夏場の体臭注意! 「ワキガ」の治療や臭いの緩和策とは?【セルフチェック法も解説】
夏場は汗をかきやすく、冬場よりも薄着になるため体臭が他者に伝わりやすい時期。中でも脇から強い臭いのするワキガは社会、日常生活でも指摘しずらいデリケートな問題です。生活習慣や食事などの乱れなど、いわゆる不摂生などもワキガの原因だといいます。そこで、ワキガの症状と原因、治し方などを解説します。
※この記事はMedical DOCにて【「ワキガ」の見分け方・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
ワキガの症状と原因
ワキガはどんな症状ですか?
ワキガは、腋臭症といわれる病気であり、脇から強い臭いがする症状が主に挙げられます。また、その他の症状としては、次のようなものが代表的です。
脇に汗染みができやすい
脇毛から白い粉が吹くことがある
ワキガの臭いの元となるアポクリン腺分泌物は、脇に汗染みを作りやすいです。また、脇から白い粉が吹くこともあります。
ワキガの原因はなんでしょうか?
ワキガの原因は、厳密には汗の臭いではありません。身体には汗腺がいくつもありますが、その汗腺にも2種類あります。エクリン腺とアポクリン腺の2つです。このうち、エクリン腺は全身に備わっている汗腺で、体温調節する機能を担っています。
一方、アポクリン腺については、脇の下・陰部・外耳道などの特定の部位にしか存在せず、精神的緊張を感じた際に汗を分泌する機能を備えています。そして、ワキガに関係するのはアポクリン腺の方です。
ほとんど水分であるエクリン腺からの汗に対して、アポクリン腺から出てくる汗にはタンパク質・脂質・糖などを含みます。中でも脂質は、皮膚表面の細菌を分解する作用があります。この作用により、独特の臭いを発する低級脂肪酸をつくるため、ワキガの嫌な臭いとして感じるのです。
どんな人が発症しやすいですか?
ワキガは、次のような方が発症しやすいといわれています。アポクリン腺の数が多く、大きい方
遺伝がある方
生活習慣が乱れている方
まず、アポクリン腺の数が多い方や腺が大きい方が発症しやすい傾向です。
アポクリン腺自体は誰にでもあるものですが、数が多いとそれだけ分泌される汗の量が多くなります。また、腺が大きいことも汗の量が増える要因です。そのため、臭いが強くなる傾向です。
また、遺伝も考えられており、両親がワキガである場合も発症する可能性が高いといえます。
生活習慣とも密接にかかわっており、食事バランスが乱れている方や喫煙する方が発症しやすいです。
女性でも発症するのですね。
女性でも発症する可能性はあります。アポクリン腺の働きは、性ホルモンの働きが活発になることで増加します。特に女性の場合は、妊娠・出産・月経などの女性ホルモンが活発になる時期があるため、その時期に応じてアポクリン腺の働きが強くなる可能性が高いです。
そのため、女性でも発症する可能性があるのです。
自分がワキガなのか見分ける方法を知りたいです。
自分がワキガなのかを見分ける方法としては、次のような項目をチェックしてみましょう。耳垢が湿って粘り気がある
両親にワキガの方がいる
脇毛の量が多い
汗の量が多い
黄ばんだ汗染みができる
脇毛に白い粉がつく
全てに該当したからといって、必ずしもワキガというわけではありませんが、これらの項目である程度見分けることができるでしょう。
まずは耳垢の状態を確認します。耳にはエクリン腺は存在せず、アポクリン腺のみが存在しています。そのため、耳垢の湿り具合はアポクリン腺のみで決まるのです。耳垢が湿っている方の80%がワキガであることがわかっているため、目安となるでしょう。
両親にワキガの方がいる場合でも、ワキガの可能性が疑われます。アポクリン腺の量は、成長とともに増減する物ではなく、遺伝による影響が大きいといわれています。そのため、両親でワキガの方がいるということは、体質として遺伝しているケースがあるのです。
脇毛の量が多いかどうかも見分ける基準となります。アポクリン腺は毛穴とつながっており、脇毛の多い方ほどアポクリン腺も多い特徴があります。そのため、脇毛の量が多い方ほど、ワキガになりやすい体質といえるのです。
汗の量も見分けるポイントです。エクリン腺の数は、ワキガとの直接関係はありません。しかし、エクリン腺が多く汗を大量にかく方の場合は、エクリン腺より分泌された汗が、アポクリン腺から分泌された汗を広げる可能性があります。臭いの拡散力も高くなるため、汗の量が多い方はワキガの可能性が疑われます。
黄ばんだ汗染みができるかどうかも見分ける方法のひとつです。汗染みは、アポクリン腺から分泌される汗に含まれるリポフスチンによって生じます。リポフスチンが多いほど、染みが濃くなるのです。衣類に頻繁に黄色い染みがついている場合には、ワキガの可能性が高いといえるでしょう。
脇毛に白い粉がつくかどうかも、ワキガであるかを見分ける効果的な方法です。白い粉の正体は、アポクリン腺から分泌された汗が結晶化したものです。蒸発した汗が結晶化して、白い粉状になって毛に付着します。それだけ、アポクリン腺からの汗の分泌量が多いということなので、ワキガの可能性も非常に高いです。
ワキガの治し方
ワキガは自分でも治せますか?
ワキガの臭いが気になることで、自分でも治したいと考えている方は多いでしょう。しかし、自分で治すことはほぼ不可能です。塗り薬や飲み薬などで汗の分泌を抑えることはできますが、あくまで臭いが発生しないようにする予防や臭いが出てきたときの対処法です。
アポクリン腺の数や大きさなどは、自分ではコントロールできません。ワキガを完全に治すためにはアポクリン腺を完全に取り除くか、あるいは汗腺を切除する必要があるため、専門の医療機関で治療する必要があります。
病院は何科を選べばよいですか?
ワキガの受診・治療を進めるためには、次のような診療科目を選びましょう。皮膚科
形成外科
美容外科
皮膚科では、消毒作用のある薬などを使用して治療を進められます。
形成外科や美容外科では、アポクリン腺の切除など手術も踏まえて治療を進めることができます。
病院での治療方法を教えてください。
病院での治療方法としては、次のようなものが代表的です。ボツリヌス製剤の注射
手術
ボツリヌス製剤の注射は、アポクリン腺の汗には作用しませんが、エクリン腺の汗の量を抑える作用があります。そのため、拡散を防止してワキガの症状を和らげることを期待できます。
手術は、アポクリン腺の切除です。脇の下を切ることで、物理的にアポクリン腺を取り除きます。
しかし、切除したように見えても、アポクリン腺が残っている可能性があります。また、手術後に増殖する可能性もあるため完治するとは限りません。
ワキガの予防法・対処法
ワキガは予防できますか?
ワキガの予防としては、清潔に保つことや定期的に脇毛を剃ることです。清潔に保つためには、毎日の入浴や汗をかいた後の拭き取り、制汗剤などを用いて定期的に殺菌や汗を抑えるようにするなどの方法があります。脇の汗は気づかないうちにかいており、臭いを発しているケースもあります。そのため、こまめに清潔にすることが大切です。
また、脇毛を剃ることで、蒸れにくく雑菌が繁殖しにくい環境にすることができます。しかし、毛を剃ることで肌を痛める可能性もあるため、注意しながら処理することが必要です。
ワキガになったときの対処方法を知りたいです。
具体的な対処方法としては、次のようなものです。消毒用エタノールによる殺菌
制汗剤の使用
消毒用エタノールを用いることで、脇の皮膚にいる菌を殺菌することができます。先述したように、アポクリン腺の汗が皮膚表面に作用して臭いとなる菌を発生させているため、殺菌することで臭いを和らげることができます。
また、制汗剤の使用も効果を得られるでしょう。汗を抑制する成分が含まれているため、アポクリン腺の働きを下げる効果に期待できます。
殺菌作用をもつ制汗剤であれば、殺菌効果も同時に期待でき、より和らげることができるでしょう。
しかし、これらの治療は永続的な効果はありません。臭いが軽減したとしても、一過性であるため注意が必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
ワキガは、強い臭いを発生させる病気であるため非常に大きな問題です。周囲への臭いが気になってしまって、周りと距離を作ってしまうケースもあるでしょう。そのため、できるだけ臭いが出ないように完治させたいと考えている方も多いです。しかし、予防や対処法はありますが、完治させようとすると手術などが必要となります。また、手術を行ったとしても必ず完治するわけではなく、再びアポクリン腺が増えてしまい再発する可能性があります。
これらの可能性を正しく理解して、治療を進める必要があるでしょう。症状の程度や治療方法を具体的に理解するためにも、専門の医療機関へ相談し治療を進めましょう。
編集部まとめ
ワキガは、アポクリン腺が多く、大きい方がなりやすい病気です。
遺伝性もあるため、両親のどちらかでもワキガを発症している場合は、自分にも発症する可能性があることを理解しておきましょう。
また、誰しも発症する可能性がある病気のため、予防方法などもあらかじめ知っておくことが大切です。清潔に保ち、臭いが強くならない方法を押さえておきましょう。
万が一、臭いや汗染みなどの異変を感じた場合には、専門の医療機関に相談しましょう。症状の程度や対処方法を教えてもらえ、症状を改善させられます。