実写版『ブラック・ジャック』で主演を務めた高橋一生

 6月30日に放送されたスペシャルドラマ『ブラック・ジャック』(テレビ朝日系)が、世帯平均視聴率10.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、2ケタ台をマークした。

 いわずとしれた手塚治虫の名作マンガを24年ぶりに実写ドラマ化、主演は高橋一生とあって、放送前から期待が集まっていたが、同じくらい不安の声があったのも事実だ。

「ブラック・ジャック(以下、BJ)役の高橋一生のビジュアル解禁時は、歓迎の声も多かったんです。物議をかもしたのは、BJのライバル的なキャラで、原作ファンからの人気も高い安楽死専門医、ドクター・キリコ。もともと男性キャラクターでしたが、演じたのは石橋静河で、女性キャラに改変されていたのです」(芸能ライター)

 キリコは安楽死の必要性を説き、生きることの重要性を説くBJとは相反するキャラクターだ。原作の設定では、元軍医で、苦しくても死ぬことのできない人たちを見てきた経験から、安楽死を専門に請け負うようになった人物。過去の実写版では、草刈正雄や森本レオが演じてきた。

「キリコは自殺を憎んでいるキャラクターです。原作でも『自殺の手伝いなどできるかっ』『おれの仕事は神聖なんだ!!』と発言しています。病気やケガが原因で、死ぬしかなくなった患者を安楽死させますが、助かる命は助けるのが、原作でのキリコのポリシー。ところが今回は、『病で顔面が変形したものの、身体的には元気そうなセレブ女性の自殺の手伝い』という展開になっていました。これに“解釈違い”を感じるファンも多かったようです」(マンガライター)

 この解釈違いには、Xでもドラマ放映時から沸騰していた。

《ドラマ版ドクターキリコ。最初は「安楽死は死以外に選択肢がない時だけ請け負う」って言ってたから、ちゃんと原作っぽくなってるなと思ったら、次のシーンでは簡単に安楽死(自殺)させようとしてたから困惑した》

《ドクター・キリコが自殺幇助するのだけは原作とかけ離れ過ぎてどうしても許せない》

《ブラックジャック大好きだから気になってたけど、これは絶対見ない。キリコは家族でも安楽死させようとしたけど、その前に治す方法探してるんだよ》

「さらに、まったく違う話からセリフだけを抜き出し、ドラマ内に散りばめたのも、ファンからの不信感を招いたようです。

 たとえば、原作に『おばあちゃん』というエピソードがあります。ケチで有名な母親と、それに困惑する息子の話です。じつは母がお金を貯めていたのは、幼いころの息子の病気を治すための治療費返済のためでした。脳出血で倒れた母を助けるために、息子が叫ぶ『一生かかってもどんなことをしても払います! きっと払いますとも!』に対するBJの『それを聞きたかった』。このやり取りは、原作ファンの間では名ゼリフとして浸透しているんです。

 ところが今回のドラマでは、このセリフが別のエピソードのなかで登場しました。名ゼリフは、そこに至るまでの過程が大事であり、エピソード全体の流れがあります。一部だけ切り取って使うことに、違和感を覚えた原作ファンは多かったようです」(同前)

 X上でも、名ゼリフの“つまみ食い”にはこんな辛辣な意見が……。

《それを聞きたかったって名台詞がでるシーンのエピソード、死ぬ程泣けるとこなのにどうしてこうなった…》

《「それが聞きたかった」って作中屈指の名台詞、ここで使うもんじゃなくない?》

「全体として、ファンが喜ぶ名ゼリフを出しておけば喜ぶだろう、という制作側の意図が透けて見えるように感じた人が多かったようです。ドラマの公式サイトでは《原作から厳選した有名エピソードを凝縮し、その真髄を掘り下げていきます》としていましたが、単なるいいとこ取りのダイジェストと受け取られても仕方ありません」(同前)

 視聴率的には好評だったことで、シリーズ化の期待も高まっているとの話もある本作。ファンが本当に納得できるパート2は実現するのだろうか――。