“2度目の挑戦”で菅野智之はMLBで通用するか 米記者たちが論じる“懸念材料”とは?「いいオファーがなければ、日本を離れない」
今季のセ・リーグを制した巨人を牽引するエース級の働きを見せた菅野。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
復活を遂げたベテラン右腕
10月4日の深夜、衝撃的なニュースが日本球界を駆け巡った。
米スポーツを幅広くフォローする専門局『ESPN』のジェフ・パッサン記者が情報筋の話として、巨人の菅野智之が「今冬に海外FAでメジャーに来る」と報道。翌5日には本人も複数メディアで挑戦を明言。ポストシーズン後の交渉に向けた話し合いがいよいよ本格化する運びとなった。
【動画】巨人の大エース・菅野智之の「歴史的な」奪三振シーン
2度目のメジャーへの挑戦だ。菅野は14勝(2敗)、防御率1.97のハイパフォーマンスでMVPを受賞した2020年のオフにもポスティングによる移籍を目指したが、新型コロナの影響で各球団の財政を圧迫されていた事情もあり、交渉は難航。最終的に1年8億円(推定)で巨人に残留していた。
そこから4年の時が経ち、菅野も34歳となった。加齢を考えても、多士済々のメジャーリーグで通用するのかは気になるところだ。
もっとも、今季の菅野は復活を遂げた感がある。
2023年の故障もあって登板数が14と減少した菅野は4勝8敗と負け越し、防御率3.36と精彩を欠いた。だが、今季は24試合に先発し、最多勝も決定的な15勝(3敗)、防御率1.67、WHIP0.94を記録。さらに守備の関与しない与四球、奪三振、被本塁打で表す指標『FIP』も2.58の高スタッツで、まさに「エース」と呼べる投球が続いた。
これだけの実績があれば――。そう考えずにはいられないが、「懸念材料」が全くないわけではない。今回のスクープを行ったパッサン記者は今季の菅野の投球内容を分析し、4シームの平均球速は92マイル(約148キロ)で「2シームに頼っている」と指摘。「6球種の組み合わせは、NPBの打者を困惑させた。スガノは球速に欠けているが、配球と投球能力で補っている」と綴った。
今季のメジャーリーグの平均球速は94.1マイル(約151.4キロ)と、菅野とは約3.4キロもの差が生じている。さらに奪三振率が6.38と高くなく、被長打率も.298と決して低いわけではない。昨オフに日本ハムからレイズに加入した上沢直之(後にレッドソックス入団)が4シームを痛打される場面が散見しただけに、パワー不足の懸念は拭いきれない。
「ベテラン投手として新たな方法で成功を収めている」
ただ、ポジティブな要素がないわけではない。菅野について「短期契約で、トップクラスの先発投手を補強したいチームにとって、スガノは興味深い選択肢になり得る」と伝えた米移籍専門サイト『MLB Trade Rumors』は、こう綴っている。
「今季のスガノの奪三振率は、2016年から20年にかけての24.2%よりも低かったが、彼はベテラン投手として新たな方法で成功を収めている。今季の与四球率2.6%はキャリアベスト。彼の奪三振と四球の比率は6.94で、2016年に次ぐ数字だ。
さらに対戦した608人の打者に対して被本塁打はわずかに6本で被本塁打率は0.99%。これは彼のキャリアの中で最も低い本塁打率であり、21年から23年の2.91%の被本塁打率よりも大幅に低くなっている。さらにスガノは3試合に完投したが、21年以来、1試合も完投していなかった」
今回の報道を伝えたフランシス・ロメロ記者は「いいオファーがなければ、彼は日本を離れない。多くの関係者は1年契約+オプション以上にはならないと予想している」とシビアな見方も展開しているが、果たしてどうなるか。
いずれにしても、34歳のベテラン右腕は、今オフの小さくない話題となりそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]