「中古の教習車」一体だれが買う? 特殊な「助手席ブレーキ」「補助ミラー」はどうするの? “引退した教習車”の意外な事実とは?

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「中古の教習車って誰が買う?」意外な事実とは?

 教習所で使われていた「教習車」が、ときどき中古車市場に流通していることがあります。
 
「中古の教習車」を誰が購入するのか気になりますが、助手席に設置された「補助ブレーキ」など教習車専用装備は“そのまま”なのでしょうか。
 
 中古の教習車の行方について、実は意外な事実が判明しました。

中古の教習車の気になる行方とは?

 中古の教習車は、中古車市場で毎月およそ30〜60台は流通しているようですが、かなり少ないといえるでしょう。

【画像】こうなってるの!? これが「教習車の指導員専用装備」です! 画像を見る(30枚)

 車種は、2017年まで販売されていたトヨタ「コンフォート」や現在の教習車の主力となっているマツダ「MAZDA 2」の教習専用車、一部ではトヨタ「プリウス(3代目)」の教習車なども流通しています。

 教習車は専用装備として、助手席に座った教習指導員が使用する「補助ブレーキ」や「補助ミラー」類などを装備。原則として新車の教習専用車は一般には販売されていません。

 教習車としての使用期間は7〜8年とも言われ、日々の教習で使われることから走行距離もかなり多くなるのですが、一方で、定期に整備がおこなわれていることから、中古車であっても年式や走行距離の割に車両の状態は悪くないといえるでしょう。

 筆者(金田ケイスケ)が、以前、中古の教習車の行方を調査したとき、特殊車両専門の業者が引き取ることが多いという情報をつかんだのですが、最近は事情が変わっているようです。

 このところ、中古車市場で中古の教習車の流通量が全国的に少ない理由として、海外の自動車ブローカーによって輸出されているというのです。

 都内の自動車販売店オーナーによると、教習車は専用装備が付いているため、普通の中古車販売店ではまず取り扱われることがありません。そこで購入するのが、海外の自動車販売業者だといいます。

「以前はロシアなどの業者が多かった印象がありますが、最近はアジア圏のブローカーが増えています。

 一部のアジアでは日本車の需要が非常に高く、業者専門のオークションでも安い車両ほど海外ブローカーが落札していくことが増えているようです」(自動車販売店オーナー)

 今の為替レートやインバウンド情勢を考慮すれば、日本で中古車を買うのは安いといい、しかもほとんどのクルマは状態が良くすぐに乗れる状態です。

 しかし、教習車ならではの補助ブレーキなどが装着されており、一体どうするのでしょうか。

「彼らは、関税の高い自動車の状態で輸出はしていません。オークションで落札後は自分たちの工場で、全部バラバラに分解し、関税が低い『自動車用部品』として輸出して現地で組み立てるそうです」(自動車販売店オーナー)

 アジア圏の国々は海外からの大型機械(自動車も含む)にはかなりの関税が加算されます。

 タイでは関税率200%となっており、例えばオークションで30万円の値段で落札した中古車をそのまま現地で乗るためには90万円(元値+200%の関税)を払う必要があります。

 そこでクルマをバラして輸出するのですが、驚かされるのはバラすだけでなく、現地で組み立てることができる技術力の高さです。

「全バラして現地で組み直すくらい朝飯前なのだそうです。右ハンドル車を輸出し、組み立てる段階で左ハンドル車にしてしまうことも可能なほどの技術力を持っているようです。

 一体どう組み立てているのかはよくわかりませんが、それだけの技術があれば、補助ブレーキなど教習車の専用装備などを取り外すのもカンタンなのでしょう」(自動車販売店オーナー)

※ ※ ※

 海外に輸出される日本車は、米国の「25年ルール」に適合したスポーツカーばかりではありません。

 アジアの国では日本で役目を終えた教習車を改造し、大切に乗っているようです。

 ちなみに部品として輸出される場合でもきちんと関税を支払っているとのこと。飽くなき商売根性には感心するばかりです。