窓ガラス無い衝撃の「スゴい軽トラ」展示、なぜ? 屋根が潰れた状態で24年も… 被害伝えるキャリイとは
2000年の有珠山噴火で被災したスズキ「キャリイ」
クルマの展示と言えば、ピカピカな状態で置かれているのが一般的です。
一方で北海道のある場所では、スズキの軽トラック「キャリイ」がボロボロになった状態のままで展示されています。
北海道の南部には、約11万年前に誕生した洞爺湖と、その南側にいまなお活動する火山の有珠山があります。
【画像】これはヒドい…「無惨な姿の軽トラック」画像を見る!(30枚以上)
同エリアに建つ洞爺湖ビジターセンターでは、こうした洞爺湖の自然について情報を提供しています。
そのなかでも、有珠山の噴火について学べるのが火山科学館です。
最近になって有珠山が噴火したのは、2000年3月31日のことでした。そして、その被災の様子を伝えるべく、1台の軽トラックが火山科学館に展示されています。
キャリイといえば、60年にわたり、とくに一次産業の運送に活躍してきたクルマです。
展示されているキャリイは、ルックスから推察すると1999年発売の10代目モデル。ということは、おそらく新車のうちに被害に遭ったのでしょう。
まだ新しかった車体が、土砂にまみれ、潰れ、噴火当時のままの姿をさらしています。
そして、現在も展示されているということは、被災後に乗られることはなかったということです。
有珠山は、2000年までに20年から30年の周期で噴火をくり返していた火山です。
毎回その様子は異なりますが、2000年時は砂嵐のような火山灰のほか、熱泥流と地殻変動による段差を起こし、社会インフラにダメージを与えました。
たとえば、延べ3065戸が停電、5085戸が断水し、一部地域では下水処理ができなくなりました。
また、多くの幹線道路が通行止めされ、室蘭本線の線路が曲がるなど鉄道も運休しています。
小中学校、高校などの施設も、亀裂が入ったり泥が流れ込んだりするような被害を受けました。
なお、2000年の噴火では、最大で1万5815人が避難指示、勧告の対象になりましたが、噴火前に対応できたことなどから人的被害はありませんでした。
クルマのガラスが飛び散る!噴火の威力とは
そして今回のキャリイが展示されている火山科学館は、洞爺湖町が運営をしており、1977年や2000年時の噴火を中心にして、有珠山の火山活動を紹介する施設です。
施設内では、3面マルチスクリーンと迫力の音響で噴火を映し出すシアター、噴火の体験シミュレーター、そして噴石や被災物の実物展示などが展開されており、人と火山との関わりが学べます。
たとえば、展示コーナーでは噴火によって曲がってしまった線路などもみられますが、キャリイの場合はなぜ展示されるようになったのでしょうか。
その経緯について、火山科学館の担当者は次のように話します。
「洞爺湖温泉街に停車していたところを噴石や土石流が直撃して被災した車両のうちの1台で、元の所有者が持ち込んで寄贈した形になります。
当時は被災した車両を補修して使用する方も多くいらっしゃいましたが、寄贈された車両は比較的火口に近いところで被災したため補修は不可能だと判断されたのではないでしょうか」
展示されているキャリイは、ドアが空き、屋根がひしゃげ、右側ライトが外れ落ちています。
白い車体が火山灰や泥にまみれており、その様子は遠くから見ても「うわ」と声がでるほど衝撃的です。
近寄ってみると、窓ガラスが噴石で飛び散り、その空いた窓から運転席に土砂がなだれ込んでいることがわかります。
荷台は歪み、その中には落ちてきた噴石がそのまま残っています。
こうした姿は噴火の威力を象徴していることもあり、見学者のなかにはキャリイの前で記念撮影する人もいるといいます。
また、実物を見ることで被災の結果を実感する人が多いようです。
さらに、SNSでもキャリイに驚く声がみられます。
X(旧Twitter)では、「昨日被災したかのような生生しさで直近に観察できる」というコメントとともにキャリイの写真が投稿されており、「怖い」といった感想が寄せられています。
ほかにも、ネット上では噴火の恐ろしさが学べるという声が多くみられます。
たとえば、「軽トラックを見て噴火の威力を感じさせられた」「最も驚くべきものは被災地の自動車や木」という感想がみられます。
また、火山科学館を訪れて初めて有珠山の噴火の様子がわかったという人もいるようです。
一般的に、地震や津波と比べると、噴火の被害についてはあまり語られていません。
そうしたなかで、「洞爺湖へ観光する際は必ず火山科学館へ行くとよい」と提案する人もみられます。
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洞爺湖は有珠山から温水が湧き出ており、人気の温泉リゾート地でもあります。
これから夏休みなどに訪れ、キャリイの姿に驚く人は続出するかもしれません。