日本にレストモッド流行の兆しあり?

旧車のレストアといえば、使用や経年などで傷んだ車を、なるべくオリジナルに忠実に修復するのが定番。ただ、世界の旧車ファンの間では、修復した旧車に現代的なカスタムを施す「レストモッド」という手法も人気があるようです。

そのレストモッドを日本の自動車メーカーが手掛けたと聞いたら、ちょっと興味を引かれませんか?……実はあるんです、そんな興味深いカスタム旧車が。

■最新技術で生まれ変わったAE86

2024年9月19日、株式会社KINTOが自社企画に関するプレスリリースを発表しました。

これによると、トヨタのコンセプトカー「AE86 G16E Concept」と「AE86 BEV Concept」に試乗できる期間限定企画の抽選受付が開始したとのことです(抽選申込みは2024年9月30日まで)。

出展:進化したハチロクを東京で体験!新世代エンジン車「AE86 G16E Concept」と電気じどう車「AE86 BEV Concept」をVintage Club by KINTOで

AE86 G16E Conceptは、AE86型スプリンタートレノに新世代エンジン「G16E」を搭載した車両です。かたやAE86 BEV Conceptは、AE86型カローラレビンをBEV(電気自動車)に改造した車両となっています。

注目したいのはAE86 BEV Conceptで、トランスミッションがなんと6速MT。「東京オートサロン2023」出展モデルを改良した車両とのことですが、旧車を6速MT仕様のBEVにするなんて、かなり手の込んだカスタムですよね。

この2台のAE86、ある意味で究極のレストモッドといえそう。トヨタやKINTOでは公式に「レストモッドです」とは言ってませんけどね。

■オプション誌のレストモッド特集

ここでもう1つ、レストモッドに関するプレスリリースをご紹介しておきましょう。

株式会社三栄の2024年6月26日付けのプレスリリースでは、チューニング情報誌「OPTION(オプション)2024年8月号」において、特集「超進化系 旧車レストモッド」を掲載すると発表しています。

出展:オプション2024年8月号は6月26日発売!特集は『超進化系★旧車レストモッド』
出展:オプション2024年8月号は6月26日発売!特集は『超進化系★旧車レストモッド』

こちらはすでに発売された雑誌なので、もう読んだ方も多いかもしれませんね。上記の出典画像を見るかぎりだと、掲載されているレストモッドはなかなか魅力的なようです。筆者的にはZ20型ソアラにグッときました。

こうしたカッコいいカスタム旧車が増えれば、日本でもレストモッドの人気に火がつくかもしれません。というわけで、次節からはレストモッドの魅力や、メリット・デメリットなどを見ていくことにしましょう。

レストモッドの魅力とは?

レストモッドという言葉は造語で、レストアとモディファイを合わせたものです。意味は「修復して改造する」なのですが、レストモッドの魅力とは何なのでしょうか?

■ワガママ仕様が魅力

レストモッドを施された旧車には、現代的な走行性能と快適性が備わっています。

フレームや内外装などを入念にレストアしたうえで、先進のパワートレインや足回りパーツ、快適装備などをプラスするのがレストモッドの基本。後付けされる快適装備には、オートエアコンやパワーステアリング、スマートキーなどがあげられます。

こうした修復と改造を受けたレストモッド車は、現行の車と同じように乗ることが可能です。見た目はヴィンテージカーそのもので、走りと快適性は現代的。このワガママを形にしたような仕様がレストモッドの魅力といえるでしょう。

■独創性も魅力の1つ

レストモッドとひとくちに言っても、カスタマイズのスタイルはさまざまです。先ほど掲載したオプション誌の画像を思い起こすと、ソアラの見た目がノーマルに近い一方で、フェアレディZはいかにもカスタムカーって感じでしたよね。

また、筆者がNetflixで見たリアリティ番組では、1969年式シボレー シェベルをマッスルカー風にレストアして、さらにダッシュボードをタッチスクリーン仕様にカスタムしていました。

このほか、レストモッドの本場アメリカでは、フレーム新造と電気自動車化を施したヒストリックSUVなんてものも出回っているようです。もはや何でもアリな感じですが、こうした独創的なカスタムが許容されることもレストモッドの魅力といえるでしょう。

レストモッドのメリット・デメリット

“究極の趣味車”の1つといえそうなレストモッドですが、いかに特別な車にも欠点はあるものです。ここでは、レストモッドのメリットとデメリットを見てみることにしましょう。

■レストモッドのメリット

・安心して旧車に乗れる

現行車とくらべると、一般的な旧車はエンジン動作が不安定です。また、ブレーキや足回りパーツの性能も低いため、運転に技術を要します(そこが魅力ともいえますが)。

かたや現代的にカスタムされたレストモッドなら、現行車と同じように安心して乗ることが可能。急な故障を心配する必要がありませんし、運転しやすさや快適性も現行車レベルのため、遠出も気兼ねなく楽しめます。

・所有満足度が高い

基本的に、レストモッドはワンオフで制作される一点ものです(例外もあります)。世界に2台とない自分だけの特別なヴィンテージカーを手に入れれば、この上ない所有満足感を得られるでしょう。

また、レストモッドは日常使用できる旧車ですから、自宅ガレージに飾るだけでなく、気軽に街を流して走れます。「自慢の旧車を大勢に見てもらいたい」「街で旧車好きの視線を集めたい」なんて願望も、レストモッド車があればいつでも叶えられます。

■レストモッドのデメリット

・フルレストア旧車より高額

レストモッドの販売価格は高額で、安くても1千万円以上、高額なモデルになると1億円以上します。アメリカのシンガー社が75台限定で販売した空冷ポルシェ「911 DLS」のお値段は、なんと2億円だったとか(しかも完売しています)。

一方、一般的な旧車のレストア費用は数百万円~1千万円ぐらいが相場と、レストモッドよりは安価です。まあ、こちらも庶民には捻出が難しい金額なんですが、まだ現実味がありますよね。

・文化遺産としての価値が下がる

希少な旧車をレストモッドに改造すると、その車の文化遺産としての価値が下がってしまいます。元に戻せないほどの大規模なカスタムを行った場合は、文化財的な価値はほぼ失われてしまうでしょう。

とはいえ、修復されず朽ちていく旧車も世の中には多いわけですから、「レストモッド=旧車文化破壊」と言い切るのは短絡的な気もします。レストモッドは旧車に新しい価値を与えるカスタム。ヴィンテージカーに乗り続けるための選択肢として、アリなのではないでしょうか。

理想のレストモッドを教えてください

法律に触れない範囲であれば、どのようなカスタムも許容されそうなレストモッド。もし、理想のレストモッドを手に入れられるとしたら、ドライバー諸氏はどのようなモデルを希望するのでしょうか。

知恵袋サイトで「理想的なレストモッドを作れるとしたら、どの旧車をどのように改造しますか?」と質問してみたので、回答を見てみましょう。

■質問へのご回答

「車種がパッと思いつかないんですが、旧車のデザインは変えず、エンジンとコンピューター、足回りなどを新しくしますね(Sさん)」

「512BB系フェラーリやランチャ・ストラトス、カウンタックなど、乗りたい旧車はたくさんあります。レストモッドにできるなら、エンジンやトランスミッション、電装系などすべてジャパンクオリティにカスタムしますね。故障の心配なく乗れることを重視します(Oさん)」

ご回答いただいたSさんとOさん、どちらも安心して乗れる状態にカスタムすることを重要視しているようです。ちなみに、筆者の弟にも知恵袋サイトと同じ質問をしたところ「むかし欲しかったセリカ GT-FOUR(T200型)の足回りを交換して、予防安全機能を付ける」と言っていました。

手軽にレストモッドを楽しめる未来に期待

東京は南青山の「ABODA GARAGE」や、愛知県の「Rocky Auto」など、日本国内でレストモッドを取り扱うショップが増えつつあります。現在の日本ではマイナーな存在といえるレストモッドですが、これから認知度が高まっていく可能性は大いにあるでしょう。

また、レストモッドを手掛けるショップが日本国内にもっと増えれば、レストアとモディファイをパッケージ化した、比較的安価なカスタムサービスが登場するかもしれません。それによりレストモッドを手に入れやすくなり、ついでにレンタルサービスもできたりして。

……と、ちょっと妄想の世界に入ってしまいましたが、現代的にカスタムされた旧車を見かける機会が増えたら、車好きとしてはうれしいですよね。多くの人が手軽にレストモッドを楽しめる、そんな未来を期待したいところです。