アメリカ司法省(DOJ)が現地時間2024年9月24日に、決済ブランドのVisaに対する独占禁止法に基づく訴訟をニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に提起しました。

Office of Public Affairs | Justice Department Sues Visa for Monopolizing Debit Markets | United States Department of Justice

https://www.justice.gov/opa/pr/justice-department-sues-visa-monopolizing-debit-markets



file-stamped_visa_complaint_9.24.24.pdf

(PDFファイル)https://www.justice.gov/opa/media/1370421/dl

Visa (V) Faces US Justice Department Antitrust Case Over Debit Cards - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-09-23/visa-faces-justice-department-antitrust-case-over-debit-cards

The DOJ sues Visa for locking out rival payment platforms - The Verge

https://www.theverge.com/2024/9/24/24253280/doj-antitrust-lawsuit-visa-debit-monopoly

DOJは2021年からVisaに対し独占禁止法に基づく調査を実施しており、今回の裁判はこの調査に続くものとされています。

アメリカではデビットカードでの取引において60%以上がVisaのデビットネットワーク上で実行されています。また、Visaは支払い処理手数料だけで年間70億ドル(約1兆円)を稼いでおり、DOJは「Visaはその優位性や企業の規模、デビットエコシステムへの重要性を駆使して、加盟店や銀行に排他的な契約を強制しています」と批判しました。



さらにDOJは「手数料が低く、小規模な競合他社を蹴落とすために、取引の際に別のデビットネットワークや代替の支払いシステムに変えようとする顧客に対しVisaは懲罰的な追加料金を課しています。Visaは顧客にこのようなペナルティを課すことで競争相手となる可能性のある企業の市場参入を妨げ、Visaのパートナーになるように誘導しています。Visaは自社のシェアや収益を失うこと、または別のデビットネットワークに完全に取って代わられることを恐れて、ペナルティなどの仕組みを取り入れました」と主張しています。

メリック・ガーランド司法長官は「私たちは、競争市場で請求できる金額をはるかに超える手数料を得る権限をVisaは違法に取得したと考えています。その結果、店舗や銀行は値上げや品質・サービスの低下を余儀なくされて法外な手数料を消費者に転嫁しています。そのため、Visaの違法行為はほぼ全ての商品の価格に影響を及ぼします」と批判しました。

DOJは「デビット取引市場の競争を制限するためのVisaの体系的な取り組みは、アメリカの消費者や企業に数十億ドル(数千億円)規模の追加手数料を課し、デビット決済エコシステムのイノベーションを遅らせる結果となりました」と語ったほか、ベンジャミン・マイザー司法副長官は「Visaのような企業による反競争的行為は、アメリカ国民と経済全体を悪化させます。今回のVisaに対する訴訟は、価格競争やイノベーションへの投資ではなく競争を阻害しようとする企業に対し、DOJはアメリカ国民を守るために法律を執行することをためらわないと明確に示すものです」と宣言しました。



今回の訴訟を受けて2024年9月23日のVisaの株価は前日から1.95%下落しました。なお、記事作成時点で今回の訴訟についてVisaはコメントしていません。