くふうハヤテ・池谷蒼大【写真:間淳】

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池谷蒼大は静岡高からヤマハを経てDeNA入団も…3年で戦力外に

 再出発には、これ以上ない場所と言い切る。前DeNAで今季からウエスタン・リーグに参加する「くふうハヤテベンチャーズ静岡」に加入した池谷蒼大投手が、地元・静岡からNPB復帰を目指している。一時は現役引退も考えたが、生まれ育った静岡県で初めてのプロ野球チームが誕生したことから、もう一度、国内トップの舞台でプレーする決意を固めた。

 左腕は2020年ドラフト5位でDeNAに入団。1年目に開幕1軍の座をつかみ、序盤は5試合連続無失点と好投した。しかし、プロの世界は厳しかった。開幕して3週間。クイックの課題を突かれ、1イニングで3つの盗塁を許すと2軍に降格。その後、1軍登板は1試合にとどまった。2年目も1軍登板は6試合。3年目の昨季は1軍のマウンドに立てず、オフに戦力外を通告された。わずか3年のプロ生活。周囲には驚く人もいたが、池谷は冷静だった。

「自分のやれることはやったつもりでいましたが、戦力外の予感はしていました。プロの世界の厳しさやレベルの高さを感じていたので、ある程度、納得しました」

 思うようにパフォーマンスは上がらず、左肘には痛みがある。頭の中を占めたのは「引退」の文字。ユニホームを脱ごうとしていた頃、予想していなかったニュースを目にした。静岡県にプロ野球の球団ができる。浜松市で生まれ、静岡高校、ヤマハへ進んだ池谷にとって、静岡が特別な場所なのは言うまでもない。

「戦力外になったタイミングで、地元に新しいチームができました。縁を感じて、もう一度野球をやろうと決めました。お世話になった人たちがたくさんいる静岡を野球で盛り上げたいと思いました」

NPB12球団の2軍との対戦は「燃えるものがあります」

 新しいスタートを切るには絶好の機会だった。心身ともに再出発を切るため、昨年12月、プロに入る前から度々痛みがあった左肘のクリーニング手術を受けた。投球フォームはプロ2年目から取り組んだサイドスローをやめて、かつてのオーバースローに戻す。

 今季からウエスタン・リーグに加わる「くふうハヤテベンチャーズ静岡」は2軍のみの球団となる。結果を残しても1軍昇格はないが、池谷は前向きに捉えている。

「NPB12球団相手に試合ができるので、燃えるものがあります。地元の静岡でプレーできますし、ポジティブな要素しかありません。チャンスをいただいて感謝しています」

 左肘のクリーニング手術を受けた池谷はチームの合同練習に参加しているが、別メニューで調整している。3月中旬のシーズン開幕には間に合わず、4月頃にチーム合流を目指す。NPBに復帰するには、シーズン中に他球団へ移籍することになる。「もう一度NPBでプレーしたい気持ちと同じくらい、静岡で野球ができる喜びが大きいです」。地元選手だからこそ担える役割と、地元も期待するNPB復帰。2つの使命を胸に再スタートを切る。(間淳 / Jun Aida)