さあ、転職先の新天地でがんばるぞ(写真はイメージ)

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転職者が早期離職するペースが年々早まり、特に20代では4人に1人が勤続1年未満に会社を辞めるという。

就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年9月26日に発表した「転職活動における行動特性調査2024年版」で明らかになった。

そんなに早く飛び出して、将来のキャリアは大丈夫なのか。マイナビの研究員宮本祥太さんに話を聞いた。

転職者は意外にも「日本型長期雇用」に好意的

マイナビの調査は、正社員の20代〜50代男女のうち、直近1年間(2023年6月以降)に転職活動をした1600人が対象。

まず、前職の勤続年数を聞くと、「1年未満」が20.1%となり、2021年の調査開始以降初めて2割を超えた。「1年未満」と答えた割合を年代別にみると、30代〜50代は20%未満だが、20代は26.8%で最も高かった。20代で転職する人は、4人に1人以上が1年未満で退社するわけだ【図表1】。

また、これまで早期離職ラインは「入社後3年以内」と言われてきたが、早期離職と考える勤続年数を聞くと、平均「12.5か月」だった。転職が当たり前になるなか、転職者の勤続年数が短期化している【図表2】。

早期離職は自分のキャリアにとってプラスか、マイナスかを聞くと、「プラス」(41.3%)が「マイナス」(29.5%)を大きく上回った。「プラス」と考える理由には、「自分に合う職場を見つけることに繋がる」「マルチな業務・スキルを経験できる」などが上位に並んだ【図表3】。

ここで興味深いのは、年功序列や終身雇用など、いわゆる伝統的な日本型企業についてだ。6割以上(62.2%)が「就業先として選びたい」と回答しており、日本型雇用を肯定的に捉えている人が多い。最も少ない20代でも56.8%と半数を超え、幅広い世代に支持されている【図表4】。

大学生の就職活動では、日本型雇用が敬遠され、企業内部にも改革の動きがあるのに、逆に、就業経験がある転職者は安定的に働き続けられる長期雇用にメリットを感じているようだ。

しかし、日本型企業の伝統的制度のうち「終身型雇用」「退職金制度」の魅力度は高いが、「年功序列」の魅力度は低い傾向にある。【図表5】は、日本企業で取り入れられている人事施策・雇用施策30項目について、伝統性・革新性と魅力度の2つの指標でイメージを聞いたグラフだ。

その結果を「1:伝統的・高い魅力」「2:伝統的・低い魅力」「3:革新的・高い魅力」「4:革新的・低い魅力」の4つにグループ分けした。伝統性のスコアが高い上位3項目「退職金制度」「終身雇用」「年功序列型」について、魅力度のスコアをみると、「退職金制度」「終身雇用」は高いが、「年功序列型」は低かった。

転職者にとって、長期雇用が保証される「終身雇用」や退職後の保障となる「退職金制度」は安心感をもたらすが、成果主義ではない給与・評価制度の「年功序列」はマイナスに感じるようだ。

20代は他社でも採用ニーズが高く、転職に有利な年代

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたマイナビのキャリアラボ研究員宮本祥太さんに話を聞いた。

――転職者の前職の勤続年数が、「1年未満」が過去最高の2割を超えたとありますが、これほど早々と現在の会社に見切りをつける傾向になったのは、ズバリ、何が理由でしょうか。

宮本祥太さん 1つ目は転職が一般化したこと、2つ目に自律的にキャリアを築く意識が広がっていることがあげられます。

総務省の労働力調査によると、2023年度に転職希望者が1000万人を超え、かつての「転職=マイナス」のイメージが薄れ、転職が当たり前の時代になっています。

それに伴い、働き方の意識も変化しています。

職業人生が長寿化し、将来求められる仕事の不確実性が高まるなかで、ひとつの組織でキャリアを完結させること自体が難しくなりました。組織に自らのキャリアをすべて委ねるのではなく、個人で自律的にキャリア形成を行おうとする意識が広がっています。

かつて「石の上にも3年」という言葉がありましたが、自分のキャリアにとってのベストを見極め、「1年未満」「3年未満」という早期で労働移動する人が多くなっていると考えられます。

――「1年未満」で転職した人は20代が突出して多いですね。もう少し今の会社でスキルを磨いてから飛び出したほうが、何かと得なのではないか、と心配になりますが。

宮本祥太さん 20代は、上の年齢層に比べ、理想とする働き方やキャリアの実現に向けて自ら行動して状況を変えようとする意識が高いことが考えられます。

また、特に20代は、終身雇用や年功序列など長期雇用を前提とする働き方の恩恵を受けづらいため、現在の仕事の裁量や処遇に対して不満を持つケースが多い。待遇の面でも30代・40代・50代に比べて給与が低く、待遇改善を転職の軸とする人が少なくありません。

それに加え、20代の採用ニーズは高く、企業側にも若手層の人材獲得に向けて待遇や評価制度を見直す動きが広がっています。こうしたことが相まって、20代にとって転職が「給与を向上させる手段」として選ばれやすくなっていると推察します。

自らで行動し状況を変化させる点で、転職の多くはポジティブだ

――なるほど。【図表3】では早期離職を「プラス」と考える人が多いですが、「人間関係」がイヤでやめるといったネガティブな理由より、自分のキャリアや好きな仕事探しのためというポジティブな理由で転職する人が多いということですね。

宮本祥太さん 退職理由は人間関係に起因する場合もあれば、仕事内容や給与、仕事のスタイルに起因する場合もあるため、一概にポジティブかネガティブかをいうのは難しいでしょう。

ですが、早期離職をプラスと思う理由の結果をみても、「自分に合う職場・仕事を見つかることに繋がる」が5割を超えています。現在のキャリアに課題があった時に、職場や仕事などの「環境」を変えることで課題を解決しようとする傾向がうかがえます。

その意味では、早期離職の理由自体はポジティブ、ネガティブ双方が考えられますが、自らで行動し状況を変化させようとする点で「ポジティブ(前向き・能動的)な転職」を目指す人が多いと思います。

就活生と転職者、仕事人生の有無が「日本型企業」好き嫌いに表れる

――ところで、学生の就活では伝統的な雇用慣習が残る日本型企業が敬遠されるのに、転職者の場合は、逆に日本型企業が好まれる理由は、ズバリ何でしょうか。

宮本祥太さん 転職者と学生の大きな違いは、仕事を覚えて組織になじむという社会人経験をしているか否かという点にあります。転職者は新しい会社に入り、仕事を覚え、文化に溶け込み、人間関係を築くなどのプロセスを経験し、その労力や大変さを認識している人が多いです。

また、仕事を継続することでスキルが積み上がったり、成果が大きくなったり、また人間関係が育まれて職場の居心地がよくなったりなど、長く働くことのメリットを感じている人も少なくないでしょう。

つまり、長期雇用のメリットを、身をもって感じているかどうか、具体的にイメージできるかどうかの違いが、転職者と学生の日本型雇用のとらえかたに影響を与えていると考えます。

――なるほど。仕事人生経験の違いですね。しかし、長期雇用のメリットは感じても、「年功序列」だけはゴメンだと思うから転職したいのでしょうか。

宮本祥太さん 一般的に、転職は労力を費やすものです。だから、「できることなら長く働きたい」という意識は多くの人にあると思います。その意味で、終身雇用などの制度は、それ自体が働く人にとって不利なものになりづらく、プラスにとらえられる傾向があります。

それに対して、年功序列は就業年数を重ねるごとにメリットが大きくなるため、恩恵は人によって差があります。たとえば、自身の仕事の成果が報酬と釣り合っていない、能力・スキルが仕事の役割や地位にマッチしていないと思っている人は、年功序列自体に不平等さや不満を感じるはずです。

そうした人が、自らで動いて現状を変えようとすると考えられます。

転職するなら「現在」でなく、5年後・10年後の「将来」を見よう

――最後に、転職を志す人にアドバイスをお願いします。

宮本祥太さん 転職は、給与や労働条件など「現在」のキャリア課題を解決することを目的とする人が多く、それ自体は大切なことです。

しかし、転職した直後の働き方や処遇だけでなく、5年後、10年後の中長期的な視点で「将来」のキャリアをとらえ、積み上げていくことが重要です。

自分が将来どのよう仕事や役割を担いたいのか、また、将来どのような生活を送りたいのか。それによってキャリアの方向性も変化します。

これから転職を志す方々には、現在の時点だけでなく、これまでのキャリアの過去を振り返り、ずっと先の未来を見つめる作業をしていただきたい。そして、持続的なキャリアを実現していただければと思っています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

【プロフィール】
宮本 祥太(みやもと・しょうた)
マイナビ キャリアリサーチラボ研究員

中途領域など担当。新聞記者を経てマイナビに中途入社。『マイナビ転職』の制作ディレクターとして300社以上の中途採用支援に携わる傍ら、キャリアコンサルタントとして若年層を中心に100名以上の転職相談に対応。
関心のあるテーマは求職者・企業双方の視点から見たジョブマッチング。国家資格キャリアコンサルタント。