(写真:buritora/PIXTA)

2023年の婚姻届の集計結果が厚生労働省より9月に発表された。筆者は、止まらぬ少子化状態にある日本で、急速に人口マイノリティ化し、その価値観がおざなりにされやすい若者の価値観に注目し、2020年から地方自治体や地方のシンクタンクとタッグを組むなどして、20代男女の価値観を定性・定量の両面から調査し続けている。

政治学の分野で「シルバー民主主義」といわれる、人口数の多い高齢者の意見で世の中の「常識」「幸福感」が決まってしまっては、日本の少子化の元凶となっている未婚化は止められないと考えている。特に20代男女の価値観に注目する理由は、結婚の大半が30代前半までの男女、もっというと20代男女で発生しているからである。

今回は、高齢化する読者の「常識」を覆すデータとして、2023年に初婚同士の結婚をした20代男性の妻の年齢について、国の婚姻統計データを分析した結果をご紹介したい。

なお、政府統計において年齢別にカウントされる婚姻件数は「各届出年に結婚生活に入り、届け出たもの」と定義されており、婚姻届は提出されているものの、結婚の実態の確認が取れていないものはカウント外とされていることに注意されたい(単純な婚姻届全件の年齢別仕分けではない)。

初婚同士結婚の過半数が29歳までの若年男性

まず、東洋経済オンラインからこれまで何度も発信してきたため、読者にとっては以下は常識かもしれないが、改めて念押ししておきたい。

「平均」初婚年齢の上昇は、「これまではみられなかった高齢者の結婚が一定数発生している」ことによる平均値の引き上げであり、いわゆる「結婚適齢期」とされる統計上の婚姻多発ゾーンの山が動いているわけではない。20年前と比して統計的に見た「適齢期の山」は動いていない、と理解いただきたい。

2023年の初婚同士結婚をした男性の年齢分布を分析すると、29歳までの男性が56%(13.0万件)、30歳以上が44%(10.3万件)と、圧倒的に20代までの若い男性の結婚が占めている。


ちなみに、2023年に初婚同士の結婚をした男性の結婚年齢の最頻値(結婚発生数がもっとも多い年齢)は27歳、そして、26歳、28歳の順となっている。

29歳までの若年男性の31%が年上妻を選択

筆者は現在、統計上の結婚適齢期の男女の親世代(昭和生まれ)であるが、結婚した際に、年下の男性(夫)と結婚したことを同窓会で告げると、男性からは驚愕の声があがった世代である。実際に当時は10組に1組程度しか年上妻カップルが存在しなかった。

しかし、時代は変わり初婚同士婚の25%(2023年)が年上妻となっている。それだけでも時代の変化を感じるが、これが29歳までの若年男性の結婚相手となると、さらに親世代には驚きのデータとなっている。


2023年において、年上妻を選んだ男性は31%、同年齢の妻を選んだ男性は32%、そして、かつては当たり前だった年下妻を選んだ男性は37%となった。若い男性にとって、初めての結婚相手となる女性の年齢と自分の年齢の上下関係は多様化し、統計的にはほぼ年齢に関してリベラルな選択となっていることが示された。


年上妻を選んだ29歳までの男性の各歳別の詳細をみると、17歳は母数が少ないため参考値であるとして、18歳からはそれなりの母数が生じている。結婚件数が多いベスト3までの26歳から28歳の男性の状況を見ると、いまの若年男性は「おおむね3割は年上妻と結婚している」という表現がふさわしいだろう。

コロナ禍で何が変わったのか

コロナ禍にあった2022年も、実は初婚同士結婚における29歳までの男性の年上妻割合は31%であった。

コロナ禍で動いたのは、男女の初婚同士結婚年齢のピークが長く1歳差(女性26歳と男性27歳)であったのが、男女ともに27歳となったことと、男性の2番目に多い結婚年齢が28歳から26歳となったこと、という「男性の結婚ピークの早婚化」である。

インタビュー調査で筆者に「独身貴族だけは嫌です」と語気を強めたのは、28歳の中部エリア在住の夜勤職の男性だった。その彼はほどなくして、ネットを通じて共通の趣味で知り合った首都圏在住の働く女性と結婚し、首都圏に移住した。

大企業でも、転勤の内示に対して「妻の就業継続問題があるので辞めます」といともあっさりと退職願を出してくる男性の存在が少なからずいると聞く。

コロナ禍を経て、男女はともにアンコンシャスに「出会いの大切さ」に向き合い、特に女性より大きく未婚化が進む男性は、先輩諸氏の姿を観察しつつ、行動変容を起こしているのかもしれない。

(天野 馨南子 : ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー)