大手企業に勤める会社員を辞め、脚本家の世界に飛び込んだ小御門優一郎が日々考えていることとは?

働く人の「今」にフォーカスし、その仕事像に迫る「ドキュメンタリー 仕事図鑑」。第4回は、脚本家の小御門優一郎に密着。演劇やドラマだけでなく、YOASOBI『三原色』の原作小説やリアル脱出ゲームのシナリオなど、幅広いジャンルで活躍する小御門にとっての「仕事」とは。

※記事の内容は動画「ドキュメンタリー 仕事図鑑」の取材における本人のインタビューを基に再構成したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

企画・編集:土生田晃

作り替えも場合によってはウェルカム

――一「脚本家」はどんな仕事?

演劇、映画、ドラマなどの脚本を書くことがメインの仕事で、この職業にあこがれを持っている人はみんなそこを目指しています。

脚本は「柱」「ト書」「セリフ」の3要素で書かれています。「柱」はシーン番号や、どこでそのシーンが展開されるかなどを書いたものです。「ト書」は登場人物などが何をしているかの状況説明。そして人物名と一緒にカギカッコで書かれているのが「セリフ」です。

脚本は「設計図」で、それを基に舞台を上演したり、映像作品を撮ったりします。もちろん脚本どおりに作られることばかりではないですし、映像演出に関しては脚本家の頭の中でイメージしきれない部分もあるので、われわれ(脚本家)の意図を正しく汲んでくれた作り替えだったら全然ウェルカム、と思っています。

――脚本家の勉強はどこで?

こういう活動を始めたのは、大学で演劇や自主映画を作るサークルに入ったのがきっかけでした。最初は見様見真似でしたが、一度「映画美学校」という、脚本を学ぶための初級コースにも通いました。

でもいちばんの勉強は、面白い作品を観て「あのシーンってシナリオ上だとどうなっているんだろう?」みたいに気になった部分をシナリオ本で見返して、「これくらいの感じで書いてあるのか」と確認することですね。

――昨今の事業環境は?

今(テレビドラマ)1話ごとの制作費は、悲しいかな、どんどん減っています。でも、どこも自社が権利元であるIP(知的財産)を持ちたがっているので、「ウチでもオリジナルものを作りたい」という機運や、そのための枠自体は、予算と相反する形で増えている面もあります。

――脚本家が「いつも締め切りに追われている」のはなぜ?

後ろに控えている人が多いからですね。よくプロデューサーに言われるのは、「別にお前をいじめたくて急かしているんじゃない。脚本の仕上がりが早ければ早いほど、ちゃんと最終的なクオリティーが上がるし、可能性を多く持った状態で制作に入れるから」ということです。

台無しにしてしまったらどうしよう

――アニメ『【推しの子】』でも脚本家の苦悩が描かれました。

脚本家というのがいかに「狭間」に位置しているかを解説しているエピソードがありましたね。「プロデューサー」がいて、原作がある作品なら「原作者」もいて、あとは「監督」という、結局その作品を自分のものとして作っていく人がいて、「演者」がいて。

僕はありがたいことに、これまで(自身の)オリジナル作品を手がけることが多かったですし、演出まで自分でやることも多かったので、板挟みの難しさはあまり経験してこなかったかもしれません。


オリジナルの縦型ショートドラマ制作に挑戦する小御門

――現在は原作のある映画の脚本に挑戦中です。

原作がある作品を手がけるのは今回が初めてです。原作がもう、原作として成立していて、その面白さがちゃんとあるので、それを台無しにしてしまったらどうしようというプレッシャーはすごくあります。

――あなたにとって、仕事とは?

仕事というものの規模感でなければ作り得ないものとか、到達し得ない領域があると思っています。

仕事となればいろいろな制約、守らなきゃいけないことも出てくるんですが、それを守りながらいろんな工夫をして、最大限面白いものを作ろうとしていく。それが脚本家という、エンタメを考える仕事を”仕事としてやる”ことなんだと思います。

(東洋経済オンライン編集部)