「翔平らしさが出る時は、実はああいう時」――パドレスとの頂上決戦で出た“咆哮” 大谷翔平の叫びに蘇った恩師の言葉
一塁上でチームを鼓舞するように叫んだ大谷。(C)Getty Images
まさに手に汗握る攻防戦で大谷翔平(ドジャース)は異彩を放った。
現地時間9月25日、本拠地で行なわれたパドレス戦に大谷は「1番・DH」で先発出場。ゲーム差「2」に迫る宿敵との重要な一戦で2本の適時打を含む3打数2安打2打点1盗塁と活躍し、自身が保持するシーズン記録も「53本塁打・56盗塁」に伸ばした。
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背番号17が勝利の殊勲者となった。
同点としていた4回裏に勝ち越しの2点適時二塁打を放っていた大谷は、追いつかれた6回裏の打席には中前に値千金の決勝打を記録。いずれも2死という追い込まれた局面での一打で、勝負強さを発揮した形となった。
この試合で負けていれば、パドレスとのゲーム差は1になる。地区優勝に向けて足踏み状態が続くドジャースとしても苦しい立場は避けられない。そうした中でチームを勝利に導いた大谷は、球団が10年7億ドル(※当時のレートで約1015億円)を提示したスターの真価を見せつけたと言えよう。
やや驚いたのは、打った直後の姿だ。6回に決勝打を放った大谷は、打球が外野に抜けた瞬間、まるで高校球児のように「シャーッ」と喜びを爆発。一塁上でも自軍ベンチを鼓舞するような振る舞いを見せたのだ。
状況を考えれば、不思議な動作ではない。だが、普段はクレバーな大谷があそこまで感情を露わにするのはなかなかない。その喜び、叫ぶ姿は、本人が21年のシーズン終了後に口にした「ヒリヒリするような9月」を楽しんでいるように見えた。
そんなエネルギッシュな姿を目にし、大谷の“恩師”の言葉が脳裏によみがえった。
23年の春に列島を騒がしたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。負ければ終わりの準々決勝はイタリア戦でのことだ。「3番・DH兼投手」で先発した大谷は気迫を前面に押し出した投球で4回2/3(71球)を投げて2失点ながら5奪三振をマーク。打っては1安打に抑えられたものの、相手の意表を突くセーフティーバントで好機を演出していた。
球場全体を活気づけ、チームを勝利に導く活躍をしていた大谷。魅力に溢れたパフォーマンスに日本代表を指揮した栗山英樹監督は、目を細め、どこか感慨深げに言葉を絞り出した。
「僕がずっと彼を見てきて、翔平らしさが出る時っていうのは、実はああいう時で。投げる、打つは別として、『この試合は絶対勝ちにいくんだ』と、野球小僧になりきった時に彼の素晴らしさが出る。翔平の話ってあんまりしないですけど、そういう彼の想いって見てる人も感じてくれたと思う」
野球小僧になりきった時――。このパドレス戦での咆哮とチームを鼓舞する姿は、栗山監督の言う「野球小僧」のそれだった。相手に譲れない試合で、否が応でも緊張感が高まる局面。その展開でも集中力を持続させながら楽しむ姿は大谷の偉才たる所以か。
“ヒリヒリした9月”も気づけば、残り僅か。レギュラーシーズンもあと4試合となった中で、自身初の地区優勝に邁進する大谷の一挙手一投足をじっくりと楽しみたい。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]