インターネットサービスプロバイダーに対してXへのアクセスをブロックするよう命じたブラジル最高裁アレクサンドル・デ・モラエス判事の意向に反し、ブラジルでサービスを展開するStarlinkがブロックを拒否したことがわかりました。この騒動の背景には、ブラジルにおけるXと政府の法廷闘争があります。

Starlink informa ao presidente da Anatel que não vai cumprir decisão de Moraes sobre suspensão do X | Político | G1

https://g1.globo.com/politica/politico/noticia/2024/09/01/starlink-informa-ao-presidente-da-anatel-que-nao-vai-cumprir-decisao-de-moraes-sobre-suspensao-do-x.ghtml

Elon Musk’s Starlink Defies Brazil Court Order to Block X - The New York Times

https://www.nytimes.com/2024/09/01/world/americas/elon-musk-brazil-starlink-x.html

On the first day without X, many Brazilians say they feel disconnected from the world | AP News

https://apnews.com/article/x-brazil-musk-1e896a1daedeaed6a09cf27205feb08a

2024年4月、Xはブラジルの最高裁から特定のアカウントをブロックするよう命じられましたが、この命令の根拠が不透明であるとして異議を申し立てたため、この一件でマスク氏が司法妨害の捜査対象となりました。8月、モラエス判事が「検閲命令に従わなければ法定代理人を逮捕する」と脅迫したとして、マスク氏はブラジルでのX事業を終了し、オフィスを閉鎖しました。X自体は引き続き国内から利用可能でしたが、サービス継続のために法定代理人を置くことを求めた政府の要求をX側が無視したため、8月31日にモラエス判事がサービスを終了させました。

ブラジル最高裁がXに国内でのサービス停止を命令 - GIGAZINE



モラエス判事は法定代理人の設置に加え、Xに科した300万ドル(約4億4000万円)以上の罰金を支払わせるため、マスク氏が所有する企業・SpaceXの銀行口座を凍結する命令を下しました。この命令に対し、SpaceXは自社の通信サービス「Starlink」のアカウントを通じて「この命令は、StarlinkがXの罰金について責任を負うべきであるという根拠のない決定に基づいています」と述べ、法的措置を検討することを明らかにしています。





上記の声明に加え、StarlinkはXへのアクセスブロック命令を拒否しました。地元メディアのGlobo Newsによると、Starlinkは「資産の凍結が解除されるまで、命令には従わない」と通告したとのことです。

記事作成時点で、ブラジル全土でXへのアクセスがブロックされていますが、Starlinkだけがアクセスを通している状態だといいます。ブラジル国民はStarlinkを使用するか、VPNを使ってXにアクセスしているとのことですが、モラエス判事は「VPNを使ってXを利用した場合、1日当たり5万レアル(約130万円)の罰金を科す」と警告しています。なお、この警告には判事の間でも意見が分かれており、判事の1人は「VPNを使った人ではなく、ナチズムやファシズムを表現するようなメッセージを投稿した人に罰金を科すべき」との意見を示しているそうです。



ブラジルは2000万人以上のユーザーを抱えるXにとって重要な市場の1つです。一方でStarlinkも人気があり、2022年に開通して以来、ユーザー数は25万人に達しているとのことです。

Xの利用が実質的に禁じられたため、地元メディアの中にはポルトガルの支社を通じてニュースを配信するところもあるそうです。