リーダーとして勝てる集団をいかに作り上げるか。横浜FCを率いる四方田修平の流儀。成長を促すため“何も話さない”のも１つの手段
「選手のトレーニングに来る時の目つき、表情とかが生き生きしているのか、死んでいるのか。そこが生き生きできるように、（先発の）11人とか（サブも含めた）18人だけじゃなくて、全体でここに来るのが楽しいなとか、『よしやってやる！』という気持ちでいつも集まれるように、っていうのは大事にしているところではあります」
「コーチが気を配ってくれて、話をしてくれたり、僕よりはコミュニケーションの量は多くなると思う。いろいろサポートしてくれていると思います。『あいつ最近、良い顔をしていないよね』と言えば、コーチが動いてくれる時もある。この選手にはこのコーチがいいかなとか、コーチだけじゃなくて、他のスタッフにも力を借りたりするし、仲の良い選手同士で解決することもある。状況によっては強化の人が話をしてくれたりとか」
もちろん、指揮官自らがタイミングをしっかりと見極めて、選手に声をかけることもある。選手の成長を促すために、逆に“何も話さない”のも１つの手段。コーチ時代を含めて、長い指導者経験がモノを言う。
「機を見て、自分も話ができれば。でも話をすることで解決すればいいけど、話をしたくない人にしても、しょうがない時もある。難しいですよ、いつ言うかとか。突き放すことで勝手に良くなる時もあるし。それじゃいけないと、自分で思って変わることもある」
若手からベテランまで、様々なキャラクターの選手がいる。なかには、思うように出番を得られなければ、不満げな態度を隠さない選手もいたりする。四方田監督も昔なら「その態度はないだろ」と思ったが、51歳となった今は余裕があるのだろう。「すねたりしても、最近はちょっとかわいいと思える（笑）」という。
それぞれの個性を受け入れて、その選手に沿ってアプローチする。「まだまだ、見てくれていないと思う選手はたくさんいるんだろうけど」と思案しつつ、全選手を注意深く観察することを常に心がけている。
プロの世界は結果がすべて。ただ、勝ち負けの前に選手一人ひとりを大切に思い、コーチやスタッフに全幅の信頼を寄せ、全員が高いモチベーションで共有した目標を達成できるようにする。取材者に対しても、必ず目を見て話し、どんな質問にも丁寧に応じて、「おつかれさまです」と深々とお辞儀する“ヨモさん”。誰に対しても誠実に向き合いながら、勝てる集団を作り上げている。
取材・文●広島由寛（サッカーダイジェストWeb編集部）
