Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SDCC_2015_-_Gina_Carano_%2819136144843%29.jpg

写真拡大

『スター・ウォーズ』実写ドラマ「マンダロリアン」にキャラ・デューン役で出演していたジーナ・カラーノが、米ウォルト・ディズニー・カンパニー/ルーカスフィルムから解雇されたことについて、二社を相手取って訴えを起こした。X(Twitter)が法的支援に入るという。再雇用と、75,000ドル超の損害賠償を求めた。カラーノの声明文と訴状が公になっている。

カラーノは2021年2月、SNSでの投稿が問題視され、ルーカスフィルムから突如。問題視されたのは、政治観の違いによるヘイトを、ナチスによるユダヤ人迫害に例えて揶揄する文をシェアしたことや、新型コロナ対策でマスクを着用する民主党議員に対して、マスクのせいで周りが見えていないと揶揄する投稿などだ。

またカラーノは、トランスフォビア(トランスジェンダーの人々に対して差別的で不寛容であること)だとされたこともある。著名人を中心として、SNSのアカウントプロフィールに「he/him」「she/her」「they/them」といったジェンダー代名詞を表記する例が増えた時期のことだ。「マンダロリアン」主演ペドロ・パスカルも「he/him」と表記をしているのだから、カラーノも表記を加えるべきだと指摘された際に、カラーノは押し付けに反対する形で「beep/bop/boop」と表記した。『スター・ウォーズ』のドロイドの声をパロディしたものだが、これが「トランスジェンダーを侮辱している」として一部で炎上騒ぎとなっていた。

カラーノのSNS投稿には違法性こそないものの、度々物議を醸しており、当時は「#FireGinaCarano(ジーナ・カラーノをクビにしろ)」とのハッシュタグと共に「マンダロリアン」からの降板を求める運動も起こるほどとなった。解雇時の情報によれば、ルーカスフィルムは前2ヶ月間にわたって解雇のタイミングを伺っていたほどに問題視していたという。

格闘家出身のカラーノは『デッドプール』(2016)エンジェル・ダスト役で注目を集め、「マンダロリアン」では元反乱軍の屈強な戦士キャラ・デューン役として重要な立場を担った。シーズン2配信後に解雇となったことで、シーズン3劇中では遠征任務に赴いたため不在という扱いとなっている。また、キャラ・デューンが主役となる単独作品も予定されていたが、と伝えられる。

解雇からちょうど3年が過ぎ、カラーノはルーカスフィルムとディズニーを相手取って、不当解雇と性差別を主張する訴訟を起こすことを発表。Xにて次の声明文を投稿した。

「今日は私にとって重要な日です。私は、ルーカスフィルムとディズニーに対し、訴えを起こします。

私は20年にわたって、キャリアをゼロから築いてきました。ディズニーのボブ・チャペック前CEO時代に、ルーカスフィルムはTwitter上で次のような声明を発表し、私を『マンダロリアン』から解雇しました:“ジーナ・カラーノは現在ルーカスフィルムに雇用されておらず、今後雇用されることもありません。とはいえ、文化的・宗教的アイデンティティに基づいて人々を抽象する彼女のソーシャルメディアへの投稿は、忌まわしく、容認できるものではありません。”

これほど真実からかけ離れていることはありません。真実は、私が投稿したもの全てから、私が“いいね!”をした全ての投稿に至るまで、私が当時の許容されるシナリオに沿っていなかったがために、追い詰められたということです。私の言葉は一貫して捻じ曲げられ、オルト右翼の過激派として悪人扱いされ、非人間扱いされました。私を黙らせて、破壊して、見せしめにすることを目的とした、いじめの中傷キャンペーンでした。

私は攻撃的な言葉を使ったことさえありません。示唆に富む引用、画像、ミームをシェアして、時には自分の言葉を用いました。攻撃的な言葉ではなく、尊敬のこもった、時には暗い時期を明るくするためのコメディの言葉も用いました。

私の投稿を自分の目で見て、自問して欲しいです。例えば、いったい私はどこで共和党員をホロコーストのユダヤ人と比較したのでしょうか?そんなことはしていません。なぜ彼らは私を差別主義者と呼んだのでしょうか?その裏に何かメリットや歴史でもあったのでしょうか?ないですよね。なぜ私は、『スター・ウォーズ』のドロイドの音を真似ただけで、トランスフォビア扱いされたのでしょうか? “Beep,  bop, boop"は、明らかにネット上の中傷者に向けたもので、トランスジェンダーの人々を否定するものでは決してありませんでした。

マスク着用やロックダウン、ワクチン強制についての私の質問は、このテーマを明るみに押し出すために行なっても良かったのでしょうか?あの当時、ハラスメントや検閲を受けることなく、私たちはこうした話題について公の場で議論できるべきだったでしょうか?もちろん、そうでしょう。

ハリウッドは女性のレプリゼンテーションと平等な権利を支持するといっています。それではなぜ、私の男性共演者たちはハラスメントや再教育、あるいは解雇を受けることなく発言することが許されていて、私には言論の自由を行使する同じ権利が与えられなかったのでしょうか?

アーティストとは、雇用契約を結ぶ際に、アメリカ市民としての権利を放棄するものではありません。解雇されて以来、私は全ての共演者と話をしましたが、私たちの間にあるのは気遣いと優しい言葉のみです。私は彼らの言論の自由を尊重しています。彼らの友人であるために、共に仕事をするために、全ての問題について同じ考え方をする必要はないと思っていますし、彼らも私に対して同じように考えていることを知っています。

数ヶ月前
@ElonMusk(編注:イーロン・マスク)
が、もしも言論の自由を行使したことでプラットフォーム(X)の利用を解雇されたとしたら、そのような人々に法的代理権を提供したいとツイートされていました。とても立派な申し出ですし、ルーカスフィルム/ディズニーに対する私の訴訟を誰かが引き受けてくれるだなんて、夢にも思っていませんでした。それでも私は、“申し込みをしたい”と返信をしました。何千人もの人が同意してくれました。でも、私は何も期待していませんでした。

驚くべきことに、数ヶ月前、私やその他多くの案件を担当するためにXから雇われた弁護士からメールが届いたのです。この数ヶ月、私は集められる限りの情報を送っていたのですが、私の現弁護士とXが、私のケースを心から信じてくれて、前進していたということが明らかになったのです。

深い感謝と御礼を
@ElonMusk

@X
に贈ります。私のケースを明るみに出す機会を与えてくれたことに。

私としては、最大の情熱であり、一生懸命捧げてきた全てであるストーリーテリングの創作と参加の旅を続けたい。世界で最も強力なエンターテインメント企業に嘘やレッテルを貼られたまま前に進むのは困難なことでした。このような力強い形で私を守ってくれる人が現れたことに感謝し、汚名を晴らすことを楽しみにしています。

私を支えてくれて、声を届けてくれた全ての人々に感謝します。あなた方ひとりひとりに神の祝福がありますように。

愛を込めて。

ジーナ・カラーノ」

声明の中でジーナ・カラーノは、「私の男性共演者たちはハラスメントや再教育、あるいは解雇を受けることなく発言することが許されていて……」と述べているが、これは主演のペドロ・パスカルと、ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルのことを指している。パスカルとハミルも、ドナルド・トランプ前大統領の政策をヒトラーやナチスに喩える政治的なSNS投稿などを行なっていたのに、こちらはお咎めなしであるのは不平等で、ダブルスタンダードではないかという主張だ。

米Deadlineはこの度の訴状全文を公開している。実際の文面では、パスカルやハミルの問題の投稿のスクリーンショットも掲載されていることが。

訴状によれば騒動の際、被告のディズニー/ルーカスフィルムはカラーノに対し、GLAAD(Gay & Lesbian Alliance Against Defamation、LGBTQ+の人々への理解を促す団体)の代表者との面談や、トランスジェンダーに関する複数本のドキュメンタリー作品の視聴を行わせたという。これらはカラーノの「成長」と「学習」のためであり、他にルーカスフィルム社内でLGBTQ+コミュニティに属する45名の従業員とのZoomミーティングを求められたともあるという(カラーノはこれを拒否している)。被告はカラーノに“公開謝罪”を要求したが、カラーノは拒否している。

SNS投稿内容をめぐってディズニーから解雇される事例はジェームズ・ガンなどもあったが、訴訟に発展する例は稀だ。イーロン・マスクによるX社が法的支援を行うとあって、ディズニー対Xという構造にも注目が集まる。

一部の見方としては、2023年11月にイーロン・マスクが反ユダヤ的な投稿を行った際に、ディズニーがXへの広告掲載を一時中止していたという背景が挙げられている。このときマスクは、ディズニーCEOのボブ・アイガーを名指しにしてを示していたことがある。

Source:

The post first appeared on .