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運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。

日本人は世界一座りっぱなし

 シドニー大学が行った研究によると、日本は世界20カ国のうち「座りっぱなしの国ワースト1」の1つに入っています(※1)。

 日本の成人は1日平均約7時間、多い人だと10時間も座っています。

座りっぱなしは死亡リスクを5割高める

 100万人の男女を最大18年も観察したノルウェーオスロの研究所などによる調査によると「座る時間が長いと死亡リスクが5割高まる」ことがわかっています(※2)。

 またアメリカにも同様の報告が存在します(※3)。

 これによると、1日6時間以上座る人は3時間未満の人に比べて、循環器疾患、がん、糖尿病、腎臓病、自殺、慢性閉塞性肺疾患、誤嚥性肺炎、肝疾患、消化性潰瘍などの消化器疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経疾患、筋骨格疾患による死亡リスクが高かったことがわかりました。

1日3時間以上座ったままでいてはいけない

 ただ、高い身体活動を行うことで座ることによる死亡リスクを軽減できることもわかっています(※2)。しかし「1日3時間以上座ったままテレビを見ている人は、どれだけ運動しても死亡リスクを減らせない」のだとか(当然ながら、テレビでなく配信動画を見ていようがスマホをいじっていようが、座っていれば同じです)。

 つまりは運動習慣をつけたとしても“座ったままでのテレビやスマホの見過ぎには気をつけましょう”ということです。

歩くと睡眠の質が変わる

 睡眠の質が「1日の歩数」で決まることもご存じでしょうか。

 大分大学が平均73歳の男女860名の毎日の歩数と睡眠について分析したところ、次のことがわかりました(※4)。

・1日の歩数と「睡眠時間」に関連はない
・1日の歩数と「睡眠効率」は関連した

 年齢を重ねると、なかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く目が覚めたりするものですが、この調査によると残念ながら、1日の歩数が多ければ多いほど長く眠れるわけではないことがわかりました。

 しかしその一方で、1日の歩数が多ければ多いほど質のいい睡眠が取れていた(睡眠効率がよかった)ことがわかりました。

昼間歩いて夜よく眠ろう!

 1日の歩数が多い人は、夜中に目が覚める時間と回数が少なく、昼寝の時間が短いこともわかっています。

 そこで大分大学は「ウォーキングは高齢者の睡眠障害の予防にも有効」と結論づけをしています。

 以上のことを理解したら、イスに長く座ることはやめて今すぐ歩き始めましょう。

※歩き方には「コツ」があります。お時間のある方は、本も参照してみてください。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的で効果的な歩き方が紹介されています。ウォーキングで効果を出すには歩き方に「コツ」があります。このコツを本書でぜひ掴んでください。

【参考文献】
※1 Bauman A et al. The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med. 2011 Aug;41(2):228-35. doi: 10.1016/j.amepre.2011.05.003.

※2 Ekelund U, et al. Does physical activity attenuate, or even eliminate, the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta-analysis of data from more than 1 million men and women. Lancet. 2016 Sep 24;388(10051):1302-10.doi: 10.1016/S0140-6736(16)30370-1. Epub 2016 Jul 28.
※3 Patel AV, et al. Prolonged Leisure Time Spent Sitting in Relation to Cause-Specific Mortality in a Large US Cohort. Am J Epidemiol. 2018 Oct 1;187(10):2151-2158. doi: 10.1093/aje/kwy125.
※4 Kimura N et al.  Association between objectively measured walking steps and sleep in community-dwelling older adults: A prospective cohort study. PLoS One. 2020 Dec 14;15(12):e0243910. doi: 10.1371/journal.pone.0243910. eCollection 2020.