ドバイの語学学校ES Dubaiで選択できる課外活動「デザートサファリ」(筆者撮影)

もしあなたが1週間の休みがあって自由に使えるとしたらどこで何をしますか。

今、世界的に自分の人生を豊かにするための「オトナ留学」が人気を集めています。ヨーロッパの語学学校の担当者によると、「50+(フィフティプラス)」という50歳以上をターゲットとした体験型コースが人気を集めているということです。

そんな中で今、日本からの留学先としても注目されているデスティネーション(渡航先)が2つあります。それはアラブ首長国連邦(略称UAE)のドバイとマルタ共和国です。

筆者は実情を探るために2024年8月に現地を訪問しました。今回はその最新情報から、両国の人気の理由、1週間のプチ留学でどんなことができるのか、費用はどれくらいかかるのか、また日本人に本当にお勧めできるのか考察していきたいと思います。

ドバイ留学とは近未来留学?

皆さんは、ドバイと言うとスーパーカーに乗っている富裕層や中東のビジネス中心地というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。実はドバイは外国人比率が約90%と、世界的に見ても珍しい地域(首長国)で、海外からの留学生を積極的に受け入れている国でもあります。

まずニュードバイの中心部に位置する大規模な語学学校、ES Dubaiを訪問しました。現在この学校には、約1200名の学生が学んでいます。ドバイらしいビル型のキャンパスは、休憩時間になると多国籍な学生で学内のカフェスペースは溢れ返り、とてもインターナショナルな雰囲気です。

特にコロンビア、トルコ、ロシア、タイ、ブラジル、エクアドル、イタリアあたりから来る人が多いらしく、訪問した際には8月下旬ということもあってか日本人はそれほど見かけませんでした。

【写真】36階の休憩スペース、ドバイのスターバックス、滞在先はすべて4つ星ホテル、砂丘ドライブ、マルタの美しい街並み


ES Dubai 36階休憩スペース(写真:ES Dubai)

窓から見える景色は一面ドバイのダイナミックなビル群が立ち並び、世界で最も近代的で刺激的な都市であることを実感します。ドバイはまさに近未来都市。映画『スター・ウォーズ』に出てくる架空の都市コルサントのようにその存在感は圧倒的です。

休憩時間にタッチスクリーンで復習

最近の語学学校はICTが急速に発展していて、タッチスクリーンの大画面モニター(インタラクティブホワイトボード)が標準装備されています。留学生もその使い方に慣れたもので、授業の合間の休憩時間には画面を操作しながら、授業で理解できなかった画面を再度出して復習などに活用しています。

実際に留学生に交じって授業を受けてみました。受講したのは一般英語コースの中級クラス。12名ほどのクラスメイトの中で日本人は筆者1人。授業は2人1組でペアを作り、ペアの留学生とコミュニケーションをとりながら、学びを進めていくスタイルです。

クラスメイトの南米の学生は積極的に手を挙げて発言が多めですが、アジア系の学生はあまり発言しない印象です。ただ1対1だと話しやすさが増すうえ、自然と話す機会ができるので、会話量も確保できる構成となっています。テキストを使った理論とペアワークでの実践のバランスが良いと感じました。


ドバイのスターバックス(筆者撮影)

休憩時間には学内にあるカフェでお気に入りのコーヒーをオーダー。学生は友人と会話したり1人で過ごしたり思い思いの時間をラウンジスペースで過ごしています。意外とこの時間が多国籍な環境で英語を使ってコミュニケーションを取れる最大の機会かもしれません。

日本からの学生は大人しい方が多いのですが、少し勇気を出して話しかけることをお勧めします。ドバイは、欧米にある中心都市の学校ほど日本人率が高くなく、南米・アジア・ヨーロッパからの学生がバランスよくいるため、英語力がそれほど高くなくても比較的話しやすい雰囲気を感じました。

社会人留学にとって大切なのは、留学中の滞在先です。

この学校の場合、なんと滞在先はすべて4つ星ホテル。ホテルのプールやジム、レストランも利用でき、落ち着いた空間の中でリラックスしながら英語学習に集中できます。若干学校からは距離がありますが、無料のシャトルバスで通学するドバイでは一般的なスタイルになります。


ES Dubai滞在先(筆者撮影)

オトナ留学としてドバイらしさを満喫できるのが、学校が主催するアクティビティです。

ソーシャルアクティビティとして、サッカーやバレーボール、カラオケや映画などがありますが、何と言ってもお勧めはデザートサファリ(9月25日時点、110AED=約4290円)です。

筆者も参加したのですが、街中から車で1時間もかからないくらいで砂漠に到着します。途中ターバンのお店に連れて行かれるのですが、別料金がかかりますので特に写真撮影などで必要ない場合は断っても大丈夫です(ツアーによくある提携先のお土産屋さんに寄るのと同じパターンです)。

砂漠に到着後、アラブ人が運転する4WDの車に乗って体験する砂丘ドライブはまるでパリ・ダカールラリーのようなダイナミックな経験です。そして砂丘に沈みゆく夕日は圧巻で一見の価値ありです。アラブ世界ならではの非日常感をたっぷり味わうことができます。


デザートサファリ(写真:ES Dubai)

1週間留学した場合にかかる費用(航空券・保険は除く)は下記のとおりです。欧米に比べるとリーズナブルな価格設定となります。

入学金         100USD
授業料(Semi-Intensive) 290USD 
滞在先手配費用     100USD
滞在費用(2人部屋)  205USD
空港送迎(往復)    180USD
1冊目のテキスト費用  60USD
合計          935USD 
13万0900円(1ドル140円で計算)
(2024年9月22日現在)

マルタ留学で映画の世界へ

次に、マルタ共和国は前述のドバイとは全く異なる特徴を持っています。ドバイが近未来な留学ならマルタはまるで中世にタイムスリップしたかのような体験ができる国です。


マルタの風景(筆者撮影)

地中海の宝石と言われ、世界遺産の遺跡や中世の美しい街並み、年間を通して温暖な気候などマルタ共和国は本当に魅力的な国です。映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』に登場したりや元欅坂46 鈴本美愉さんの留学先としても話題となりました。筆者も実際に訪問して、その魅力に心を打たれた一人です。

日本からの留学生数はコロナ前までに復活

日本からマルタに留学する人の数は2023年で1100人(一般社団法人海外留学協議会(JAOS)による日本人留学生数調査2023より)。同調査で留学生数がピークであったコロナ前の2019年が1166人だったため、その頃とほぼ同レベル(2019年比94.3%)まで復活してきています。

オトナ留学としてのマルタの特徴にはどのような点があるのでしょうか。

まずは、海沿いにレストランやクラブが立ち並ぶ賑やかなリゾートエリア、セントジュリアンズは語学学校も多い地域です。海からも徒歩圏内にあるEnglish Path Maltaは、約600名の学生が在籍している活気のある語学学校。ビルの5階と6階に教室があり、別の語学学校グループECも隣接しているため、休憩時間には留学生で溢れかえっていました。

南米やアジア、ヨーロッパからの学生が多く、学校スタッフも含め陽気で雰囲気の良さを感じます。とにかく開放的で学生間のコミュニケーション多めなのがマルタ(特にセントジュリアンズ)の特徴の1つです。周辺のエリアは海が近いのもあり、リゾートウェアや水着で歩いている人もいます。逆に言えば、真面目で静かな感じだと少し浮いてしまうかもしれません。


English Pathの周辺(筆者撮影)

セントジュリアンズの高台のほうに行くと少し落ち着いた感じの高級住宅街があり、ここにはSprachcaffe Malta(シュプラッハカフェ マルタ)という1983年創業の老舗の学校があります。

マルタらしいギリシャ建築の建物は雰囲気たっぷりです。学校の中心部には大きなプールがあり、周囲にはビーチバレーコートやカフェレストランがあり、カフェで食べたローカルの手作りパンの美味しいこと。元々リゾートホテルだったことから学内に滞在施設もあり、落ち着いた環境で学習したい人にもお勧めです。

セントジュリアンズから程近いスウィーイという住宅街にあるClubclass Maltaは、マルタらしいレトロで良い雰囲気の人気校です。ここもジムや屋外プール、バー、スーパー、農園などが併設していてとっても便利なのですが、特筆すべきは滞在のバリエーションの豊富さです。

キャンパス内の滞在先もあるのですが、オトナ留学でお勧めしたいのは、学校から徒歩数分以内のところに学校が所有するアパート。バリエーションがいくつかあるので、予算や好みによって選ぶことができます。実際に部屋を見せてもらいましたが、Amber Courtというお洒落なシェアアパートは、個室もあり専用のキッチン・バスルームまで付いているのでこだわりのある社会人でも十分満足できるレベルでした。

個人的にお勧めしたいのは、スリーマというエリア。特に海沿いは絶景で、対岸に世界遺産にもなっているバレッタの中世の建物が見えます。この綺麗で落ち着いた雰囲気のスリーマにある学校、IELS Maltaはまさに社会人向けの語学学校です。

30代から70代と幅広い年齢層が在籍していてヨーロッパからのリピーターも多いということです。費用は他校と比べてやや高めですが、その分、質の高い教育が提供されています。最近は、日本からワーケーションとしての参加も増えているということでした。

English Path Maltaに1週間留学した場合にかかる費用は下記となります。全体的に欧米やドバイよりもリーズナブルです。

English Path Malta
入学金         50ユーロ
授業料(一般英語)   275ユーロ
滞在先手配費用     35ユーロ
滞在費用(2人部屋)  265ユーロ
空港送迎(往復)    70ユーロ
テキスト費用      45ユーロ
合計          740ユーロ(時期により割引あり)
11万8400円(1ユーロ160円で計算)
(2024年9月22日現在)

マルタ留学の注意点は?

リゾートや中世の歴史的な雰囲気が味わえるマルタ留学ですが、現地日本人担当者によると、ホームステイは注意が必要といいます。日本人はどうしてもホームステイにホスピタリティを求めてしまいますが、マルタの人はシャイな人が多くボランティア精神はあまりありません。ただ、これはマルタに限ったことではなく、欧米でも最近はこの傾向が強くなっているので、過度な期待は禁物です。

またシャワー問題もあります。降雨量の少ないマルタでは海水をろ過して水道水として利用しています。シャワーはタンク式のため、長時間使うとホストファミリーが使えなくなることもあり、節水に対する意識はとても厳しいのです。

お風呂に1時間入るという人もいる日本人には信じられないことですが、ファミリールールで5分以内と定めているところもあるそうです。その場合留学生はスポーツジムのシャワーを外で浴びるなどの工夫が必要になってきます。これも他の英語圏のホームステイでも同様のことがありますが、マルタはより厳しい国のため注意が必要です。

さてドバイとマルタ、日本人にとってのお勧めはどちらなのでしょうか。

ドバイ留学の魅力について、ES Dubaiの日本人担当者、嶋田優子氏はドバイのビジネスチャンスの多さも強調します。

日本人を求める企業も多いドバイ

「日本から来ている社会人の方の多くは、仕事を少しお休みして英語のスキルアップを目指している方や、完全に退職してから英語を学びながらドバイでの職を探している方が多いです。実は、ドバイには日本人を求める企業も多く、日本語と英語の両方を話せれば、就職先を見つけるのはそれほど難しくありません」

一方、マルタの専門家、林花代子氏はマルタ留学の魅力について次のように話します。

「世界各国から学生だけでなく社会人やシニアも多く、学校によっては30歳/50歳以上向けプログラムもあり同世代と学びやすい環境が整っています。共同生活以外にホテル滞在も選べ、自分の生活ペースに合った滞在先の選択肢が豊富なのはリゾート地ならでは。国際色豊かな環境で英語力を高めつつ、リフレッシュ旅も兼ねられます」

以下あくまで筆者の意見となりますが、それぞれの国に向いているのはこんな人です。

ドバイ留学に向いている人
 日々の仕事にマンネリ化を感じている人
 英語が初級の人
 多国籍な環境で異文化交流を楽しみたい人
 近未来都市のダイナミックな雰囲気を体験したい人
 非日常的なアクティビティ(デザートサファリなど)を楽しみたい人
 生活費や滞在費が比較的高くない都市で留学したい人
 国際的なビジネス環境でキャリアアップや就業の機会を目指している人
 ホテル滞在を希望し、快適な施設を重視する人

マルタ留学に向いている人
 リラックスした環境で英語を学びたい人
 英語が公用語の国で安心して留学したい人
 地中海の美しい風景と歴史的な街並みを楽しみたい人
 2回目の留学の人や旅行慣れしている人
 ある程度英語でコミュニケーションが取れる人
 観光と語学学習をバランスよく楽しみたい人
 中世の文化や歴史観をベースにした映画やドラマが好きな人
 落ち着いたエリアでの滞在を希望する人

いかがでしょうか。

日本の社会ではなかなか欧米のように3〜4週間ゆっくりバカンスをとって心身ともにリフレッシュする習慣はないのですが、ふだん忙しい人こそ1週間だけ休みを取ってオトナ留学をすることを筆者は提案します。ドバイもマルタも1週間あればご紹介したような経験ができるうえ、世界が今どう動いているのか肌で感じることができます。

そうすることによって、仕事にも人生にもスパイスとなるような刺激が入り、次のアクションの原動力につながるでしょう。

(大川 彰一 : 留学ソムリエ 代表取締役)