世間を震撼させている「闇バイト」を契機とした凶悪犯罪。特徴的なのが、犯罪の実行役に20代前半の若者が多い点だ。なぜ、若者は安易に犯罪に加担してしまうのか。

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 闇バイトについて長年取材を続けている犯罪ジャーナリストの多田文明氏は「10数年以上闇バイトの実態を調査しているが、“誘う側の手口”が巧妙化しており、言葉巧みに騙され、加担してしまう人が増えている印象だ」と語る。

 経済アナリストの森永康平氏も、闇バイトによる犯罪について「大元の人たちは(闇バイトを活用した犯罪)歴が長いのでいろんなことを知り尽くしているが、SNSで(犯罪の実行役として)気軽に加担してしまう人たちは何の訓練もせず、当日初めて顔を合わせてそのまま犯行に及んでしまう」と同調。加えて、以下のように背景を推察する。

 「本当の“ド素人”が強盗しているので力加減がわからず暗証番号聞く“脅しとしての暴力”で殺してしまう。しかも(犯行の)手口が甘いため、逃げた時に平気で足跡や指紋を残すケースがある。強盗殺人は1回やってしまったら何十年も刑務所に入るがそれすらも理解できない、想像できないままやってしまうという恐ろしさがある」

 加えて多田氏は、一連の闇バイトが関わる事件の構造について、「かつて特殊詐欺をメインに行なっていた犯罪集団が、現在は強盗まで行っている。その結果、かつての『指示役』と『実行役』という特殊詐欺での構造がそのまま活用され、上の命令の言われたように行動するシステムとなり、凶悪化している」と指摘した。

 「指示役」とされる犯人は、闇バイトで募った実行役の個人情報を盾に脅して操るケースが多いという。多田氏も「(犯行グループは)弱みをうまく握ることが巧みだ。相手の一番弱いポイント、どこの恐怖心を突けばいいのかという考え方は、詐欺をする際と同様であり、ここでも(特殊詐欺と同じ手段で)実行、管理されている」と分析する。

 闇バイトの「募集方法」もより巧妙になっているようだ。東京都の詐欺加害防止サイトで紹介されているケースでは「一件5万円」「高額収入」「DMで連絡」といったキーワードに注意するよう呼びかけられているが、多田氏は「闇バイトへの注意喚起が多くされるようになった結果、募集する側も『日給1万5000円』などと、あえて低い金額で募集するケースも出てきている」と警鐘を鳴らしている。

 加えて、こうした犯罪では警察に捕まる多くが「実行役」のため、詐欺グループは常に人手不足となり、常に募集が行われている。こうした状況について、森永氏は「闇バイトに応募してしまう人たちは、美味しいところは全部指示役が持っていって、自分たちは“捨て駒”なんだと気づいたほうがいい。自分の人生を懸けて、顔も知らない指示役の人生を支えることの何が嬉しいのか。冷静に全体の関係図を俯瞰できるようになってほしい」と呼びかけた。

 では、闇バイトの魔の手から家族を守るためにはどうすればよいか。金融リテラシーの啓蒙にも取り組んでいる森永氏は教育現場の“ジレンマ”について吐露する。

 「非常に難しいことに、(闇バイトについて)比較的見抜けるリテラシーの高い子たちは真面目に(金融教育の)授業を受けていて、逆にお金の授業やゲームを『つまんないから(やらなくて)いいよ』と、全く興味を示さない子たちほど、(闇バイトに)手を染めてしまう傾向があるのでは」

 そのため森永氏は、連日各社から行われている“報道”に意義があると語る。

 「今年の頭から投資詐欺がかなり増えたが、様々なメディアが連日のように扱った結果、今では(投資詐欺の)件数がかなり下がっている。これは(報道が)ある種、啓蒙の役割を果たした。報じることで、若者が“案件”に応募する際に『あれ? これさっきニュースでやっていた闇バイトかもしれない』と、思いとどまるかもしれない。そういう意味でも、全て学校に任せるのではなく、報道が果たせる役割も大きい」

 多田氏も「闇バイトについてはインターネットも含めどんどん注意喚起を行なっているが、後になって相談しに来る人はほとんど(注意喚起を)見ていない。インターネットは自分の興味があるものしか出てこない側面があるからだ。だからこそ、テレビなどで報道されることで、闇バイトについて知ってもらい、家庭で話し合いや相談ができるきっかけになる」と期待を寄せた。

(『ABEMAヒルズ』より)