マンモグラフィvsエコー 乳がん検診の最適な方法、メリット・デメリットとは?

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マンモグラフィには被曝リスクや痛み、偽陰性の可能性を伴うデメリットがある一方、エコー検査にも人の技量に左右されたり、石灰化を正確に評価しにくかったりするというデメリットがあります。乳がん検診の最適な方法について、茗荷谷乳腺クリニックの氷室先生に教えてもらいました。

※この記事はMedical DOCにて【「乳がん検診は受けない方がいい」実際どうなの? 医師が開始年齢の目安とマンモグラフィ・超音波検査のリスクを解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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監修医師:
氷室 貴規(茗荷谷乳腺クリニック)

聖マリアンナ医科大学卒業。順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了。順天堂大学医学部附属静岡病院や越谷市立病院で経験を積む。2020年、東京都文京区に「茗荷谷乳腺クリニック」を開院。医学博士。日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会専門医。日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師、乳がん検診超音波検査実施・判定医。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会責任医師。

編集部

そもそも乳がん検診は、なぜ受けた方がいいのでしょうか?

氷室先生

乳がん検診を受ける目的は、「乳がんを早期のうちに発見すること」です。国立がん研究センターの発表によると、乳がんのステージ0は5年生存率・10年生存率ともに100.0%ですが、ステージ4になると5年生存率は38.7%、10年生存率は19.4%に低下してしまいます。(※)つまり、乳がんは早期に発見するのが非常に重要であり、そのためには乳がん検診が最適な手段なのです。

※国立がん研究センター「院内がん登録 2009 年 10 年生存率、2013-14 年 5 年生存率集計公表」
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2021/1224/2009.2013-2014_seizonritsu_release.pdf

編集部

乳がん検診というと、マンモグラフィ検査のほかにエコー検査もありますが、どちらを受けるのがいいのでしょうか?

氷室先生

通常、乳がん検診は視触診にマンモグラフィ検査やエコー検査を組み合わせておこないます。マンモグラフィ検査とエコー検査には、それぞれメリットとデメリットがあります。例えば、マンモグラフィ検査は乳腺の全体を捉えやすく、また、石灰化のある小さな乳がんを見つけることができます。その一方、被曝のリスクがある、痛みを伴うなどのデメリットがあります。さらに陽性なのに誤って陰性の結果が出てしまうという偽陰性の問題もあります。

編集部

偽陰性の問題もあるのですか?

氷室先生

はい。実際、マンモグラフィ検査は乳腺密度の高い人や若い人には適さない検査法です。こうした人がマンモグラフィ検査を受けると、乳腺の部分が白い塊のように写し出されて、病変を発見することが難しくなります。

編集部

そうなると、エコー検査の方がいいのですか?

氷室先生

たしかに、エコー検査は乳腺密度の高い人や若い人でも受けることができ、また痛みを伴わないので気軽に受けられるというメリットがあります。しかし、反対に検査をおこなう人の技量に左右されやすかったり、石灰化を正確に評価しにくかったりするといったデメリットがあります。加えて、エコー検査による死亡率減少効果はまだ確立されていません。

編集部

そうなると、エコー検査単独ではあまり意味がないということでしょうか?

氷室先生

年齢にもよります。乳腺が発達している若い人の場合、マンモグラフィ検査よりもエコー検査の方がしこりを見つけやすいため、20歳代の人はエコー検査単独でもいいのではないでしょうか。

編集部

どの検査を受けるべきかについては、年齢によって異なるのですね。

氷室先生

現在、日本ではマンモグラフィ検査が基本とされていて、40歳以上の女性は2年に1回受けることが推奨されています。しかしその一方で、マンモグラフィ検査にエコー検査を併用すると、さらにがんの発見率が上がるという研究結果もあります。(※)そのため、年齢に応じて検査項目を選択する必要があると考えています。

※「J-START」
http://www.j-start.org