「風邪は治ったのに咳が止まらない」実は病気の可能性も? 考えられる原因を医師が解説
「咳が長引く」「風邪は治ったのに、咳だけなかなか止まらない」という症状は、多くの人が経験したことがあると思います。このような場合、一時的な風邪やインフルエンザだけではなく、さまざまな病気が考えられます。今回の記事では、長引く咳の原因となる主な病気について、宮澤内科・呼吸器クリニックの宮澤 知行先生に解説していただきました。
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宮澤 知行(宮澤内科・呼吸器クリニック)
鹿児島大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学外科学講座助教を経て聖マリアンナ医科大学呼吸器外科講師となる。2019年より、宮澤内科・呼吸器クリニック勤務。医学博士。日本外科学会外科専門医。呼吸器外科専門医合同委員会(日本呼吸器外科学会・日本胸部外科学会)呼吸器外科専門医。産業医。
咳はどうして出るの? 医師が徹底解説!
編集部
はじめに、なぜ咳が出るのか教えてください。
宮澤先生
咳は、おもに気道に異物が入ったり炎症が起きたりしたときに、体がそれを排除しようとして起こります。気道の粘膜が刺激を受けると、神経が脳に信号を送り、脳からの指令で腹筋や横隔膜が収縮し、強い息を吐き出すことで異物を排出しようとするのです。
編集部
咳が出る原因にはどのようなものがありますか?
宮澤先生
咳が出る主な原因には、風邪やインフルエンザなどの感染症、花粉症やアレルギー性鼻炎などのアレルギー、喘息など気道の慢性疾患などがあります。また、胃酸逆流や誤嚥、心臓の問題なども咳の原因となります。
編集部
咳にも色々あるのですね。
宮澤先生
そうですね。少し専門的な話になりますが、咳には、乾いた咳と湿った咳の2種類があります。乾いた咳は痰が出ない咳で、おもにアレルギーやウイルス感染によるもの、湿った咳は痰を伴う咳で、細菌感染や慢性気道疾患が原因であることが多いですね。咳の性質によって、原因となる病気をある程度推測することができます。
咳が長引く原因や対処法を教えて!
編集部
風邪が治った後でも、咳だけ止まらないということもあります。これはなぜでしょう?
宮澤先生
風邪というのは一種の炎症反応です。炎症が起こって気道が傷ついたり過敏になったりすると、異物が入っていない時でも咳が出たり、普段は全く気にならないようなごく僅かなホコリなどでも異物とみなして咳込んだりしてしまうことがあります。また、「風邪の後だから」というだけでなく、なんらかの病気が隠れている可能性もあります。
編集部
咳が長引く場合、どのような病気が疑われますか?
宮澤先生
慢性気管支炎、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核、肺がんなどが疑われます。また、慢性副鼻腔炎や胃食道逆流症(GERD)も長引く咳の原因となることがあります。
編集部
咳が続く時、様子を見ていて改善することはありますか?
宮澤先生
風邪などの炎症による咳が長引いている場合は、無理をせず、生活習慣に気をつけていれば、個人の持っている自然治癒力で改善していくことが期待できます。しかし、病気によって長期間の咳が続いている場合は、原因となっている病気を治療しなくてはいけないので、速やかに受診する必要があります。
編集部
具体的にどのようなことに気をつけていくと良いでしょうか?
宮澤先生
原因に応じた対処法がありますが、一般的な対処法としては「仕事や家事などで無理をせず休息を取ること」「水分をしっかり摂ること」「加湿器などを使って室内の湿度を保つこと」「刺激物を避けること」などが有効です。基本的なことですが、食事や睡眠などにも気を配り、喫煙者は一時的にでもタバコを控えるなど、いわゆる「健康的な生活」を心がけましょう。
咳が止まらない時、受診の目安はある?
編集部
いろいろな方法を試しても咳が止まらない時、どうしたら良いでしょうか?
宮澤先生
お近くの呼吸器クリニックなどに相談してください。受診のタイミングには個人差がありますので、「いつもより長く咳が続くな」と思ったら早めに受診しましょう。咳自体、1回あたり2~4キロカロリー消費すると言われています。たかが数キロカロリーと思われるかもしれませんが、一日中咳が止まらないとなると、累計すると相当数のカロリーを消費するため体が疲弊してしまいます。
編集部
そのほかに、受診したほうが良いポイントなどはありますか?
宮澤先生
喘息による咳は、明け方に向けて症状がひどくなる傾向があります。夜や明け方に咳がひどくなる場合などは「喘息かも?」と思って受診していただいた方がよいと思います。また、肺がんや結核などの重大な疾患が原因で咳が止まらない場合もありますので、発熱や体重減少、血痰などを伴った場合は早急に受診するようにしてください。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージをお願いします。
宮澤先生
「他院で咳止めを処方されたが、咳が止まらない」といった声や「先生のところでは最初から咳止めを出してくれないのですか?」といった声を聞くことがあります。しかし、咳は、先述した通り、異物を体から排除しようとする防御機能の意味合いもあるのです。また、肺がんや結核などの重大疾患があり、咳という症状で体が病気を教えようとしてくれている場合もありますし、喘息の治療では、症状に応じて治療薬の強度を調整することが非常に重要になってきます。こういった場合、咳止めを用いることにより治療効果がわかりにくくなってしまうこともあります。さらに、咳止め自体にも副作用があります。呼吸器科医だからこそ、咳止めの使用に躊躇してしまう場合があることをご理解いただけたらと思います。
編集部まとめ
咳の原因や、長引く場合の対処法について解説していただきました。咳の原因は、軽い風邪から深刻な病気まで様々です。「いつもより長引くな……」と思った場合は、まずは受診することを心がけましょう。また、咳止め薬の使用には、メリットだけでなくデメリットもあるとのことでした。安易に薬に頼ろうとせず、医師の判断やその理由についての説明をしっかり聞き、納得して治療を受けましょう。
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