夏になると日本各地で花火大会が開かれ、夜空を色とりどりの美しい花火が彩る光景は多くの人々を楽しませてくれます。ところが、アメリカのブリガム・ヤング大学の研究チームが発表した論文では、花火がユタ州ワサッチフロントにおける大気汚染の主要な原因になっていることが示されました。

Trace element chemistry and strontium isotope ratios of atmospheric particulate matter reveal air quality impacts from mineral dust, urban pollution, and fireworks in the Wasatch Front, Utah, USA - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0883292724000118



BYU study reveals fireworks’ impact on air quality - BYU News

https://news.byu.edu/intellect/byu-study-reveals-fireworks-impact-on-air-quality

Fourth of July Celebration Fireworks Come With a Side of Dangerous Air Pollution : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/fourth-of-july-celebration-fireworks-come-with-a-side-of-dangerous-air-pollution

ワサッチフロントはユタ州北部に位置するワサッチ山脈に隣接する地域であり、都市部には250万人以上の住民がいます。風上に砂漠地帯がある盆地であり、風に吹かれた粉じんや工場の排出物、山火事の煙といった要因によって頻繁に大気質の問題が発生するとのこと。

そこで研究チームは、2019年〜2021年にかけてワサッチフロントで採取したサンプルを分析し、汚染物質を構成する元素を分析しました。汚染物質の内訳を調べることで、一体どのような汚染源から排出されたものかがわかるというわけです。

ブリガム・ヤング大学の地質学者であるグレッグ・カーリング氏は、「私たちは花火大会や砂嵐、街が冬の逆転層に覆われた時に、健康に悪い微粒子を吸い込んでいることを知っています。しかし、実際に微粒子には何が含まれているのでしょうか?この研究以前は誰もそれを知りませんでした」と述べています。



分析の結果、ワサッチフロントにおける大気汚染の主要な原因は、風で砂漠などから飛ばされてくる鉱物性の粉じん、冬の逆転層によるスモッグ、そして花火であることが判明しました。研究チームによると、花火による汚染物質には高レベルのバリウムと銅が含まれており、スモッグにはヒ素・カドミウム・鉛・タリウムなどが含まれていたとのこと。

ワサッチフロントでは火事を防ぐため基本的に花火が禁止されていますが、大みそかである12月31日とアメリカの独立記念日に当たる7月4日のみ花火が許されています。この地域における粒子状物質中の金属汚染も、これと重なる1月と7月に増加したと報告されています。

花火による健康リスクを定量化することは困難ですが、カーリング氏は「金属は大気から土壌へ、水へ、そして食物へと移動するのが得意です。そして難分解性であるため消滅することはなく、システム内を循環し続けます」と警告しました。



研究チームは、ワサッチフロントに住む人々が個人的な花火を打ち上げるのを避け、花火を楽しむ場合は自治体が打ち上げるものを楽しむようにして、汚染のピーク時は屋外に出ない方がいいと主張しています。

カーリング氏は、政策立案者は今回の研究を基にして、使用する花火の種類や量を制限することができると指摘。「研究が事態の改善に役立つ法案につながるのは素晴らしいことです」とコメントしました。