もはや高値、ならぬ高嶺の花「EK9」のモデルカーは今が旬
今や初代シビック タイプR(EK9)の程度のいいタマを安く買おう、などというのは幻想。むしろ、そこそこの状態のものを手に入れて、しっかりとリフレッシュないしはレストアに近い作業を施して乗るのが前提というのが昨今のEK9事情である。EK9が旧車の仲間入りを果たしてから随分時間が経った。
気が付けば、街で“活きの良い”EK9に出くわす機会もめっきり減り、偶然にも出くわそうものならば、その姿を視界から消えるまで目で追い、B16Bの奏でる快音に耳を澄ませてしまった……なんて経験をした方も少なくないだろう。
EK9に限ったことではないが、“街で見かける機会が減った”というのはモデルカーのモチーフ(題材)に選ばれる可能性がグッと高まる。それに加えて世界中で日本の旧車が引っ張りダコという状況下において、今、EK9のモデルカーは日本に限らず世界各国のメーカーから続々とリリースされている。
■今やモデルカーも解像度で語る時代だ
そのフォーマット(商品形態)は様々だが、大きく分けて材質でレジン樹脂製とダイキャストメタル製の2種、スケールで1/18と1/43と1/64の3種、さらにドアやエンジンフードが開閉するフルディテールモデルと、一切の可動箇所を持たないプロポーションモデルの2種が存在する。そんな中にあって価格的にもクオリティ的にもある意味頂点に君臨するのが1/18のレジン製プロポーションモデルである。
大きいものが高いというのはイメージ的に理解しやすいと思うが、どこも開閉しないプロポーションモデルの方がフルディテールモデルより価格が高い場合が多いのが、ひとえに生産性と再現性に関係がある。生産性とは大量生産に優れるか否か、再現性はどれだけ実車を正確にトレースできるか否か、ということを意味している。
ダイキャストメタル製品は生産用の金型(これ自体は高価だ)を使って、何千台、何万台と大量生産するのに向いており、母数が多い分単価が下がる。再現性に関してはプラスチック部分に関しては非常に高いが、ダイキャストメタル部分に関しては、金属片を使って成型上の不要部位(バリと呼ぶ)を除去したり、ドアとボディの隙間など開閉箇所のクリアランス(チリと呼ぶ)を多めに採る必要があるため、実車のようなシャープなプレスラインや車体の一体感などを演出し難いというデメリットも併せ持つ。
また開閉箇所にはオーバースケールのヒンジを仕込んだりする必要性も出てくるので、リアリティが犠牲になることも少なくない。とは言え、昨今ではダイキャスト製のモデルカーのリアリティは3D CAD設計の恩恵を受けて飛躍的に向上しており、一見しただけではレジン製のプロポーションモデルと変わらないリアリティを備えた商品も多数存在する。
一方のレジン製プロポーションモデルは、生産に柔らかいシリコン型を用い、その型の中にトロトロに溶かしたレジン樹脂を流し込み、レジン樹脂が硬化後に成型物からレジンを引きはがす要領で取り出す。バリも少なく、下地処理も手作業で行うので、繊細なプレスラインや鋭利な表現なども損なわれることはない。
またドアなどは開閉しない一方で、その分割ラインは深く細く彫り込まれており、実車さながらの雰囲気を見せる。しかしながらシリコン型は型自体の耐久性が低く、生産出来たとしても数百台単位が限界で、成型や組み立て、塗装工程に関しても人手に頼る部分が多いことから生産性は低く、結果として単価は高くなる。
そんなことを踏まえてご覧いただきたいのが、1978年の創業以来、一貫して妥協の無い製品作りを行うことで知られるメイクアップ社のフラッグシップライン、『アイドロン』からリリースされる1/18のEK9(価格:4万6200円)である。
昨今ではモデルカーの開発は実車を3Dスキャンして、それを元に3D CADで原型データを設計するのが主流。しかし、3Dスキャンで捉えられるのはあくまで大まかな全体像で、それを元に実車のボディラインやディテールを描き込んでいくのはエンジニアであり、“実車らしさ”の表現は彼らの手腕にかかっている。同じ設計手法を採っても、ハリボテ感があったり、解像度が足りないような印象を受けたりするモデルカーはいくらでも存在する。
また生産・開発も海外でアウトソーシングして、実車を見たこともないエンジニアがモデルカーの設計を担当することも珍しいことではなくなった今、実車を直に取材したエンジニアが東京のオフィスで自ら設計を行うメイクアップのアドヴァンテージは大きい。ボディのプロポーション(形状)、ヘッドライトやインテリアのディテール、実車のような透過性を見せるウィンドウ類、ズシリとした重量感……言葉にすれば簡単だが、こうした雰囲気を漂わせるためのノウハウというものは簡単に得られるものではない。
敢えてお断りしておきたいのは、こちらにお見せしてる写真は実車ではなく、全長23センチあまりのモデルカーである、ということだ。
<取材・文/モデル・カーズ編集部>
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