昨夏、当時2年生ながら甲子園のマウンドに立った梅沢(C)日刊ゲンダイ

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【持丸修一 76歳名将の高校野球論】

【持丸監督】むやみに気を使い、おだててその気にさせるだけが指導ではない

 さる21日に行われた春季千葉大会の木更津総合との初戦は延長十回、タイブレークの末に3-1で競り勝つことができました。

 最速147キロの右腕・梅沢翔大(3年)がよく踏ん張った。初回に捕逸も絡んで1点先制されたものの、そこから最後まで無失点に抑えてくれた。冬の間にテイクバックを小さくするなど修正した新フォームをモノにしたようです。力感なく投げ込めていて、今までの中で一番いい投球でした。

 梅沢はプロ志望ということもあって、普段から少しでもうまくなろうという気概を強く感じさせてくれます。例えば、ひとつ提案やアドバイスをすると、納得するまで10個も20個も質問が返ってきて、「これでいいのか」と確認を求めてくる。

 いい意味で厄介ですよ(笑)。適当な指示なんてできないし、常に知識を更新して根拠のある指導をしなくてはいけませんからね。同時に、尋ねられてハッとさせられることや、新しい視点が生まれることもある。選手たちと試行錯誤しながら過ごす日々はたまらなく楽しい。先日、76歳を迎えましたが、この年になってもグラウンドに立ち続けている理由です。

 先ほど「知識の更新」と言いましたが……。

 投手の練習メニューで足腰を鍛えるために最もポピュラーなのが走り込みですが、近年はその効果が疑問視され始めています。おそらく、パドレスで活躍するダルビッシュ選手の過去の発言がきっかけでしょう。

 時代が変わり、労力に見合わない、痩せて必要な筋肉まで落ちてしまう、などなどさまざまな意見が出てきています。この考え方は高校野球界にも浸透しつつあり、以前と比べると高校生の走り込みの量は減っている印象です。

 それでも私は走り込みを重視した指導法を堅持したい。経験を重ねたプロの一流選手ならば、走り込みをせずとも別の方法でレベルアップすることが可能かもしれません。それは、自分の体のことを知り尽くしているからで、だからこそ一流になりえたとも言えます。

 では、高校生レベルではどうでしょうか。長い指導歴の中で、理屈抜きで有用だと思っていることもある。新しいことも取り入れますが、何でも時代に合わせることが正解ではないはずです。

(持丸修一/専修大松戸 野球部監督)

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 日刊ゲンダイでは専大松戸の持丸修一監督と元横浜高校野球部部長の小倉清一郎氏のコラムを毎週交互に連載している。

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