【ジャニーズ史上最大のスキャンダル】解雇された同僚を横目に…滝沢秀明が乗り越えた「屍たち」の正体

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滝沢秀明「幻の監督作」

どうしても見たい映画がある。それは滝沢秀明監督の『プライベート・ライアン』だ。

いったい、どういうことか? 『プライベート・ライアン』は、’98年公開、スティーヴン・スピルバーグ監督作品である。第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦を舞台とした戦争映画だ。

なぜ、それが滝沢秀明? 監督? なのか。

『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)に滝沢がゲスト出演した時のこと(’17年6月10日放送)。相葉雅紀と仲のよかったエピソードを披露した。

「相葉ちゃんなんて、うちに住んでたからね」

そこで相葉を主演にした映像作品を撮っていたというのだ。その1本が映画『プライベート・ライアン』を模した「一人プライベート・ライアン」だった。

「戦争ものをベースにして、相葉ちゃんがずっと逃げまくって。最後にカメラを見つけて『プライベート・ライアン』って言う」

爆笑に包まれた。あくまで私的なジョークのような作品だったのかもしれない。いや、しかし……。『プライベート・ライアン』の日本公開時、滝沢は16歳だ。多感な青春期に見たこの映画に、何らかの影響を受けているのではないか?

私もまた公開時に映画館で見ている。冒頭のオマハ・ビーチでの戦闘シーンがド迫力! 現実の戦争とは、こんな感じか……と震えたものだ。けれど細部は忘れている。そこで26年ぶりにこの映画を見直してみることにした。

ジャニーズJr.」4人が解雇され

あらすじを紹介しよう。

’44年、第二次世界大戦末期、連合軍は北フランスのノルマンディーに上陸して、激しい戦闘の末にドイツ軍を掃討する。ジョン・ミラー大尉(トム・ハンクス)を隊長とする8人の小部隊は、特命を受けた。それはジェームズ・ライアン二等兵(マット・デイモン)を探し出せという。ライアン4兄弟の上3人は、同戦争で戦死した。ただ一人、生き残る末っ子を救出して、故郷の母の元へと帰還させよというのだ。

行方不明のライアンを探して、敵陣深くへと侵入するミラー部隊の男たち。たった一人の若い二等兵を救うため、8人もの精鋭兵士たちが命を懸けなければならない――なんとも不条理な戦争の物語だ。

ああ、そうか、と思う。これは「末っ子を救出する物語」だったのだな。滝沢秀明もまた、兄と姉のいる末っ子だった。そうして兄を亡くしている。KinKi Kidsのファンだった姉に感化され、ジャニーズ入りした弟であり、大河ドラマ『義経』で源頼朝の弟を演じた。柳田國男の『妹の力』ではないが、滝沢秀明は『弟の力』によって輝いている。

ハタと思い出した。かつて斬新な『プライベート・ライアン』評を読んだのだ。ボーイスラブ、略してBLというジャンルが存在する。男性同性愛をテーマとした小説や漫画のこと。「やおい」系と呼ばれる漫画同人誌では、男性タレントやスポーツ選手、アニメキャラ等の関係を妄想して描いている。

そうしたBLや「やおい」の視点によって記された『プライベート・ライアン』評だった。たった一人の若い兵士、ひ弱そうな末っ子の少年を救うため、屈強な8人の男たちが戦場で一人、また一人と銃弾に倒れ、爆死して、あるいは銃剣に刺され、血を流して死んでゆく。その様が「萌える」というのだ。

いやはや驚いた。そうか、これがボーイズラブ、やおい的感性というものか、と感心した。

しかし、それは戦場に限らないのではないか? たった一人の才能が生き残るため、周囲は死屍累々となる。ああ、なるほど、ジャニーズがそうだ……。

『FRIDAY』’99年1月29日号では〈ジャニーズJr.4人が溺れた“乱痴気パーティ”現場〉と題するスクープを報じた。当事15〜16歳のジャニーズJr.のメンバー4人が、飲酒、喫煙を伴う深夜パーティの現場写真を撮られた。さらには、「抱かれた女子短大生たちが衝撃の告白」と称して、その後の乱交状態まで詳細に報じられている。

警視庁が事情聴取に乗り出し、4人のメンバーは事務所をクビになった。

これはジャニーズ史に残る大スキャンダルだ。解雇された中には人気メンバーもいて、この事件がなければ、同年9月にデビューした嵐のメンバー構成も変わっていたのではないか、ともいわれる。

渋谷すばる、今井翼らも困難に直面

いや、滝沢秀明も当時16歳で、Jr.のリーダーだった。一説には滝沢も乱痴気パーティに参加していたのではないか、と疑われてもいる。もし、そうだったら、どうなっていたか?

実はその後、’02年に同じく『FRIDAY』に合コンでの滝沢の泥酔写真が載った。2年前、17歳の時のもの。未成年飲酒だ。なぜか不問に付されたが、タッキーがジャニーズをクビになっていてもおかしくはなかった。

解雇されたメンバーの一人は4年後、『マネーの虎』(日本テレビ系)に出演、ブランドショップを開業したいので254万円を出資してほしいとプレゼンした。アダルトビデオ会社の高橋がなり社長が承諾して「失敗したら体で返して。僕ねえ、元ジャニーズのAV男優が欲しい」と言ったのだ。

その後、元ジャニーズの彼がブランドショップで成功したという話は聞かない。ジャニーズ事務所を退所した者たち、いわゆる辞めジャニは、芸能界に残ってもその大半が活躍することなく消えてゆく。

「ジャニーズのタレントが一度脚光を浴びたのに、その後転落の一途をたどるのは」芸能のスキルが磨かれず、「つまりはジャニー喜多川のセンスで抜擢され、個人の趣味により興味がなくなると捨てられる構造」に問題がある、と『週刊文春』元編集長・木俣正剛は言う(『PRESIDNT Online』’23年11月6日)。

かつて「東の滝沢、西のすばる」と称された渋谷すばるは’18年末、ジャニーズを退所、音楽活動を続けるが、レーベルとの契約打ち切りや個人事務所の廃業が報じられている。タッキー&翼を解散して、同じく退所した今井翼は体調不良で長く活動を休止した(その後、復帰)。タッキーの近辺にいた人気者たちでさえ、芸能界の戦場で生き残ることは大変なようだ。

滝沢秀明という傑出した才能、ただ一人が輝くために、いったいどれほど数多くのジャニーズ兵士たちが消えていったことだろう。まさに『プライベート・タッキー』だ。

映画『プライベート・ライアン』のラストでは、終戦から50年後、年老いたかつてのライアン二等兵がノルマンディー米軍英霊墓地を訪れる。彼を救うために死んだ兵士の墓の前に立ち、敬礼するのだ。

もし、ジャニーズ英霊墓地が存在するならば……。滝沢秀明は、いったい誰の墓石に対して敬礼するだろう?

取材・文:中森明夫