こちらは「ろ座(炉座)」の方向約1億4000万光年先の銀河「NGC 922」です。渦巻腕(渦状腕)はゆがみ、明るい中心部分は銀河全体の中心からずれた場所にあるように見えます。NGC 922の形態にみられるこれらの特徴は、観測されている状態から約3億3000万年前に、ここには写っていない近くの矮小銀河「LEDA 3080368」と衝突した結果生じたのではないかと考えられてきました。


【▲ ろ座の銀河「NGC 922」(Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: J. Miller (International Gemini Observatory/NSF NOIRLab), M. Rodriguez (International Gemini Observatory/NSF NOIRLab), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab) & M. Zamani (NSF NOIRLab))】

この画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データをもとに作成されました。DECamはその名が示すように暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、画素数は約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影することができます。当初の目的である暗黒エネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。


画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、DECamによるNGC 922の新たな観測の結果、銀河どうしの重力を介した相互作用によって生じた傘のような潮汐尾(※潮汐力によって銀河の星やガスが尾のように伸びた構造、tidal tail)が明らかになりました。ところが、この潮汐尾が伸びている方向はLEDA 3080368の軌道とは一致しないことを観測結果は示しており、そのうえLEDA 3080368には明確な構造や星形成活動の兆しがみられることから、過去にNGC 922と衝突したとする従来の理論とは矛盾しているといいます。


そのため、NGC 922の複雑な構造を説明する新たな仮説として、別の銀河との相互作用を通じてすでに多くの物質を失っていた矮小銀河と合体したことで生じた可能性が指摘されています。潮汐力によって生じたNGC 922の特徴は、銀河が相互作用の後でどのように進化するのかを理解する上で貴重な研究対象になっているということです。


冒頭の画像はNOIRLabの“今週の画像”として2024年9月25日付で公開されています。


 


Source


NOIRLab - The Tidal Tales of NGC 922

文・編集/sorae編集部