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 「闇バイト」というワードがSNSのトレンドになるなど、今夏から10月にかけて相次ぐ緊縛強盗事件で、逮捕された実行犯の背景が注目されている。指示役とみられる匿名・流動型犯罪(通称・トクリュウ)グループの募集にアルバイト感覚で応じて犯罪に手を染める若い容疑者たち…。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏がその実態を解説した。

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 小川氏はまず「闇バイト」という言葉に違和感を示す。「いじめは犯罪なのに、『犯罪』と言わずに〝いじめ〟と言う感覚に近い。〝闇営業〟といった言葉に由来しているのかもしれないが、それは犯罪であり、強盗。強いて言えば『犯罪バイト』です」と強調した。

 千葉県市川市の住宅に侵入した男3人組が50歳女性を粘着テープで縛って暴行後、車で拉致、監禁した事件で逮捕された藤井柊容疑者は26歳。小川氏は「実行犯の大半は犯罪に慣れていない〝素人〟なので加減を知らず、非常に荒っぽい犯行手口になる。女性を連れ去り、監禁した事件も、指示役と連絡を取りながら犯行に及んでいる場合は、『キャッシュカードの暗証番号を言わせるために本人を連れ去れ』という指示を受けて監禁した可能性が強い」と解説した。

 その上で、同氏は「指示役から命令されて罪を重ねても、ろくに報酬は払われない。指示役にとって彼ら実行役は〝捨て駒〟。指示役は捕まらず、実行役はすぐ逮捕され、20代で一生を棒に振ってしまう。強盗致傷だと5年以上の懲役、強盗殺人になると極刑の可能性もある。実際は割に合わない〝犯罪〟です」と補足した。

 横浜市内の住宅で75歳の男性が殺害された強盗殺人事件で逮捕された宝田真月容疑者(22)は個人情報を指示役に知られ、家族にも危害が及ぶので断れなかったという旨の供述が報じられた。運転免許証などで個人情報を指示役に把握され、犯罪行為への加担を拒否すると、自身や家族に危害を加えると脅されるという。警視庁と神奈川県警、千葉県警、埼玉県警は18日に合同捜査本部を立ち上げ、実行役に向けて相談を促す動画をX(旧ツイッター)に投稿。指示役に脅迫された場合、「警察は相談を受けたあなたや、ご家族を確実に保護します」と呼びかけた。

 小川氏は「最初は、(犯罪ではない)ホワイト案件やドライバー募集などですが、ちょっと考えたら、そんな高額なバイトはあり得ない。自分だけでなく実家の親の住所や職業などの情報も聞かれてしまって、やめると言ったら脅されるのでやってしまう。指示役はずるくて、現場に呼んでから、やっと指示を伝えたりする。断ることができなくて現場に行ってしまった場合は、その場で110番した方がいい」と呼び掛けた。

 いまだ検挙に至っていない指示役。小川氏は「指示役を捕まえないことには、こうした事件が今後も増えていく。1都3県で捜査本部を組んだことは非常にレアケースで、警察は指示役、さらに、その上にいるであろう首謀者の逮捕に向けた本気度がうかがえる。指示役は同一グループの中で複数いる可能性がある。最初に募集を出した時にさかのぼり、今回は『シグナル』という秘匿性の高い通信アプリが使われているが、そういった所をたどって解明していく必要がある」と指摘した。

 さらに、同氏は「フィリピンの収容所から指示していた『ルフィ事件』と同じで、特殊詐欺で使用された名簿が使われている。今回の事件では、所沢で85歳と83歳の高齢者のご夫婦、国分寺では1人暮らしの60代女性と、ある程度、年齢などを名簿等で当たっている。一連の事件を見ると、一般住宅の中でも室内に金庫がある家が狙われており、リフォーム業者やリサイクル業者を装って家に上がり込んだ際に金庫があることを確認するなどして作成した名簿が使われている可能性が強い」と付け加えた。

 さらに実行犯の低年齢化も。20日には山口県光市の住宅を狙った強盗予備の疑いで、茨城県の14歳の男子中学生と16歳の男子高校生、千葉県の18歳の男子高校生が逮捕された。3人はいずれも面識がなく、押収したスマートフォンの分析などによって、SNSから応募したことが判明。〝闇バイト〟という表現でオブラートにくるまれた凶悪犯罪は深刻な社会問題になっている。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)