高齢者の事故が増加傾向に! 国交省や警察が「ただちに」動くべき「2つの“緊急”対策」とは

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「年々減少」だった交通事故死傷者数が「増加傾向」に!

 1990年代半ばから30年以上、順調に減ってきた交通事故死傷者数ながら、2023年で増加に転じた。事故の状況を詳しく調べてみると、増加分は加害者も被害者も高齢者である。
 
 人口の比率を考えると、この先もこの状況は続くだろう。急務といえる高齢者の事故対策について考察する。

近年増加傾向にある交差点での事故を未然に防ぐには[イメージ画像:AdobeStock]

 何歳から高齢者とするかは異論もあるところだろうが、日本自動車工業会が調べた10万人あたりの事故件数からすれば、75〜79歳で74歳以下より30%増。80〜84歳になると74歳以下の2倍。85歳以上は3倍になる。

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 我が国の人口ピラミッドを見ながら考えると、団塊の世代(第一次ベビーブーム)と呼ばれる人口割合の多い人たちが、事故率の高くなる75歳以上になり始めた。

 2023年の死傷事故件数は、2022年比2.4%増。日本自動車工業会の事故件数データと併せて考えると、さもありなんということになります。

 本題はここから。団塊の世代の方々は免許保有率が非常に高い。そして皆さんハンドルを握る。

 絶対的な人口も多いため、おそらく死傷事故は増える傾向になると思う。

 参考までに書いておくと、事故の原因はドライビングミスに限らない。自転車運転中や車道横断中(横断歩道以外を渡って被害者になるケースも高齢者で顕著)も含む。

 反応時間の長い高齢ドライバーが、左右の確認をせず車道を渡る高齢歩行者をはねる事案も多い。もはや社会の問題として考えるべきだ。

 このままだと、赤信号を見落とした高齢ドライバーが横断歩道に飛び込むという悲惨な事故が増えていくことだろう。

 残念なことに、今のところ警察も国交省も目立った動きを見せていない。

 さて、どうすればいいか。しかし「ただちに免許を取り上げろ」ということにはなり得ない。皆さん生活だってあるし、公共の交通機関のない場所ではクルマが必需品だ。さりとて放置も出来ない。

 有効な方策はふたつある。

 ひとつは、赤信号や一時停止標識を検知しての減速制御を容認することだと思う。現在、なぜかこれを国交省が認めていないようだ。

 信号や一時停止標識を見ての停止制御は、自動運転技術の第一歩。いわゆる一丁目一番地の技術であり、どこのメーカーもノウハウを持っている。しかも最近のクルマはADASにカメラを持っているため、信号などの認識はすぐにでも可能。

 すでにトヨタやスバルなど、市販モデルで信号を見てのコーション(注意表示)をメーターなどに出している。

 急ブレーキ制御までは入れないにしろ、アクセル踏んでいても減速するくらいのことはやって良いだろう。というか、やれます。

 この制御さえ導入すれば、歩行者のいる交差点にノーブレーキで突っ込むようなことはなくなる。アクセルとブレーキの踏み間違い防止制御も加え、高齢者用の「ADAS(先進運転支援機能)」と位置づければいい。

高齢者を救うもうひとつの「有効策」とは

 ここから先、もうひとつは警察の仕事だ。

 現在進行形で、少なからぬ高齢者がADAS無しのクルマか、付いていても性能の低いタイプに乗っている。

 2020年以前のクルマで、歩行者や夜間の制御が出来るのはスバルやボルボなど限られたメーカーのみ。

 事故を大幅に減らせると言われているADASさえ付いていないクルマに乗っている高齢者が多いということです。事故率が高いドライバーなのに、安全装備無しというのは考えものだ。

悲惨な交通事故を防ぐためには、先進運転支援機能が備わったクルマの普及が急務といえます[画像はイメージです]

 ところが高齢の方に乗り換えをすすめると「お金がない」とか「もう何年も乗らないからいい」と言う。事故率が高いということを理解してもらえないワケだ。これはもう自分の親であっても言うことを聞いてくれない。

 筆者(自動車評論家 国沢 光宏)の場合、ADAS付きのマニュアル車を購入し乗ってもらっているけれど、金銭的な余裕なければ難しい。かといって、事故でも起こされたら悲惨です。やはり警察が動いてくれないといかんともしがたい。

 例えば免許の更新時、75歳以上は乗車条件として高性能ADAS付きのクルマに限定すべきだ。

 買い換える余裕がない、と言っても悲惨な事故を防ぐ方にチカラを入れるべき。購入する余裕が無いのなら、リースにすればいいだろう。

 幸い軽自動車なら、ADASをフル装備しても130万円あれば作れる。非営利の社会事業にすることで1ヶ月2万円くらいの料金設定は可能だと思う。

 いずれにしろ、対応は一刻を争う。悲惨な事故が増える前に速やかに動いて頂きたいと強く思う。

 技術的に出来るのだけれど、やらないまま事故が起きたら、国交省と警察に責任負担をさせても良いとさえ考えるほど、筆者は強い危機感を覚えます。