Image: ESA
JUICE探査機が史上初の月・地球フライバイ時に捉えた光景

史上初となる月・地球のダブルフライバイ(宇宙機が天体の近くを通り過ぎる飛行)に成功した、木星氷衛星探査機JUICE(JUpiter ICy moons Explorer)。その際に月と地球を捉えた動画が公開されました。

欧州宇宙機関(ESA)が公開したのは、木星系へ航行中のJUICEを、次のフライバイ対象である金星へ向かう軌道に乗せるために行なわれた月・地球フライバイのタイムラプス動画

1分半の動画には、月そして地球に近づいては遠ざかっていくJUICEが捉えた、クレーターだらけの月面と、青い地球が鮮明に写っています。

このフライバイが実施されたのは、8月19日と20日(日本時間の20日と21日)のこと。JUICEの探査機運用マネージャーIgnacio Tanco氏は、ESAのリリースの中でこう述べていました。

「重力アシストフライバイは完璧で、すべてが滞りなく進み、私たちは地球のすぐ近くに戻ってきたJUICEを見ることができて感動しました」

観測機器を試す機会にも

この動画の撮影には、JUICEのブーム(伸展物)やアンテナ類の監視のために設計された2台のモニタリングカメラが使われました。今回の月・地球フライバイはJUICEの観測機器を試す機会ももたらし、「月フライバイ中には10個すべてを、地球フライバイ中には8個を作動させた」とのこと。

「このダブルフライバイのタイミングと位置のおかげで、私たちはJUICEの観測機器の挙動をしっかり調べることができます」と、JUICEオペレーションズサイエンティストClaire Vallat氏は前述のリリースにて説明しています。

「JUICEの旅路の早い時期に試せるので、そのデータを使って観測機器を木星到着に向けて準備できます。そして地球、月、そして周辺の宇宙環境の物理的特性を私たちが熟知していることを考えれば、本物の目標天体に対して、観測機器がどう反応するのかを理解するための理想的な場所でもあるのです」

JUICEは、木星の氷衛星の居住可能性を調査するため、木星への8年がかりの旅をしています。今回は月と地球の重力を利用して速度と方向を変え、軌道を変換しました。月のフライバイで探査機の速度は、太陽に対して秒速0.9km増して地球へと向かわせました。地球のフライバイで速度は太陽に対して秒速4.8km落とされ、金星に向かう新たな軌道へ行ったのです。

JUICEの今後

JUICEは再び地球に向かう前の2025年8月に金星スイングバイを行ないます。その後、地球フライバイを2回、2026年9月と2029年1月に実施予定。同探査機のルートは2031年の木星軌道投入に向けて、正しい軌道と適切な速度に到達できるように設計されています。

2023年4月にフランス領ギアナにある宇宙基地から、木星の3つの氷衛星(エウロパ、ガニメデ、カリスト)を調べる12年に及ぶミッションへと出発したJUICE。離昇からほんの数時間後には、ミッションの初撮影に臨んでいました。

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Source: ESA(1, 2, 3), YouTube