@AUTOCAR

写真拡大 (全4枚)

次世代コンセプトは4ドアの電動GTか

英国のジャガーは、電気自動車(EV)の需要が安定していないにもかかわらず、来年から完全電動化する計画を堅持している。そして数か月以内に既存のラインナップをすべて廃止し、新時代の方向性を示すコンセプトカーを発表する。

【画像】ジャガー初の量産EV、後継車は……?【ジャガーIペイスを写真で見る】 全42枚

ジャガーの次世代モデルは、スタイリング的にも技術的にも、そしてその位置づけにおいても、これまでのモデルとは無縁のものとなる。これまで同社は、次世代モデルについて「何物のコピーでもない」としか説明してこなかった。


12月に発表予定のコンセプトカーは、4ドアのグランドツアラー(GT)になると予想される。(編集部作成予想イメージCG)    AUTOCAR

しかし、12月に発表される新しいコンセプトカーによって、多くの疑問に答えが出されるだろう。航続距離700km以上、超急速充電、合計出力580ps以上のツインモーター・パワートレインを備えた10万ポンド(約1880万円)級の4ドアGTである。

コンセプトカーは、2028年までに発売予定の大型SUVおよび大型セダンにも採用される新時代のデザイン言語を示す。

ジャガーのマネージング・ディレクターであるロードン・グローバー氏はAUTOCARの取材に対し、これらの新型車を設計する際に優先したのは、EVデザインの基本原則を見直すことだったと語った。今日のEVが「どれも似たようなものに見えるのは、航続距離を稼ぐために空力を重視しすぎたから」だという。

「(EVの外観は)非常に均質です。EV分野が少し失速した理由の1つは、そこにあるのではないでしょうか。そのような慣習に挑戦するクルマを作りたい」

従来のイメージを変えるデザイン

グローバー氏は詳細を明かさなかったが、AUTOCARはこれまでに得た情報から次世代モデルのスタイリングについてある程度イメージを掴んでいる。最大の特徴は、長く突き出たボンネット、ジャガーブランドの新しい顔となる新グリルを配したミニマルで堂々としたフロントエンドだ。また、フロントとリアのLEDライトは消灯時にはほとんど見えないほどスリムになり、ポールスター4のようにリアウィンドウはないと考えられる。

ジャガーの跳躍する猫のエンブレム(ザ・リーピングジャガー)が廃止されるという予想もあったが、これについてグローバー氏は、「少し誇張されすぎている」と否定した。その理由は、「高級車ブランドにとって、その出自や歴史、アイコンは非常に重要」だからだ。


フラッグシップモデルとして大型の高級セダンも投入する。(編集部作成予想イメージCG)    AUTOCAR

「そこで我々は、新ブランドと新型車のためにリーパー(猫のエンブレム)を再構築しました。少し発展した形ではありますが、これからも生き続けるでしょう」

同様に、車名については歴史的なネーミングの影響を受けることを示唆した。「ネーミング戦略をご覧いただくと、我々の過去に対する敬意だけでなく、より先進的な側面も見えてくるでしょう」

グローバー氏は、米国市場の重要性から新型の4ドアGTの発表を米国で行うと述べた。しかし、ブランドの起源を軽視しているわけではないという。「英国らしさは重要ではない、という意味ではありません。そこはブランドにとって非常に重要な部分ですが、我々はグローバルブランドでもあります。米国市場の大きさと規模を見てください。我々にとって本当に重要なのです」

新車販売に「空白期間」も

ジャガーがEVシフトを進める中、競合他社は高級EVの需要が頭打ちになっていることを受け、電動化戦略を調整している。例えば、ポルシェは2030年以降もガソリンエンジンのカイエンの生産を予定している。アウディはハイブリッド車への注力を大幅に強化し、メルセデス・ベンツはEV販売が「予想より低迷している」ため、一部のプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売予定期間を延長した。

ジャガーの親会社であるJLRでさえ、包括的なEV戦略を調整し、150億ポンド(約2兆8200億円)の電動化投資パッケージを180億ポンド(約3兆3800億円)に引き上げた。消費者がEVに消極的な分野をカバーするため、ランドローバー向けに柔軟性のあるプラットフォームを開発できるようにした。


(編集部作成予想イメージCG)

しかしグローバー氏は、ジャガーのブランド再ポジショニング、技術的優先事項、新時代のデザイン言語が、市場での魅力を高めると確信している。「我々の製品、そしておそらく次世代の製品は、業界全体の認識に大きな違いをもたらすと思います」と彼は言う。

「現在のところ、EVを所有する上での合理的な障壁はまだ残っています。航続距離への不安とインフラ、そして公共の場で充電する必要性です。そのひとつひとつを順番にクリアしていけば、我々のクルマはすべて大きなレバレッジを持つことになります」と、ジャガーの次期EVの航続距離の長さと急速充電の速さに言及した。

また、ジャガーブランドは高価格で販売台数を抑えているため(最大でも年間5万台)、主流の市場トレンドにあまり左右されないとも述べた。「我々は台数よりも価値を重視してきました。それが今の価格帯を選んだ理由です」

「EV市場の発展が無関係だとは言いませんが、もっとコモディティ化したボリューム・セグメントにいた場合よりも、関連性は低いと思います」

新時代の幕開けを前に、ジャガーは英キャッスル・ブロムウィッチでのXE、XF、Fタイプの生産を終了し、オーストリアにあるマグナ工場でのEペイスおよびIペイスの生産も年内に終了する。Fペイスだけは2025年まで生産が継続されるが、グローバー氏は今年末までに欧州の一部市場で「新車販売を終了する」と述べ、英国でも「来年初頭から」それに続くとした。

また、英国では新型4ドアGTの本格導入は2026年以降になるという。つまり、地域によってはジャガーの新車が販売されない期間が約1年間続くことになる。その間、販売店では中古車とアフターサービスに注力することになるが、「そうですね、ジャガーを購入できない期間も出てきます」とグローバー氏は述べた。