映画『火の華』本ビジュアル

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 山本一賢が主演する小島央大監督による映画『火の華』が、12月20日より全国公開されることが決定。主題歌に大貫妙子&坂本龍一さんの「Flower」が決まり、本予告と本ビジュアル、場面写真が一挙解禁された。

【動画】大貫妙子&坂本龍一さんによる主題歌にも注目『火の華』本予告

 本作は、2016年に実際に報道された「自衛隊日報問題」を題材に、元自衛官の壮絶な経験とその後の宿命を克明に描いた完全オリジナルストーリー。日本映画ではほぼ扱われることのなかったPTSDの深刻さを見据えながら、“戦う”ということや“平和”の在り方、そして人間の本質までを問いかける。

 PKO(国連平和維持活動)のため南スーダンに派遣された自衛官の島田東介。ある日、彼の所属する部隊が現地傭兵との銃撃戦に巻き込まれる。同期で親友の古川は凶弾に倒れ、島田はやむなく少年兵を射殺。この前代未聞の“戦闘”は、政府によって隠蔽されてしまう。

 それから2年後、新潟。悪夢に苛まれる島田は、危険な武器ビジネスに加わりながら、花火工場の仕事に就く。親方の藤井与一や仲間の職人たちに支えられ、心に負った傷を少しずつ癒していく島田。しかし、花火師の道に一筋の光を見出した矢先、島田に過去の闇が迫る…。

 監督は、長編デビュー作『JOINT』(2021年)で新藤兼人賞銀賞に輝いた小島央大。長編2作目となる本作では、企画・脚本・編集・音楽までを手がけている。主人公の島田には、『JOINT』でも主演を務めた山本一賢。元自衛官の葛藤と再起を等身大で演じ、圧倒的な存在感を放つ。さらに二人の盟友キム・チャンバが『JOINT』に続いてプロデューサー・出演者として加わり、才気溢れるチームが再集結した。そして脇を固めるのは、柳ゆり菜、松角洋平、ダンカン、伊武雅刀ら実力派俳優たち。

 日本伝統の花火をモチーフにした本作。登場する打ち上げ花火は、長岡花火ほか世界クラスで活躍する花火師の監修のもと、全て実写で撮影している。また、元自衛官やジャーナリストに数々の取材を敢行し、徹底したリサーチを基に、自衛隊や武器の世界も忠実に再現。細部までリアリティを追求した撮影と演出が、花火師と自衛隊の世界を重厚に彩る。

 今回解禁となった本ビジュアルは、大きく広がる美しい花火を背景に、自衛官の島田東介(山本)の姿がレイアウトされたもの。平和の象徴とも言われる花火の光に照らされながらも、島田の表情には苦悩が滲んでいる。添えられた「この魂に救いは在るか?」というキャッチコピーからも、心に傷を負った島田の行末が気になるビジュアルとなっている。

 同時に公開された本予告では、南スーダンで凄惨な戦闘に巻き込まれた主人公の島田が、自衛官を辞職した今もなお悪夢に苛まれ、花火に救いを求めていく姿が描かれている。少年兵と島田が銃を向け合う緊迫感の漂う冒頭に始まり、一瞬にして繰り広げられる銃撃戦。島田は、この前代未聞の事件を上官から「命令に従え」と隠蔽を強要されてしまう。

 2年後、新潟。自衛官を辞した島田は、花火師となっていた。しかし、挑んだ花火大会の現場で、無数の花火の爆音が銃の乱射音と重なり、銃撃戦がフラッシュバックされPTSDを発症。悪夢に苛まれる日々の中で、花火の材料である「火薬」を使った危険な武器ビジネスに介入していく。

 与一の娘・昭子(柳ゆり菜)の励まし、花火職人の仲間たちとの団欒(だんらん)の時間、そして夜空に舞う打ち上げ花火が映し出され、傷ついた島田の魂に救いが見えたのは束の間、島田のもとに、「来てくれ、頼む」と助けを求める電話がかかってくる。一気に不穏な空気が立ち込め、発砲する自衛官、カメラ目線の武装した男、黒ずくめの男たち、そして「我が国にとって審判の日となるであろう」という謎の男の台詞。最後、銃を手に取る島田が映し出される。果たして、島田を待ち受けるものとは?

 さらに、本予告でも使用されている大貫妙子&坂本龍一さんの「Flower」が主題歌に決定した。光と闇の境界を儚げに歌う声色と美しい旋律が、映画の世界観を引き立てる。主題歌起用にあたり小島監督からのコメントも到着。「脚本や撮影期間で何かと行き詰まった時も、何か光を示してくれるような特別な曲」と述懐し、「この曲で映画を締めくくることができて光栄です」と喜びを語っている。

 今回の解禁に際して、大貫妙子らより激励コメントが到着している。大貫妙子&坂本龍一さんによる主題歌「Flower」が収録されたアルバム『UTAU』が発売されたのは2010年の11月。リリースから14年の時を経て、映画の主題歌に起用されたことについて大貫は、「私から解き放たれた私の種子は、自由に飛んで行ける。どこまでも!」とのコメントを寄せた。

 本作の題材にもなった「自衛隊日報問題」を先陣で取材を続けてきたジャーナリストの布施祐仁は、本作は「単なる『フィクション』ではない」と明言。「この国のあり様を深く考える契機となることを願ってやまない」と切なる思いをつづっている。

 日本映画の今を写し出す邦画専門の映画館として、数多くの名作を上映してきたテアトル新宿の年内最後の興行となる本作。1年を締め括る12月公開作品として、一昨年は『ケイコ 目を澄ませて』、昨年は『市子』の話題作が続く中、今年は『火の華』が選ばれている。多田支配人は「来たる12月に上映することが出来、大変喜ばしく感じております」と述べ、本作について「リアルな手触りは『ケイコ 目を澄ませて』『市子』と同様、映画の醍醐味に溢れています」と称賛の言葉を贈っている。

 映画『火の華』は12月13日より新潟県先行公開、20日より全国公開。

※大貫妙子、布施祐仁、多田祥太郎、小島央大監督のコメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■大貫妙子

 私がそこを動けないとしても。私から解き放たれた私の種子は、自由に飛んで行ける。どこまでも! そのために私が今、することは「風を選ぶ」ということだろう。

■布施祐仁(ジャーナリスト)

 これは単なる「フィクション」ではない。南スーダンでは実際に自衛隊の活動地域で内戦が勃発した。自衛隊の海外での活動は法律では「非戦闘地域」に限定されているが、日本政府は「戦闘ではなく衝突」と強弁し、現地部隊が「戦闘」と記した日報は隠蔽された。国家の命を受け、時には命を懸けて任務に当たるのが自衛官だ。本作品を通じて、その重みを多くの人が我が事として受け止め、この国のあり様を深く考える契機となることを願ってやまない。

■多田祥太郎(テアトル新宿 支配人)

 『火の華』を来たる12月に上映することが出来、大変喜ばしく感じております。というのもテアトル新宿では一昨年、昨年と12月公開作品として『ケイコ 目を澄ませて』『市子』を上映して参りました。2作品とも非常に話題に上った映画ではありますが、両作ともこの世界の未知の部分の広大さと、しかしそれは自分のすぐそばにも間違いなく存在しているんだという実感を映画を通して与えてくれました。世界の広がりと同時に様々な人生を近くに感じることが出来る、それはまさしく映画を観る醍醐味(だいごみ)の一つだと思いますし、そうした映画を上映する映画館でありたいと思っております。『火の華』は、光の届かない世界の深さとそこに間違いなく存在している人生とが重たい実感を持ってこちらに迫ってきます。そのリアルな手触りは『ケイコ 目を澄ませて』『市子』と同様、映画の醍醐味に溢れています。

■小島央大(監督・編集・音楽/共同企画・脚本)【主題歌に寄せての監督コメント】

 「Flower」は本作の原案段階から、幾度も繰り返し聴いた楽曲です。脚本や撮影期間で何かと行き詰まった時も、何か光を示してくれるような特別な曲でした。楽曲の壮大でかつ親密な世界観に、花火の刹那が重なり合う「光と闇のモザイク」。この曲で映画を締めくくることができて光栄です。