"子持ち様"論争過熱、人手不足で「しわ寄せ誰に?」傷つく労働者たちの切実な声…企業や社会こそ意識改革を
子どものいる親が制度的にも環境的にも優遇されているとして、皮肉的に「子持ち様」という呼ばれ方をすることがあります。
まだ幼い子どもを持つ親の働き方をめぐり、職場の「子持ち様」に対する議論がSNS上でこれまで繰り返されてきたところです。
弁護士ドットコムニュースが「子持ち様」をめぐる意見や体験談をLINEで募集したところ、さまざまな立場から多くの情報が寄せられました。
SNS上では、子なしの立場から子ありに対する批判が目立つものの、寄せられた意見では、少なくとも「子なし」から「子あり」に対して一方的に不満が生じているわけではありませんでした。
子を持つ人の間でも現在の働き方に思い悩む様が浮きぼりになった形です。どれも切実な思いが反映されており、社会や企業に変化を求める声も少なくありませんでした。届いた体験談を紹介します。
(※情報提供者の年齢、性別、職業などの情報は、記載があれば明記している)
●子を持つ人からの意見「子ありであることを卑下するのに疲れた」
・職場や同僚の理解がないという意見
「仕事より子どもを優先する施設管理者に、仕事の希望休を子どもの行事で休もうとしたら、子どもより仕事優先にして下さいと嫌味言われました」(子あり・女性・42歳・介護福祉士・福岡)
「子どもを産む前、育休取るなら、退職してと上司に言われたり、結構思い詰めました」(子あり・女性・50代・大手金融・秋田)
「一番下の子が0歳8カ月ぐらいから家庭の事情で働きだしたのですが、まだ月齢が小さいだけに体調を崩しがちで、お休みをいただくことがちょくちょくありました。
子どもの体調不良でお休みいただいた翌日、60代パートアルバイトの御局様に、他の職員の前で面と向かって『むかつく!!』と言われました。
お子さんもいらっしゃり子育ての経験もある方だったのですが、まさか面と向かってそんな事を言われるとは思わずビックリしてしまいました」(子あり・女性・30代・派遣社員・規模は30〜40人程度・奈良)
・子育てを終えた「子あり」看護師から厳しい意見
「本人の子持ち様意識は高いと思いますよ。子育てがひと段落したものからすれば、厚かましい限りだと思います。女性が多い分、急に仕事休むということの犠牲は誰に行ってるのか」(子あり・看護師)
・子ありが自らを卑下することに疲れる
「子ありが、子ありを卑下したり比較することに疲れます。祖父母の応援の有無で、かなり労働背景は変わるはずなのに、Aさんは子どもがいても定時よりも早く来てるのに、Bさんも子どもいるのに遅刻や早退も多い、という具合です。
子の罹患で休んでも、溜まった仕事はそのままなので、休日出勤します。育児介護がない職員へ負担がいくことがないように、こちらも気を遣います」(子あり・女性・40代・400名規模の公益法人職員・千葉)
「3人子どもがいたオヤジです。女の子を筆頭にした2人は男の子。今春次男が大学卒業して就職して、一応子育て終了しました。育児休暇なんてない時代の子育て。妻におんぶに抱っこ。私はひたすら家計を支えるために、残業代稼ぎながら仕事に明け暮れました。
結局は家族の看病や介護は、言ってしまえば自己都合なので、どうしても、周囲の人々から、休んだ穴埋めに対する、理解は得られないでしょう。得られると思うことが、ムリがあるんです。どこも、ギリギリの工数で仕事しているんだから」(子あり・男性)
●子あり労働者に対する同僚の意見「このままでは日本社会が終わる」
・不妊治療で休職の先輩をフォローしたら昇進した
「私は結婚していますがまだ子どもはいません。不妊治療のため先輩が3カ月間休職しましたが、職場もフォローしてくれた上、手がける仕事の範囲が増え、実績を高く評価されました。そのおかげで昇進しました。
私の会社は社内制度もかなり柔軟です。子持ち様なんて思ったことありません。一度も困ったことはありません。そうでない会社に勤めている人は大変そうだなと、ニュースを見ていて思います」(子なし)
・子持ちの同僚を助けたいが、人手不足で自分も限界…
「人手不足の職場。気持ち良く、子育て中の方の手助けをしたいとは思いますが、50代にもなると体力的にも限界があり、辛い。当事者も辛いとは思いますが、フォローを求められる方も辛いし、事情があるのです。女性に限らず、人を大事にする社会、会社になって、バックアップして。このままでは日本社会が終わりそうです」(50代)
・部署にいる子持ち様への批判
「前の部署は、子持ち様のやりたい放題でした。保育園の送迎のために、シフト勤務をして。早く帰るために、早朝出社しているといいつつ、実際は早く来ても定時になり、みんなが出社するまでは、優雅にネットサーフィンして、完全に自由時間でした」(IT系大手)
「2004年卒業の氷河期の谷底世代です。この時代に恵まれなかった状況で、結婚して、子どもまでいる恵まれている人のケツをなぜ拭う気になれますか?
子持ち様のケアは、35歳以下まで!(妊活支援が43歳までなら、43歳とか)とか、既婚者のみ!とか、制限を設けて欲しいです。
もしくは、介護休業手当の条件を緩和してほしい。育児より介護の方が果てしなく続きます。93日の休業では足りません」(子なし・女性・42歳・事務・東京)
●「子持ちの先生」同士でもギスギスした雰囲気
・子の世話で休んだ教師を無視した教師も子持ちだった
「まだ小さいお子さんが熱を出して、若い新任の先生が休まざるを得ず、業務を同じ学年の先生がフォローしなくてはならないことがありました。
その先生は休み明けに『ありがとうございました』と学年団に声をかけましたが、みんなシラ〜っとした態度で挨拶を無視していました。『子どもを仕事の言い訳に使うな』と陰で文句を言っていた先生もいます。
だけど、そう発言した先生も2人の小さいお子さんがおり、しばしば遅刻をしていたので、他の先生がサポートしていました。
どうして同じ子持ちという立場なのに優しくなれないんだろう。『子持ち様』という言葉は単にいじめの手段ではないかと思ってしまいます。
子持ち様と言わせてしまうような人手不足となる環境が悪いのは勿論ですが、環境がよかったとしても多分文句を言われるのだろうと思います」(女性・30代・中学校教員・埼玉)
●「働く人」ではなく、「社会や職場」が変わるべき
・子どもに関係なく、休みたいときに休めて、いろんな働き方ができる環境を
「子どもがいない時は保護者から『子どもいないくせに』と罵られ、県や管理職からは 『子どもをつくるな』とのハラスメントを受け…。
子どもを持てば管理職からは『迷惑だ』、同僚からは舌打ちや無視など。子どもをめぐっては周りから辛くあたられるばかり。
もう少し優しい世界に住みたいし、そんな世界で自分の子どもは働いてほしいなと願う日々です。子どもを持つ持たないではなく、休みたいときに休めたり、色んな働き方ができる環境や制度が早く整って、心にゆとりが持てることが求められているのかな?と思います」(子あり・女性・20代・教師・福岡)
「子持ちに対する『子どもがいない世帯の気持ち』もわかりますが、それは、『社会が上手く対応していないだけ』の問題。個々の人々社員には、責任も問題もありません」(無記載)
・決まった時間内に仕事をやり切る人が評価されて欲しい
「こどもが熱で休むという事は、こどもが小さければ小さいほど頻度が多い。私は勝手に『迷惑をお掛けします』と思ってたけど、会社側や周りの社員やパートさんは全く逆で、『お子さん優先でいいですよ』と言ってくれたのが25年程前のパートデビューした会社。大手企業グループの会社はすでに就業規則も整っており社員の復帰もしやすかった。
求められるモノって、やはり企業の風土というか、子ども優先が普通でしょっていう空気なんじゃないかなー。
もうタイパの時代。決まった時間内に仕事をやり切る人が評価されていいんでは? 少子化対策も産みやすさから始めないと人類増えないと思う。子持ち様って本当に嫌味な言い方だなぁ」(子あり・女性・52歳・パート事務員、20人未満の中小企業・大阪)
・怒りは休む人でなく、負担のしわ寄せをしてくる組織に向けるべき
「『子持ち様』…なんていやらしい言い方なんでしょう。私が子育てしていた時から一世代過ぎようというのに未だに?!と思います。職場で子どものために休みを取る同僚を苦苦しく思う人にも考えてもらいたいです。
その怒りは休む人でなく、負担のしわ寄せをしてくる組織に向けるべきだと。子育てだけでなく、介護、看護、自身の体調変化で休みたい時に休める社会を作る必要があると思います」(子あり・無記載)