この記事をまとめると

■新車販売の世界でも働き手不足は深刻な問題でとくにメカニック不足は顕著だ

■最近の分刻みに近い業務を嫌って離職するベテランメカニックも多い

■増販期にクルマを購入すると点検のタイミングも被るためあえて閑散期にクルマを購入するのもおすすめだ

メカニック不足で任意点検ができない

 以前、事情通から「ディーラーの整備工場が多忙すぎて、メンテナンスパックのなかの法定点検ではなく、任意の点検についてはその分を返金するので受けないでほしいといわれることがある」と聞いた。

 メンテナンスパックとは、初回車検や2回目車検までなど期間の違いはあるのだが、一定期間内の法定点検及び任意点検にかかる整備代やエンジンオイルなどの一部油脂類・部品交換代をトータルパッケージ料金として前払いすることで、お得になるというもの(実際に得なのかは各自で確認してほしい)。

 新車販売の世界でも働き手不足は深刻な問題となっている。セールスマン不足も深刻だが、メカニック不足はそれに輪をかけて深刻になっている。十分ではない人数でまさに「分刻み」といっていいスケジュールで日々作業をこなしていく。

 一般的な作業だけでもかなりタイトなのに、さらにリコールの届け出があり改修作業が加われば、残業して作業をこなしていくことも珍しくないとも聞く。単に新人メカニックを集めにくいというだけではなく、日々の多忙な業務を嫌い離職するベテランメカニックも多いとのこと。

 筆者の知り合いによると、「あるとき自分のクルマのバッテリーがあがったので某ロードサービスを呼んだことがあります。よく見かける車両けん引などもできるレスキュー車ではなく、一般的な軽自動車のライトバンでロードサービスマンがやってきました。話を聞くとロードサービス団体から業務委託を受けている会社からきたと話してくれました。作業の合間に聞いたところでは、そのロードマンは以前メーカー系ディーラーでメカニックをしていたとのこと。あまりに多忙で離職して現職になったそうだが、肉体的にも精神的にもいまの仕事のほうがストレスが少ないとも話してくれました」という。

 新車ディーラーだけが整備士不足というわけではないので、まさに引く手あまた状態のようなので、転職先については、条件次第という面もあるが、困らないようである。

増販期購入のクルマの定期点検時期の整備現場は多忙を極める

 そんな話を聞いたあと、筆者のメンテナンスパックに加入している所有車両について、任意の点検・整備の案内が届いた。そこで担当セールスマンに「任意の点検はやらなくてもいいと聞いたが……」と連絡すると、「そこについては時期によって対応が異なります。たとえばメンテナンスパックへの加入有無に関係なく、新車が年間でもっとも売れる3月登録で新車を購入すると、当然同時期に新車を買った人はかなり多く、それ以降の定期点検整備のタイミングも同じになるので、その時期については整備現場は多忙を極めまるようです」とのこと。

 つまり、3月登録で新車が納車されると、車検到来月も同じタイミングとなる。いまほど働き手不足がひどくなかったころでも、自分の希望する日時に点検及び整備のスケジュールを調整するのが難しかったのである。

 ここで前出のセールスマンとの会話に戻ると、「お客さま(筆者)の場合は新規登録の少ない1月に初度登録を行っています。そして、今回の点検及び整備は8月に実施予定なので、作業対象車種が少なくて逆に少々困っているので、ぜひやらせてください」とのことであった。

 事業年度(4月から翌年3月)末となる3月や事業年度締め上半期末となる9月は、購入特典が豊富になったり値引きや下取り査定でも好条件が出やすいこともあり、新車がよく売れる「増販期」のなかでもとくに新車が売れる時期となる。ここ最近は新車の供給状況も全体で見ればほぼコロナ禍前に近いところまで復調してきているので、増販期に合わせて新車を買えば、同じタイミングで点検及び整備を迎える人も多くなり、整備現場はより多忙を極めることになる。

「いまどきは増販期と、それ以外の時期で極端に値引きなどの購入条件に差が出るということもありません。新車がなかなか売れない時期であっても、攻め方やタイミング次第では増販期並みの購入条件も十分狙えます。新車を買いなれている人ほど増販期をはずして購入する傾向があるとも聞いたことがあります」(事情通)。

 いまどきはディーラーが、とくに車検では外部業者に流れないうちにということで、車検満了日よりかなり以前から入庫案内の連絡をしてくるので、早めに入庫予定日を決めてしまえば問題はないが、余計なことを考えたくないという人は、増販期を外して新車を買うというのも一手であるといえるだろう。