

ほかにも、「友人におむつ姿を見られるのが嫌で、好きな旅行にも行けない」「白いおむつを履く自分の姿を見ると、おしゃれなんて諦めてしまう」など、多くの方がおむつによっていろいろなことを諦めていることがわかりました。

そこで、“勝負パンツ”ならぬ“勝負おむつ”を作ってやろうと思い、昨年10月に「未来のおむつプロジェクト」がスタートしたんです。

――「未来のおむつ」とは?

【平林さん】 やはり、あの白さに抵抗感のある方が多いと思ったので、まず最初に真っ黒なおむつを作りました。作ったおむつをX(旧:Twitter)に投稿するとすぐに大きな反響があり、「毎日変えられるようなセットも欲しい」という声をいただいたあとには、7色の「レインボーアソート」を作りました。こちらも、Xで4万件もの“いいね”をいただくほどの反響でした。

その後も皆さんの声を参考にしながら、レース付きデザインやラインが入ったデザイン、短パンとして1枚で履けるものなど、色も形もさまざまなおむつを作りました。

おむつならではの質感も利用し、「ダサくない」を飛び越えて「おむつだからこそおしゃれ」と思われるようなものを目指しています。

最初に作った黒のおむつ(提供:平林景さん)
レインボーアソート(提供:平林景さん)
リボンのついたおむつ(提供:平林景さん)
短パン型おむつ(提供:平林景さん)

――プロジェクトの現在は?

【平林さん】 現在、花王(株式会社花王)さんなどの大手おむつメーカーや下着メーカーさんと協力して、来年6月に予定されている大阪・関西万博でのおむつのファッションショー「O-MU-TSU WORLD EXPO2025」に向けて、目下準備中です。ちょうど先日、ランウェイを歩くモデルが決定し、プロジェクトは着実に進んでいます。

「O-MU-TSU WORLD EXPO 2025」(提供:平林景さん)
モデルが着用すると……(提供:平林景さん)

――どのような使い方をしてほしい?

【平林さん】 プロジェクトの原点でもあった、おむつでファッションを諦めた人がもう1度おしゃれを楽しむきっかけにしてほしいのはもちろんですが、若い人たちにも注目してほしいんです。

この商品を皮切りに、おむつを履くことへのハードルがもっと下がって、災害時はもちろん、長い会議や長距離移動などのなかなかトイレに行けない日常のシーンでも、便利な道具として気軽におむつを使う社会になればよいなと思います。

高齢者や障がいがあってやむを得ずおむつを履く方が、より誇りを持っておむつを履けることにも繋がり、ひいては、おむつによって何も諦めなくてもいい社会に繋がると思うんです。

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 “おむつでおしゃれを”という、既存の概念を覆す「未来のおむつプロジェクト」。「特許は取るのですか?」と尋ねると、平林さんからは「いろいろな方に自由に作ってもらうことで時代が変わることが1番なので、権利はフリーでやらせていただきます」という力強い回答が。福祉業界の革命児の挑戦から、今後も目が離せません。