記事のポイント

ガートナーの「2024デジタル広告ハイプサイクル」は、AIやファーストパーティデータ収集など、マーケターが直面する課題と解決策を分析している。

報告書では、新たなAI技術(生成AI、感情AIなど)が注目され、広告業界の未来に大きな影響を与えるとされている。

サードパーティCookie廃止計画の撤回が、マーケティングの戦略やツールに広範な影響を与えると予測されている。


技術的な難題から規制のハードルまで、ガートナー(Gartner)の「2024 Digital Advertising Hye Cycle(2024デジタル広告ハイプサイクル)」は、マーケターが対峙しつづける多くのテーマに脚光をあてている。この年次報告書は、マーケティング分析やプログラマティック広告からAIの未来まで、多様なイノベーションを取り上げつつ、マーケターが眼前の課題にどう対処すべきかを分析している。

そのための手段として、同意ベースのターゲティング、データの透明性、ファーストパーティデータの収集、測定とキャンペーンの最適化のための新たなアイディアなどを紹介するものだ。

8月7日にリリースされた約70ページのこの報告書は、さまざまなテクノロジーを導入までに予想されるタイムラインとともに解説し、何が期待され、どんな課題があり、結果として何が起こり得るのかを論じている。

「マーケターは高額なメディアやツールへの投資を増やしたい、あるいは抑えたいと考えている」と、報告書の共著者のひとりで、ガートナーのマーケティングアナリストを務めるマイク・フロガット氏は語る。「マーケティングテックプロバイダーの台頭を考えれば、コスト削減が実現する見込みは薄いと言っていいだろう。彼らはAIなど、強力な演算能力を必要とするツールの開発に乗り出していて、これらはけっして安くないからだ」。

とりわけ注目されるのは、テレビ広告、アイデンティティレゾリューション、顧客データプラットフォームなどで、これらは今回初めてハイプサイクルに掲載された。一方、ガートナーはプロモーションNFTをことしのリストから外した。

報告書によれば、この話題は「広告手段の候補としてステージに上がったもののあまり関心を引かず」、その後NFT取引プラットフォームが「盛大な崩壊」を迎えたためだ。

生成AIと感情AIが牽引するデジタル広告



マーケターにはおなじみのさまざまな用語のなかで、ハイプサイクルに初めて登場したものにはAI関連カテゴリーが多く、マーケティング用の生成AIに加え、マーケティング用の感情AI、インフルエンス(影響)AI、ビジュアリゼーションAIなどが挙げられる。

インフルエンスAIは、デジタル体験を自動化し、ユーザーの意図や動機に基づいて消費者の選択をより効果的に形成する上で、マーケターの助けになる。感情AIはユーザーの感情状態を分析して反応を生成し、ボディランゲージや音声などのさまざまなインプットに基づいて個別化された体験を提供する。

「生成AIへの注目は依然として右肩上がりで、『幻滅の谷』へと向かっている」と、同じくガートナーのマーケティングアナリストのニコール・グリーン氏は語る。「昨年末にかけての熱狂は、この技術がもたらし得るものについての的はずれな期待につながった。生成AIの真のポテンシャルは、ほかのAI技術と組み合わされて初めて発揮される」。

さらに報告書では、Googleが予定されていたサードパーティCookie廃止の計画を撤回するという、最新展開についても解説されている。フロガット氏によれば、このニュースは報告書で取り上げたほぼすべての話題に影響をおよぼし、生成AIも例外ではない。Googleの発表を受けて修正を迫られたセクションとしては、リテールメディアネットワーク、同意と設定の管理、データクリーンルーム、プログラマティックセグメントを利用した広告とパーソニフィケーション(擬人化)などがある。

Googleの発表を受け、将来予測をアップデートした企業はガートナーだけではない。8月上旬、ボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)が発表した調査結果では、サードパーティCookieの変更によってターゲットマーケティングに使用しているデータの20%以上がリスクにさらされると答えたマーケターは全体の過半数に上った。

また、7月のフォレスター(Forrester)の調査では、2024年の調査の対象となったマーケターの61%が、撤回の発表前からGoogleの計画に懐疑的だったと答えている。

[原文:What Gartner’s 2024 digital ad hype cycle shows about marketing innovation and adoption]

Marty Swant(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:坂本凪沙)