「アルコール性肝障害」を発症すると現れる症状・飲酒以外の原因はご存知ですか?
飲酒は大人の中でも人気な嗜好の1つで、イベントだけでなく日頃からアルコールを摂取している人も大勢いるでしょう。
アルコールは適度な摂取量であれば、そこまで大きな健康被害はありません。しかし毎日過剰に摂取していると、体へのダメージが大きいことをご存じでしょうか。
特に肝臓はアルコールの影響を受けやすく、体の異変に気付かず飲酒を繰り返していると最悪命を落としてしまう可能性があります。
本記事では、アルコール性肝障害に関する病態・症状・原因・治療法などについて解説します。日頃から過剰に飲酒を繰り返している人は、最後まで目を通してみてください。
※この記事はMedical DOCにて『「アルコール性肝障害」を発症すると現れる症状・飲酒以外の原因はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
≫「アルコール依存症」になると現れる初期症状はご存知ですか?医師が監修!監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
アルコール性肝障害の症状と原因
アルコール性肝障害とはどのような病気でしょうか?
アルコール性肝障害とは、5年以上の長期にわたる過度の飲酒が肝障害の主な要因となっている病気です。アルコール性肝障害は飲酒量が多く、飲酒期間が長いほど発症しやすくなります。アルコール性肝障害の特徴はB型肝炎やC型肝炎と異なり、自分自身の意思で予防できるという点です。
しかし事実として予防できない人が多いため、アルコール性肝障害を発症している割合は増加しています。
アルコール性肝障害には病型が複数あり、アルコール性脂肪肝・アルコール性肝繊維症・アルコール性肝炎・アルコール性肝硬変などがあります。
肝臓への脂肪蓄積はアルコールに対する初期反応です。常習飲酒家の約90%に脂肪肝を認め、その内約10~20%の人はアルコール性肝炎へ移行します。
重症アルコール肝炎の場合禁酒しても肝腫大が持続し、多くの合併症を併発するだけでなく、発症後1ヶ月以内で死亡するというデータがあります。
生存率は1998-2002年で33.6%・2003年で67%と改善傾向ではありますが、消化管出血と感染症の合併症が死亡率増加に関与しており、早期発見や早期治療が重要です。
具体的な症状を教えてください。
アルコールを常習している人は、ほとんど必然的にアルコール性脂肪肝を発症します。その症状は倦怠感・疲れやすい・食欲不振・嘔気・右肋骨下の痛みなどがあります。ただし症状があることは稀で、腹部超音波検査で発見されることが多いです。
アルコール性肝障害の程度でとどまっていれば断酒で改善が見られますが、肝硬変まで至ってしまうと改善しない場合もありますから、アルコールによる肝障害を指摘された場合はすぐに断酒をするように心がけましょう。
アルコール性肝障害は症状を自覚しにくく、飲酒を続けてしまうと今度はアルコール性肝炎を発症するリスクが高くなります。
アルコール性肝炎では腹痛・発熱・黄疸などの症状がみられ、死亡する危険性もあります。
アルコール性肝炎の診断がついた人のほとんどは断酒ができないほどのアルコール依存症になっている状態が多いです。
アルコール性肝炎が運よく改善しても、また飲酒を再開してしまうと今度はアルコール性肝障害の最終段階であるアルコール性肝硬変へ移行してしまいます。
日本酒約7合を毎日10年以上飲酒し続けた場合は約20%、20年以上飲酒した場合約50%の人が発症するといわれています。アルコール性肝硬変の重大な症状は腹水・黄疸・吐血などです。
肝硬変は治らないというわけではなく、アルコールが原因であれば禁酒すれば症状の改善が期待できます。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているので、自覚症状があった時点で既に発見が遅く治療が困難な状態なので、早期発見が何よりも大切です。
飲酒を常習的に行っている人は定期的に血液検査や超音波検査を受けるようにしてください。
見た目では痩せていても重症化の可能性があるのですね。
脂肪肝は肥満の人だけでなく、見た目が痩せている人でも重症化している可能性があります。脂肪肝の発症要因の1つがBMI高値です。BMI>30の人の約80%は脂肪肝を発症しているといわれていますが、BMI<25で約10%以上の人が肥満ではない状態でも、脂肪肝が確認されています。
若い頃痩せ型で体重が5~10kg増加しても肥満でない場合や、以前にスポーツをしていてやめた後に筋肉量の減少と脂肪の増加で体重や体型にあまり変化がない場合もあります。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれているため、自分は痩せているから大丈夫と安心するのは危険です。痩せ型でも飲酒を常習的にしていれば肝障害を発症している可能性はあるので、定期的に血液検査を行って肝障害の早期発見につなげられるようにしましょう。
飲酒以外に原因はありますか?
肝障害は肝臓の機能が障害されている状態をいいますが、アルコール以外にも原因はあります。肝機能障害の主な原因はアルコールだけでなく、B型・C型肝炎ウイルスによる肝炎・薬剤の服用によって起こる薬物性肝障害・自己免疫の異常で起こる自己免疫性肝障害など様々です。
肝臓の病気はどの原因であっても、病状が慢性的に進行すると最終的に肝硬変から肝不全に行き着きます。
しかし肝硬変になるスピードは病態によって異なり、アルコールが原因で急速に進行する可能性がある場合や、C型肝炎のように20~30年かかって徐々に肝硬変に向かっていく場合もあります。
劇症肝炎は肝臓が一気に破壊され、1~2週間で死亡することもありとても危険です。
日頃から飲酒していない人でも肥満の人は肝障害を認めることが多く、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を合併している人は、特に肝障害を発症する傾向にあります。
編集部まとめ
アルコール性肝障害は、症状を自覚しにくく発見時には病状が進行していることが多いです。早期発見のためには、定期的に血液検査を行う必要があります。
また禁酒すると改善が期待できる病態もあるので、自分で禁酒や節酒が難しいようであれば専門の医療機関へ受診し、医師に相談しましょう。
適度な飲酒を心がけて、体へ負担をかけないよう意識しながらお酒を楽しんでください。
参考文献
アルコールと肝臓病(e-ヘルスネット)
アルコール依存症への対応(e-ヘルスネット)