2018年にキャロリーナ ヘレラ(Carolina Herrera)のクリエイティブディレクターに就任する前、ウェス・ゴードン氏はファッション名門校であるセントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)に通ったり自分のブランドを運営したりして、ハイファッションの世界に浸り切っていた。卒業後、2009年に自身の名を冠したブランドを立ち上げ、現代的な感性とタイムレスな優雅さを融合させた、スマートかつ躍動感にあふれた美学で瞬く間に注目を集めることとなった。ゴードン氏はキャロリーナ ヘレラの役職に就任して以来、創業者であるヘレラ氏の華やかで洗練されたレガシーを尊重しながらも、新鮮で活気に満ちた精神をブランドに吹き込んだ人物として認められている。ゴードン氏のコレクションは、ダイナミックな色使いや細部にまでこだわられた職人技、遊び心がありながらも洗練された美学で高く評価されている。同氏のクリエイティブな指導のもと、キャロリーナ ヘレラは世界中の人々を魅了し続け、新規市場に進出し、eコマースのリーチも拡大している。同ブランドは今後数カ月のうちに複数の店舗をオープンする予定で、最近ではパームビーチ店がオープンした。キャロリーナ ヘレラはスペインのコングロマリットであるプーチ(Puig)の傘下にあり、プーチはラバンヌ(Rabanne)、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)、ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)も所有している。今回のGlossyポッドキャストでは、プーチ傘下のキャロリーナ ヘレラについて、ヘレラ氏の後任としてのゴードン氏の挑戦、そして今年のメットガラ*関連の計画について語られた。以下の対談のハイライトは、わかりやすくするために若干編集を行っている。*この記事の原文は2024年5月1日に掲載された。

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ファッションのビジネス面とクリエイティブ面の融合

「ビジネス面とクリエイティブ面というのは別のものではない。結局のところデザイナーは、女性が一目惚れして購入し、自分のものにして、一生着たいと思うようなものを作って売っているわけで、それは完全な商業行為だ。ビジネスと顧客について理解すればするほど、自分の仕事をうまくやることができる。デザイナーが耳を塞いで、その場にいる誰かがセールスやビジネスについて話していることを耳に入れないようにするというのは時代遅れだ。私にとってはその逆で、(他人の話を聞くことは)自分のしていることについて教えてくれるものだ。コレクションを成功させたいし、無駄は出したくない。私はうまく機能し、ビジネスを成長させ、女性が胸を躍らせて購入するような商品を作りたいのだ。だからデータを参照したり、店舗に直接足を運んだり、話を聞いたり、そのためにできることならなんでもして、それが自分を向上させてくれている」。

ブランド創業者とその歴史への敬意

「自分のスタイルを見つけるのに少し時間がかかった。これは今でも意識していることだ。なぜなら、キャロリーナが(私が手がけた)コレクションを初めて目にするのは、ほかの人々と同じときだから。コレクションには彼女の名が付いているのだから、彼女に満足してもらいたいし、彼女のレガシーが大切に扱われているのを知って安心してもらいたい。しかしただ単に彼女に敬意を表して、彼女がしたことを再現するのが私の仕事ではないということも学んだ。それは重要ではない。重要なのはこのブランドに最大の敬意を払い、ブランドと顧客を理解することだ。私の仕事というのは物事に自分の視点を取り入れることであり、それには時間を要する。最初は難しかったが、シーズンが経つにつれ、次第に自分自身の声を見つけていくことができた」。

ヘレラの顧客について

「特別な日のための服をデザインするのではなく、どんな瞬間でも特別な日に変えられるような服を作ろうとしている。当社の顧客について実に興味深いのは、いつも楽観的な点だ。また、外見や服装、食卓のセッティング、さらには仕事に至るまで、何に対しても努力を惜しまない。多くの人々が努力をしなくなってしまったこの世界で、ヘレラは努力する人々に寄り添っている」。

百貨店とその顧客層

「当社の小売パートナーは、ニーマン・マーカス・グループ(Neiman Marcus Group)、バーグドルフ(Bergdorf)、ノードストローム(Nordstrom)、サックス(Saks)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)だ。これらの百貨店は1世紀にわたり、米国のラグジュアリー文化を定義し、形作ってきた。我々はこのような企業が困難に直面していることをニュースで知っている。しかし依然として、百貨店には素晴らしい顧客や販売員、マネージャーがいる。百貨店は今でも非常に重要な存在だ。だが現在はそれだけではない。当社は独自のeコマースを運営し、店舗ネットワークを拡大している。そして素晴らしいビジネスを展開している専門店も数多く存在する。結局のところ最高のパートナーとは、顧客と良好な関係を築いてきた店だ。それは街の小さなお店かもしれないし、バーグドルフかもしれない」。

プーチのオーナーシップについて

「(プーチには)最高に親切で素晴らしい人たちがいて、非常に協力的だ。自社のメゾンを愛しており、そのブランドに対して心から敬意を抱いている。プーチのサポートのおかげで、多くの点でビジネスとその成長がずっとスムーズになっているのは間違いない。自分のコレクションを作っていた頃は日々の大半の時間は『会社に明日はあるのだろうか?』という不安にかられていたが、その不安が取り除かれると、クリエイティブに考えて最高の仕事ができるようになる」。

2024年のメットガラ

「メットガラに招待されて、ヘレラにドレスを買い求めに来る女性たちのために、メットガラ用のドレスを多く用意している。これは毎年のことだ。しかしそれに加え、メットガラについてよく知っている人ならわかるだろうが、デザイナーは同伴者をひとり連れていくことができる。そのため現在、同伴者のための初のメットガラドレスを制作している。とてもエキサイティングなドレスだ」。[原文:Carolina Herrera’s Wes Gordon: Department stores aren’t the only important sales channel anymore]ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:都築成果)