Tiktokを運営するByteDanceが、インターン生によってAIモデルが破壊されて数千万ドル(約数十億円)の損失を被ったというウワサが中国のソーシャルメディアで広がり、Byte Danceは2024年8月にインターン生1名を解雇していたことを明らかにしました。

关于“实习生破坏大模型训练”的事实澄清_字节跳动_2024年10月19日_微头条-今日头条

https://www.toutiao.com/w/1813324433807370/



ByteDance intern fired for planting malicious code in AI models - Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2024/10/bytedance-intern-fired-for-planting-malicious-code-in-ai-models/

ByteDanceによると、このインターン生は商業技術チームに所属していたそうですが、「重大な規律違反」を犯したために解雇したとのこと。ByteDanceはソーシャルニュースメディアの今日頭条(Toutiao)で、「関与したインターン生は、商品化技術チームの研究プロジェクトのモデルトレーニングタスクに悪意をもって干渉しました」と説明しています。

ネット上でのウワサでは、インターン生の規律違反は8000台以上のグラフィックカードに影響を及ぼし、数十億円規模の損害を出したとされています。しかし、ByteDanceは「今回の件は正式な商品化プロジェクトとオンラインビジネスには影響しませんでした。正式な商用化プロジェクトやByteDanceの大型モデルなどの他のビジネスにも影響を与えませんでした」と説明し、ネット上でささやかれているウワサは著しく誇張されていると指摘しました。

また、該当するインターン生がソーシャルメディアのプロフィールに「誤解を招くような情報」を追加したと主張。インターン生は自身のプロフィールに「AIラボ所属」であるように記していたそうですが、ByteDanaceはこれを否定し、インターン生の大学と業界団体に記述が誤りであることを通告したと述べています。

今日頭条でのByteDanceの投稿には、「彼が所属する商業技術チームは以前はAIラボの下にあった。過去2年間、商業技術チームの採用はAIラボとして記載されていた。彼は2021年にインターン生としてチームに参加し、AIラボでも最も先進的な部署にいたのではないか」と、ByteDanceの声明を疑うユーザーからのコメントがついていました。

また、別のユーザーは「インターン生が『悪意のあるコード』を使って数カ月にわたって意図的にトレーニングを妨害した」と主張し、ByteDanceが損害を軽視していると指摘。ByteDanceが損害賠償を請求した場合、インターン生はより厳しい罰則を受ける可能性があると述べました。



OpenAIやAnthropicといったAI企業のみならず、MicrosoftやAppleなども積極的なAI技術開発を行っている中で、TikTokを抱えるByteDanceはAI開発競争で遅れを取っていると報じられています。ByteDanceの共同創設者兼CEOであるリャン・ルーボー氏は全社員会議で、ByteDanceが外部の変化に十分敏感になれず、OpenAIのGPT開発を無視したことで何年も無駄にしてきたと述べ、社員全員に「危機感を持つように」と語りました。TikTok運営が主事業となっているByteDanceにとって、もはやAI開発力の向上は喫緊の課題となっています。

Bloombergによれば、ByteDanceは2024年に108億ドル(約1兆6200億円)の企業融資を確保したとのこと。この資金の大部分はByteDanceが力を入れているeコマースサービスに、そして「生成AI開発への大きな一歩を踏み出して、ChatGPTのような大規模言語モデルベースのチャットボットを提供するアプリを開発する」という目標につぎこまれると見られています。



AI開発競争が激化している中国では、AlibabaやTencentといった大手企業がAI関連の人材を奪い合っている状態。ByteDanceが解雇したインターン生もこうして確保された人材のうちの1人であり、今回の一件でAI開発の歩みが一時的とはいえ止まってしまったとすれば、ByteDanceは直接的な経済的損失とは別に大きな痛手をこうむったといえます。