「不適切にもほどがある!」キヨシ役で注目の15歳・坂元愛登、昭和の距離感が心地良く「今戻ってもやっていける」
現在放送中のTBS系金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」(毎週金曜よる10:00〜)で、令和から昭和61年(1986年)にタイムスリップしてくる中学生・向坂キヨシを演じている坂元愛登。現在15歳というリアル中学生の立場で本作に参加した坂元は、脚本家の宮藤官九郎がコミカルに描く昭和の“不適切”な文化をどう感じたのだろうか。
ビデオデッキを初めて見ました!
2009年生まれの坂元は、今年の2月に15歳になったばかり。令和の中学生活を送っている少年だ。そんな彼がドラマで演じるキヨシは、ひょんなことから昭和61年にタイムスリップし、短ラン、ボンタン、スカート丈が長い不良に驚きを覚える。さらに昭和にやってきて最初に出会った不良少女・純子(河合優実)に一目惚れ。さらにさらに地上波テレビで裸の女性が平気で出ている世界にあっという間に魅了された。
宮藤が描く破天荒なストーリーに「一人一人のキャラクターがすごく魅力的で、とにかく台本のページをめくるのが楽しくて、声を出して笑ってしまうぐらい」と夢中になったというと「僕としてもキヨシとしても、昭和のいい意味で大雑把な感じとか、思ったことを自由に発言する制限のない環境というのが、心地よいなと感じました」と新鮮な世界にスッと入り込めた。
坂元自身もリーゼントに短ラン、ボンタン姿で昭和の時代を謳歌する。「最初は『こんな格好をしていたんだ』ってすごく違和感があったんです。でもだんだん慣れてきて、いまでは衣装を着るとパチッとキヨシに切り替わるようになってきました」と撮影を楽しんでいるという。
さらに細部にまでこだわったセットも、坂元の好奇心をくすぐる一つの要素になっている。「ビデオデッキというものを初めて見ました。ウォークマンとかもぜんぜん知らなかった」と昭和時代を代表する家電に驚きを見せたというと「いまでもビデオデッキは使い方がわからないのですが、(主演の)阿部(サダヲ)さんがいろいろ教えてくださるので、すごく楽しいです」と笑顔を見せる。
近くて濃い昭和の人間関係
ドラマのオンエアがスタートすると、大きな反響が巻き起こった本作。坂元にもさまざまな感想が寄せられたという。なかでも印象的だったというのが、キヨシが昭和の時代に残る決断をした際「テレビでおっぱいが観たいんだ! 地上波でおっぱいが観たいんだ!」と絶叫するシーンだ。
坂元は「あのシーンは、学校の友達にめちゃめちゃ真似されました」と笑うと「キヨシのことをいろいろ話題にしてくれて。すごくありがたいですね」とドラマの影響力の大きさに驚いているという。
ドラマによって疑似体験した昭和。坂元は「昭和はいまより人との距離が近い気がしました」と気づいた点に触れると「悩みに対して親身になってくれるのは、昭和も令和も変わらないと思うのですが、いまはやっぱりルールとか制限などの縛りがあるので、ある一定の距離ができてしまいますよね。その意味で、昭和の人間関係って近くて濃い。僕は昭和の距離感が好きです」と語っていた。
スマホやSNSがない時代への憧れも
俳優としても本作に参加できたことは、坂元にとって大きな気づきとなった。「第4話で、サカエ(吉田羊)さんと純子さんとキヨシの3人のシーンがあったんです。そこでキヨシが、(昭和の)自分のお父さんに告白されたことをサカエさんに打ち明けるのですが、吉田さんも河合さんもどんどん乗ってきて、アドリブをバンバン入れてきたんです。我慢ができなくて笑っちゃうぐらい。そのとき、コメディってここまでぶっ飛んでやる方が面白いんだと、勉強になりました」。
坂元も「最初のころはやっぱり怖くて何もできなかったのですが、現場の雰囲気や勢いを大切にする共演者の方たちを見て、撮影が進むに連れて少しずつセリフ回しを工夫したり、動きを付け加えてみたり、いろいろ挑戦するようになりました」と変化を述べると、今後放送される回では、果敢にチャレンジしたシーンもあるという。
主演の阿部サダヲはもちろん、吉田や河合、ムッチ先輩役の磯村勇斗ら演技派に囲まれた現場。坂元は「本当に毎日勉強ですし、先輩方の現場での立ち振る舞いを含めて、間の取り方など本当に刺激を受けています」と目を輝かせると「終盤にかけて、昭和に来てしまったキヨシが令和に戻るのか……。もし戻ったなら時代がどう変わっているのか、はたまた変わっていないのか。そんなところを楽しみにしてください」と見どころを語る。
テクノロジーの変化で昭和から大きく環境は変わったが、坂元は「多分いま、昭和に戻ってもやっていけると思います」と笑顔。「どうしても少し暇になるとスマホを触ってしまうのですが、そういったものがなかった昭和ではどう過ごしたかなって考える時があります。スマホやインターネットって便利ですが、なかった時代の過ごし方にも興味があるんです!」とスマホやインターネットに頼らない生活への憧れもあると語っていた。(取材・文・撮影:磯部正和)
スタイリスト:八木啓紀/ヘアメイク:小池裕輔